長年にわたる臨床医としての勤務を定年退職するにあたり,過去30数年の期間を京都,大阪そして京都国立病院(現医療センターに改称)付属助産婦学校において担当してきた講義内容を取りまとめました.  
  本書作成にあたり,学問の世界とかけ離れた一臨床医にして,身分不相応と幾度となくためらい中断もしてきました.また内容に関してご批判をいただく点も多々あるかと存じますが,ここに小冊子を永井書店のご尽力により,やっと世に送り出すことができました.  
  これまでの道のりを振り返ると,医療機器の開発により種々の胎児情報が多く得られることにより,周産期医学の進歩は目覚ましいものがあります.  
  しかし,反面多くの周産期医学の知識を習得する必要性から,また帝王切開率の増加なども反映して分娩自体に関する知識が乏しくなってきている傾向を年々感じてきました.  
  この思いから産科学を学ぶ研修医,医学生そして助産師の人たちに少しでもお役に立てればとの動機から,本書を手がけることになりました.  
  そしてできるだけわかりやすく理解していただくために多くの図を取り入れ,また極めてまれでありますが妊娠,分娩に関連し重篤な事態をきたし,緊急処置を必要とする合併疾患についても,平素から十分対応しえる知識を習得しておく必要を痛感しており,これらについても記述しました.  
  もとより浅学非才の身にして,多くの先人達の著書を参考引用させていただきましたことを本紙面にて深く感謝申し上げます.  
  また約40年の期間において産婦人科医として私を支えてくださいました,各施設の医療関係の皆様方に心より厚く御礼申し上げます.

2004年10月吉日 古希を迎えて 清水 保