実践 小児脳波入門 改訂第3版
日常診療に役立つ脳波アトラス

実践 小児脳波入門 改訂第3版 日常診療に役立つ脳波アトラス
著 者
前垣義弘(鳥取大学医学部脳神経小児科 教授)著
CD-ROM編集
大栗聖由(鳥取大学医学部保健学科)
発行年
2018年4月
分 類
小児科学一般
仕 様
A4版・206頁・109図・CD-ROM付属
定 価
(本体 6,800円+税)
ISBN
978-4-8159-1919-1
特 色 
実際の脳波とのギャップを感じさせない実物大脳波を同一の脳波モンタージュで提示し詳述する.とくに専門医ではない小児科医,研修医,医学生を対象に,難解と思われがちな小児脳波について,日常診療でこれだけ知っておけば十分であろう必要な脳波所見に絞って解説.
わかりやすく実際的な内容で本書を読むことによって,脳波解読の基本的な考え方や,診断・治療から最新の診断ガイドライン・デジタル脳波計の使い方まで若い医師の方々の強い味方となってくれる.

■ 改訂第3版 はじめに

本書は2007年(平成19年)に初版を出版し,2012年(平成24年)に改訂しました.若い先生方にお使い頂いているようでうれしく思います.前回の改訂以降のてんかんの診断治療における大きな進展は2つあります.1つは2017年4月、国際抗てんかん連盟ILAEより「てんかん発作型の実用的分類」と「てんかん分類」が示されたことです.本邦においては,日本てんかん学会より「てんかん学用語事典」(診断と治療社、2017)および日本神経学会より「てんかん診療ガイドライン2018」(医学書院、2018)が出版されました.てんかん発作分類とてんかん分類は今後も更新される可能性があるため,本書では現在も広く認知されている1989年の国際分類に準拠して記述することとしました.内容的には大きな違いはありません.もう1つは,新規抗てんかん薬が本邦で多く承認され,治療選択が広がったことです.
てんかん診断において脳波判読が必須である点は過去も現在もそして未来においても変わることはありません.デジタル脳波計が普及し,電子カルテで脳波を判読する施設が徐々に増えつつあります.前回の改訂では,デジタル脳波計の使い方とピットフォールおよび判読法を追加しました.今後,ますます紙脳波が,減少し電子カルテでの脳波判読が普及することを考えますと,本書のコンセプトである「実物大の脳波の提示」から「デジタル脳波判読」へシフトすべきであると考えます(但し,学習し始めの時期は脳波サイズを固定した方が理解しやすいことには変わりありません).したがいまして,改訂第3版では,実際のデジタル脳波のCD-ROMを付録として付けましたので,操作法を体験して頂きたいと思います.脳波の基本事項を理解していれば,難しいことではありません.VIII-4. 演習で本文を参照しながら操作してみてください.
本書の改訂点
(1)デジタル脳波計の使い方の実例を提示
(2)本書に提示した脳波のCD-ROMを添付
一方で,救急の場での脳波記録と判読は医師が行わざるを得ない状況は変わっていません.自分で電極を装着して脳波記録ができるようになると,けいれん重積患者を診療した際に発作が完全に抑止できたかどうかの判断や,急性脳炎・脳症の疑いがあるかどうかの判断を即座にできるようになります.短期間でも小児神経専門医研修認定施設で研修すると電極装着・脳波計の操作・判読ができるようになります.小児の日常的な診療ですので後期研修で学べることが望ましいと思います.脳波判読のレクチャーは,鳥取大学小児神経学入門講座(http://www.med.tottori-u.ac.jp/nousho/)で毎年秋に実施しています.本書が若い医師の皆さんのスキルアップに役立てれば幸いです.最後になりましたが,デジタル脳波の項の作成にご協力頂きました鳥取大学医学部保健学科 病態検査学講座 大栗聖由先生,そしてこれまで出会った多くの子どもたちに感謝致します.
平成30年4月吉日
前垣義弘

■ 主要目次

● 用 語
T. 小児の発作性疾患と脳波
1. 小児発作性疾患
2. てんかん診断における脳波の役割
3. てんかんの経過と脳波変化
4. 熱性けいれんと急性脳症
5. てんかんと間違われやすい発作性疾患
6. 病的意義のない脳波異常
U. 脳波の基本的事項
1. 電極配置と名称:10-20電極法
2. 脳波導出法
3. 脳波の要素
4. 脳波異常
V. 正常脳波
1. 覚醒-睡眠サイクルと脳波:各stageで見られる脳波所見
2. 年齢ごとの正常脳波
3. 賦活脳波
W. 頻度の高い小児てんかんと急性脳症の脳波
1. 中心側頭部に棘波を示す良性小児てんかん(BECTS,ローランドてんかん)
2. 後頭部に突発波をもつ小児てんかん(CEOP)
3. 欠神てんかん
4. 点頭てんかん(West症候群、infantile spasms)
5. 細分類不能の局在関連性てんかんと内側側頭葉てんかん
6. 急性脳症・脳炎と熱性けいれん重積
X. てんかん性異常波と間違えやすい normal variant
1. 熱性けいれん児に見られる非定型棘徐波(pseudo petit mal)
2. 6Hz棘徐波複合(phantom spike)
3. 6Hz陽性棘波、14Hz陽性棘波(14 & 6Hz陽性棘波)
Y. よく見るアーチファクトと耳朶電極の活性化
Z. 脳波記録時の心電図からわかること
1. 不整脈や心伝導障害
2. 脳波に混入した心電図や脈波の鑑別
3. 体動やミオクローヌス
[. デジタル脳波計の使い方
1. デジタル脳波とは
2. 脳波設定条件
3. デジタル脳波を使ってみよう
4. 演習
参考1●瘤波とK複合波
参考2●睡眠導入剤の使用
参考3●BECTS関連疾患
参考4●後頭部突発波とPOSTS
参考5●不随意運動のミオクローヌスとミオクロニー発作
参考6●脳波オーダーのポイント
参考7●脳波レポートの1例
参考8●脳波の縮尺

診療のポイント1●初発発作の解釈と治療
診療のポイント2●てんかん治療における脳波検査の意味
診療のポイント3●発作症状からてんかん症候群を推定するポイント

付 録 脳波スケール
    デジタル脳波CD-ROM

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