改訂第2版 序文
初版発行から4年を経、この間本邦では年間10万件を超す内視鏡的胃瘻造設術が行われるようになってきています。施行例数の増加に伴い、さまざまな面からの検討が行われた結果、主として造設後の管理面での新たな知見が増加して参りました。一方で症例数の増加によって、今まで内視鏡的胃瘻造設術には関心をもたなかった医療関係者の方々も、さまざまな場面で胃瘻カテーテルをもった患者さんとかかわりをもつ機会が急速に増加しています。2003年10月には2件の不幸な胃瘻のカテーテル交換による事故に対する刑事告発が行われ、新聞紙上に大きく報道される事態が起こりました。内視鏡的胃瘻造設術は、もはや医療関係者である以上無関係でいられるといった時期は過ぎてしまったと考えるほど、広く普及してきています。
大多数の疾患が診断から治療、そしてその経過を観察する過程は1つの診療科でなされます。しかし、この内視鏡的胃瘻造設術を対象とする患者さんの多くは基礎疾患は神経内科、脳外科で、造設術は消化器内科や消化器外科、造設後の瘻孔管理は造設科が行うとしても、基礎病態に関する管理は、主治医である神経内科、脳外科です。また慢性の疾患であるが故に、長期療養型のさまざまな施設に移動されることもしばしばで、この場合造設した施設とは関連のない施設で管理がなされることになります。つまり、造設の対象となる患者さんに1つの診療科で治療や管理、経過観察がなされることはほとんどないということになります。治療施設を移動される患者さんに対して適切な管理や経過観察がなされるためには、その情報が患者さんと同時に移動していくことが必要となります。ここで重要な情報の伝達がまだまだ不十分なのが現状です。それと同時に新たに開発された手技や知識の収集も、よりよい管理には欠かせない事項となります。
各施設内、施設間、地域、地方、そして本邦全体にわたって情報や知識を共有していくことが医療事故減少の、そしてよりよい管理の第一歩となると思われます。
この改訂版では、この間に開発された新しい知識や情報、管理法を統一するためのクリニカルパスなどを新たに加えました。知識情報の共有化に少しでもお役に立てることを願ってやみません。
2005年1月吉日 嶋尾 仁