序文
本書は,医学生・研修医や呼吸器専門医を目指す内科医を対象に総論10章と疾患編25章で構成している.
総論では,呼吸器疾患の診療に必要な機能・解剖・症候から検査・治療まで,最新の進歩を簡明に記述している.
シミュレイション内科シリーズの目指すところは,医師に要求される最も重要な能力である臨床決断の養成である.そして,臨床医としての能力を磨くために最も有効な方法は,病者の訴える症状,病者が置かれた状況をできるだけ速やかに,適切に判断する能力を養うことである.この判断が誤っていれば,その後の診療は有効なものにならないからである.したがって,本書の疾患編では,気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患,感染症,びまん性肺疾患などの代表的な25種類の病態を精選し,判断力の養成を主眼にした問題形式のシミュレイションを行っている.
学生や研修医諸君は,症例呈示を熟読したうえで問題に手をつけて欲しい.できれば,最低24時間以上は解説編に目を通さず,その間よく考えてから解説に目を通すことをお勧めしたい.その持ち時間に判断力が養われるに違いない.このように,本書を上手に利用すれば,呼吸器疾患患者の診療の実際を頭の中でしミュレートする能力が養われ,それは実際の診療能力を飛躍的に高めるであろう.
本書の執筆に参加していただいた先生方,編者に執筆活動そのものの重要性をご教示いただいた恩師の愛媛大学名誉教授 日和田邦男先生,本書編集の機会を与えていただいた永井書店の寺田勝彦氏に感謝申し上げます.
また,総論編第4章をご執筆いただいた池添潤平愛媛大学放射線科教授が本年1月31日ご逝去された.先生は画像診断の醍醐味を編者に教えていただいた恩師ともいえる先生のお一人である.故池添教授に本書を捧げ,ご冥福をお祈りしたい.
平成15年9月
河 野 修 興