序 文
脳神経外科バイブル第3弾は,脳神経外科の三大疾患の1つである「頭部外傷」を取り上げました.頭部外傷と一口にいっても多岐にわたり,いざ執筆となると段々深みにはまり,脱稿が予定より大幅に遅れてしまいました.
本書では成人の頭部外傷は無論のこと,成人と解剖学的にも生理学的にも異なる小児や高齢者の頭部外傷についても,別に項目を設けて記載しました.また外傷性血管障害については,一部「脳神経外科バイブルI.脳血管障害を究める」で取り上げましたが,さらに広く,かつ深く掘り下げて記載しました.さらには,外傷でも特殊な部門に属する「分娩外傷」についても取り上げ,充実した参考書になるように配慮しました.
本書の構成および特徴は,既刊の「脳神経外科バイブルIおよびII」と基本的には同じで,以下のようになっています.
1.第1章は,頭部外傷を理解するのに必要な解剖,生理や症候群についての章です.
2.第2章は,頭部外傷の基本編ともいうべき部門ですが,基礎知識のみならず,高度な内容も盛り込んであります.
3.第3章は,頭部外傷の各疾患についてさらに深く掘り下げて記載するとともに,第2章で取り上げなかった項目についても述べてあります.
4.第4章は,読者の方々が便利なようにとの配慮から設けました.意識障害の重症度や転帰の評価法を再度まとめるとともに,また第2,3章と視点を変えた「まとめ」などが記載してあります.
5.巻末は参考文献です.紙面の関係ですべてを掲載することはできませんでした.
6.本書のところどころに「快適空間」と称する余白部分があります.これは読者の方々のメモ代わりとして,また本書の不足部分を書き加えるなど,読者自身が工夫して好きなように使って頂くために設けました.
7.意識障害の重症度,機能的重症度評価や転帰の評価法などについては,和訳だけでは微妙なニュアンスが伝わりにくい面もあるので,可能な限り原文(英文)を掲載しました.
8.用語については,日本脳神経外科学会用語委員会編「脳神経外科用語集,南江堂,1995」に準じました.
なお,「脳神経バイブルIおよびII」で掲載したものでも,本書に必要と思われた項目については,再度取り上げ記載しましたが,その際,文献は紙面の都合で必要最小限としてあります.ご了承下さい.
本書の作製にあたっては多くの資料に目を通し,間違いのないように書いたつもりですが,欠陥や異論があるかも知れません.その際には,編集室の方へご意見をお寄せ頂ければ幸いです.そして読者の方々の力で,より良い本にしていきたいと思っております.
窪田 惺