序   文
 1950年,Ian Donaldがはじめて超音波画像診断法を取り入れて以来,その発達は目覚ましいものがある.今日までの電子工学をはじめとする科学技術の発達は,超音波診断機器に夢想だにしなかった程の精度の向上をもたらし,超音波診断学は飛躍的な発展を遂げました.現在,産婦人科における超音波診断法は,一般外来はもとより妊婦健診においても基本的診察法の一つになったといっても過言ではありません.
 近年の超音波検査法は単なる断層像のみでなく,ドプラ法による血流表示を応用した循環動態の観察をはじめ,子宮腔内に生食を注入しながら超音波検査を行うSonohysterography,造影剤を利用したsono-hysterosalpingographyなどの手法が取り入れられ,その診断能は従来に比べて比較できないほど精度の高いものになっています.また,最近の3次元超音波法の登場は,観察対象を立体像として表示して客観的・視覚的に訴えるこができることから,その重要性の認識はもはや時代の趨勢となっています.
 このように,超音波診断学は日進月歩の進化を続けていることを認識し,検者である医師は,常にその技術と知識の修得に研鑽を積まねばならないといえます.本書を出版した目的は,こうした超音波診断を取り巻く状況を踏まえ,これまで報告されてきた数多くの知見をベースに我々が蓄積してきた研究成果を取り入れ,本検査法をより深く理解して女性診療に一層活用していただくためであります.
 本書は,新技術編,婦人科編,産科編,基礎編の順で構成されています.新技術編ではSHG,ドプラ法,3次元法について示し,婦人科編では骨盤内臓器の生理と病理を中心にし,乳房の項もこれに加えた.産科編では妊娠子宮と胎児およびその付属物の生理と病理など,産科全体を網羅するようにこころがけました.また臨床の現場で気軽に活用していただくことに重点をおいたため,基礎編はあえて最後に配しました.
 本書の特徴は,紙面の許す限り多くの写真を供覧し,一部については読影しやすいようにシェーマや臨床的背景を解説したことです.また,超音波診断を行ううえでのコツや特徴などの有用な情報を,『ポイント』として別枠として列記してみました.
 本書が,これから超音波検査を修得しようとする先生,臨床検査技師,助産師,看護師の皆さんにはガイドブックとして,臨床の第一線に携わっておられる先生方には気軽に開けるハンドブックとして,それぞれ活用していただければ幸いです.

関 谷 隆 夫

石 原 楷 輔