序 文

 老年期痴呆は脳血管性痴呆はもちろん,アルツハイマー型老年痴呆も広義の生活習慣病の一つであるとの筆者の主張を明記した.
 アルツハイマー型老年痴呆に対し,待望の抗痴呆薬が出現した.これについて詳しく述べ,また治療に関する1〜2の事項を追加した.
 一方,適切な治療薬のない脳血管性痴呆に対しては脳代謝改善薬,脳循環改善薬が周辺症状の改善を齎し得る可能性があり,大部分が多発性脳梗塞であるこの型に対する使用は健康保険上も問題が少ないといえる.然るに,最近再評価の結果,わが国で開発された脳代謝改善薬の多くが認可取消しとなった.このいきさつには納得できないところが多いため,これについて述べた.その他,1〜2の新しい知見を加えた.
 本書が老年期痴呆の診療,介護に従事する方々に少しでもお役に立つことを期待したい.

大友 英一