Hospital MIMMS 大事故災害への医療対応
-病院における実践的アプローチ- 第2版

Hospital MIMMS 大事故災害への医療対応 -病院における実践的アプローチ- 第2版
著 者
原著者: Advanced Life Support Group, Edited by Kevin Mackway-Jones and Simon Carley
監 訳: MIMMS日本委員会
分 類
救命救急医学
発行年
2022年12月
仕 様
A4判・188頁・32図・28表
定 価
本体 5,400円+税
ISBN
978-4-8159-1923-8
特 色
大事故災害時の医療支援システム(Major Incident Medical Management and Support : MIMMS)は, 保健医療スタッフに大事故災害時の医療活動の運営と実践の原則を教えるために構成された研修コースとして, 現在世界各地で開催されており, 災害医療における準備と対応に関する真の国際的な基準の 一つとなっている.
本書「ホスピタルMIMMS(ミムズ)」は先に出た, 訳書「MIMMS第2版 大事故災害への医療対応 -現場活動と医療支援 イギリス発, 世界標準-」の姉妹書である. MIMMSが災害現場での医療活動と関係諸機関との連係を取り扱ったものであり, 本書はそれに引き続く被災者を受け入れる病院での 災害時の対応を解説している.
繰り返し起こる国内外の大災害を背景に, 本邦で開催されるHospital MIMMSコースの受講者は増加の一途を辿っている. 本書はそこで学ぶ方々のために, 原著書の明快かつ実効性のある概念とシステムが忠実・正確に伝わるよう表現(翻訳) されている.
大規模災害時の連携した実際的な病院内システム構築のために, すべての医師, 看護師, 支援する関係諸氏の方々が 院内に常備して一読をしておいていただきたいテキストである.

■ 序文 ■

日本語版第2版序文
災害時の院内医療対応に係る日本初かつ唯一のオープンコースである、英国ALSG開発による「Hospital MIMMS コース」。 そのテキストの日本語版の初版刊行から13年経った。 この間、本邦が見舞われた災害や多数傷病者事故は、2011年の東日本大震災を皮切りに、関越高速道バス横転事故(2012年)、 伊豆大島土砂災害(2013年)、御嶽山噴火(2014年)、 平成27年9月関東・東北豪雨・川崎市簡易宿泊所火災・調布市PA-46墜落事故(2015年)、 熊本地震・糸魚川市大規模火災・軽井沢スキーバス転落事故・鳥取県中部地震(2016年)、 平成29年7月九州北部豪雨(2017年)、平成30年7月豪雨・大阪府北部地震、北海道胆振東部地震(2018年)...と枚挙に暇がない。 2019年末以降現在も続く新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、全国的な通常の保健医療継続を困難にしており、 いうまでもなく「医療にとっての災害」である。 このように息つく間もない災害の到来に、否が応でも全国津々浦々、院内対応の準備を余儀なくされており、 ますますHospital MIMMS が示す概念と方略の浸透が求められる昨今である。
Hospital MIMMS の目指すところは、院内対応の標準化である。 初版リリース以降、病院側から見た時系列に沿って分類した 「発災後の4つの相(プレホスピタル相(現場から病院への傷病者搬送までの時期)、 受入相(病院外来部門での傷病者の受け入れ時期)、 根本治療相(外来・入院治療、手術、集中治療の時期)、 回復相(通常業務モードへの切り替え時期))」における具体的な行動指針は、Hospital MIMMS の骨幹をなすところである。 なお、日本語翻訳の初版ではこれら4分類に「期」を表記したが、第二版では「相」を用いた。 発災後、院内の全部門が突然次の「期」に移るのではなく、院内の各部門がそれぞれの需要と供給の状況に応じて異なる 様相を呈しながら徐々に移行していくことを的確に表現するためである。 Hospital MIMMS はそのほかにも、対応組織の「折りたたみ可能な階層構造化」による弾力的で実践的な指揮体制の策定方法や、 特定者への対応依存の回避と行動の標準化を目指すアクションカードによる役割の事前規定の推奨など、 すでに多くの斬新な知見を本邦に発信しており、行政対応計画にも一部盛り込まれてきたところである。
第二版では、全般にわたって概念や用語の整理によって推敲されたものになっている。 改訂点の一つに、上述の「折りたたみ可能な階層構造」から「拡張可能な階層構造」への用語の変更がある。 このことは、災害が院内スタッフの少ない時間帯に確率的に多く発生することに鑑みて、当初は少人数対応を強いられ その後徐々に人が参集していく様をより明確に表現したものである。 実災害における現場の状況に即しており、より理解しやすくなったといえる。 さらに洗練された本書が、院内対応に係る皆様の一助になることを願ってやまない。
おわりに、この機会を通じてMIMMS 日本委員会の近年の活動について付言する。本邦は英国と異なり自然災害が多い。 病院自体が被災することを想定し、それを踏まえて準備しなければならない点が、 交通災害やテロなど人為災害を主な対象としてきたHospital MIMMSが示す対応と大きく異なる。 そこでMIMMS 日本委員会はHospital MIMMS の対応を基軸にしたうえで、本邦で多発している自然災害を 念頭に置いた病院避難に係る研修コース (Japan Hospital Evacuation and Lifesupport Planning for major incident : J-HELP)を開発した。 まさに長年の日英連携の成果物であり、併せて活用していただければ幸甚である。
2022年9月 一般社団法人MIMMS 日本委員会 代表理事 森村尚登
(帝京大学医学部救急医学講座 主任教授)

■ 目次 ■

PART I: 序論
第1章 大事故災害の疫学と発生頻度
第2章 次の大事故災害への備えは十分か?
第3章 病院対応の体系的アプローチ
PART II: 準備
第4章 大事故災害対応計画の策定
第5章 大事故災害対応の装備
第6章 訓練
PART III: 管理
第7章 拡張可能な階層構造の考え方
第8章 診療組織の階層構造
第9章 看護組織の階層構造
第10章 病院管理組織の階層構造
PART IV: 支援 (院内医療対応の実際)
第11章 大事故災害の宣言と計画の発動
第12章 受入相
第13章 トリアージ
第14章 根本治療相
第15章 回復相
PART V: 特殊な事故災害
第16章 有害化学物質の関連した事故災害
第17章 多数の熱傷患者が発生する事故災害
第18章 多数の小児が巻き込まれる事故災害
「計画立案策定にあたっての本項目の当該地域の情報」のテンプレート集
用語解説
索引

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