●●序 文●●    

  最近、いわゆる「美容医療」は外科的な処置を主体とした医療から、minimal invasive surgery(最少侵襲外科)またはnon-invasive treatment(無侵襲治療)へと大きく変化してきている。できるだけ切らずに治す美容外科・美容皮膚科という患者側からの要望が多くなり、どのような治療においてもダウンタイムが少なく、合併症や副作用の少ない方法の選択が重要な要素となってきた。  
  ところで、「アンチエイジング」という言葉は響きがよいためか、多くの場面で使われるようになってきている。考えるまでもなく、美容外科や形成外科、皮膚科においては、主に年齢を重ねることによって起こってくるいろいろな変化を治療している。例えば、シミ、しわ、たるみ、肥満などである。編者は「アンチエイジング医療」は生活習慣の見直しと、内的・外的治療をバランスよく行うことが重要で、「老化を止めることはできないが、適切なアドバイスや治療で遅らせることはできる」と考えている。侵襲の大きな手術やホルモン療法を主体にした抗老化療法だけに頼るべきではないと考えてきた。  
  前著「実践皮膚レーザー療法」(永井書店)はレーザー機器の安全な取り扱いと、満足度の高い結果を出すためのコツを主眼において編集した。このたび、その続編ともいうべき本書の編集を手がけるチャンスに恵まれた。筆者には前編同様、実際に医療現場で活躍されている方にお願いしている。内容は皮膚に関する基礎事項と老化について、顔の若返り美容医療の中でも外来で比較的容易にできる治療で、安全で確実性の高い療法を選択した。また、日常診療において相談の多い美容外科手術や【痩】身法、内面からのアンチエイジングとして食・サプリメントや高気圧酸素療法、セラピーメイクという化粧法までを含めた。まだまだ盛り込まなければならない事項が多々あると考えられるが、医療材料・機器の開発は日進月歩であり、網羅することは不可能である。ご容赦願いたい。  
  美容医療界には残念なことに、いまだに無痛、腫れない、通院不要等々の誤った情報がみられる。われわれが行わなければならないのは患者への正しい情報提供と医療の実施と考える。本書が診療の一助になれば編著者にとって幸いである。  

平成16年10月吉日  久保田潤一郎