序 文

 内科学のなかでも血液学は近年,急速な進歩を遂げた分野である.細胞の増殖・分化・死などの細胞現象も,血液細胞をモデルとした研究によりその機構の解明が進み,他の領域にも大きなインパクトを与えてきた.また,血液学は,造血因子に代表されるように基礎研究がいち早く臨床応用されている分野であり,診断や治療に関しても常に新しい知識を習得するとともに,たえずそのブラッシュアップが求められる.しかし,日々の診療に携わる内科医がすべての領域に精通することは容易でない.
 本書は,血液疾患に関する総論と疾患編の2部構成であるが,特に,患者の訴えや症状から病態を把握し,検査をオーダーし,その結果からどのように病期を診断し,治療していくかについての解説に力点が置かれている.日常診療で“なぜ?”と思うことについて,症例に関する問題を考えることにより容易に血液疾患の鑑別診断,病因,ならびに最新の治療法を学ぶことが可能である.さらに,レベルアップをめざす人のためには専門的な最新の考え方も紹介されており,内科認定医(あるいは専門医)や血液専門医試験に合格するのに必要十分な知識を習得することができる.
 また,本書は,医師が患者に病気を説明する際に必要となる種々の知識(治療の必要性,有効性,目安,病気の予後,インフォームドコンセントなど)についても分かりやすく記載されている.
 本書は血液学の大筋を基礎から臨床まで手軽に把握できるとともに,総合内科医,研修医や血液専門医をめざす医師が短期間で臨床の現場を体験できるように企画されている.多くの内科医が本書を読んでいただき,今後の医療の現場で血液疾患の診断・治療に役立てていただくことを期待している.

別所 正美
金倉  譲