両極からみた 次世代の腹腔鏡下直腸癌手術


著 者
編集 奥田準二(大阪医科大学一般・消化器外科学教室 准教授)

奥田準二(大阪医科大学一般・消化器外科学教室 准教授)
絹笠祐介(静岡県立静岡がんセンター大腸外科 部長)
黒柳洋弥(虎の門病院消化器外科(下部消化管) 部長)
発行年
2013年 4月
分 類
消化器外科
仕 様
A4判・204頁
定 価
(本体13,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1908-5
特 色 
 大腸癌の内視鏡外科手術において,いま最も注目される腹腔鏡下直腸癌手術に的を絞り,cadaverと生体からみた臨床解剖を基本として,いわゆるTMEの層の認識のポイントとそれに基づいた腫瘍学的剥離と機能温存的剥離のコツとピットフォールを,超低位直腸切除においては腹腔側および肛門側から肛門管(内・外括約筋間)へどう分け入って手術するかを,さらにNACRT症例での剥離のコツとピットフォールや側方郭清の至適アプローチまでを,実地臨床外科医にわかりやすく示し,腹腔鏡下LARからISRまでを詳細に解説.
 なお,タイトルの両極とは,cadaver解剖か生体解剖か,アプローチを上(腹腔側)から行うか下(肛門側)から行うか,使用機器が単極:モノポーラか双極:バイポーラかなどを意味し,それぞれにピットフォールを避けるべきコツやトラブルシューティング法も解説する.
 また,写真と精緻なイラストを盛り込むだけでなく,DVD映像も加え,実地臨床外科医が直腸の解剖から手技までを確実に理解できるよう,そして,さらなる高度な内視鏡外科手術手技向上につながるための格好の書となっている.

■ 序 文 ■

 大腸癌の内視鏡外科手術において,いま最も注目されている腹腔鏡下直腸癌手術に的を絞り,cadaverと生体からみた臨床外科解剖を基本に,いわゆるTMEの層の認識のポイントとそれに基づいた腫瘍学的剥離と機能温存的剥離のコツとピットフォールを,超低位直腸切除においては腹腔側および肛門側から肛門管(内・外括約筋間)へどう分け入って手術するかを,さらにNACRT症例での剥離のコツとピットフォールや側方郭清の至適アプローチまでを,実地臨床外科医にわかりやすく示し,腹腔鏡下LARからISR,さらにMiles手術までを詳細に解説することを本書の目標としました.幸い,この企画に最もふさわしいと共著をお願いした絹笠祐介先生と黒柳洋弥先生からも快諾をいただき,刊行の運びとなりました.
 なお,タイトルの両極とは,臨床外科解剖はcadaverか生体か,アプローチは内側か外側か,剥離の方向は右からか左からか,肛門管へのアプローチは上(腹腔側)からか下(肛門側)からか,エナジーソースは単極(モノポーラ)か双極(バイポーラ)か,剥離層は腫瘍学的か機能温存的かなどを意味することになると考えていました.もちろん,どちらも同じ目標を目指しており,同じ結果に辿り着くはずですが,それぞれにピットフォールを避けるべきコツやトラブルシューティング法があるはずですし,両者をバランスよく使い合わせることが重要と考えます.さらに,黒柳先生からは同施設で指導を受けられている先生方の執筆もいただくこととなり,「指導する側と指導を受ける側」の両極からみた次世代の腹腔鏡下直腸癌手術についても理解が深まる内容となりました.
 いま一度,本書の最終原稿を読み直しましたが,私の意図した以上の内容となっており,熟成したヴィンテージ本として,まさに次世代まで受け継がれると確信しました.
 さらに,本書では,操作のポイントがクリアにわかる写真とライブ手術感覚で視られるDVD映像に加えて,メディカルイラストレーターの阪口重幸氏にも参加していただき,腸管や周囲臓器だけでなく動静脈や神経などの位置関係のすべてが実際以上に一目で分かる精緻なイラストを盛り込みました.これにより,実地臨床外科医が直腸・肛門と骨盤内の解剖から実践手技までを確実に理解できるようになり,さらなる手術手技向上に繋がるものと大いに期待しています.
 次世代の大腸肛門外科を担う先生方が,本書を通じて高度な大腸内視鏡外科手術を修得し,一人でも多くの患者さんの良好な結果に還元されることを祈念しています.

2013年3月
奥 田 準 二

■ 主要目次

1.CADAVER解剖に基づく最先端の腹腔鏡下直腸癌手術
(絹笠祐介)

■1■直腸癌手術に必要な解剖と腹腔鏡下低位前方切除術
 1.基本となる解剖
 2. 直腸癌手術で選択する剥離層について
 3. 腹腔鏡下低位前方切除術の手技
■2■腹腔鏡下内肛門括約筋切除術(ISR)に必要な解剖と手技
 1.ISRに必要な肛門管周囲の解剖
 2.ISRの手技
■3■側方郭清に必要な解剖と手術手技
 1.側方郭清に必要な肛門管周囲の解剖
 2.腹腔鏡下側方郭清の手技
 
2.生体解剖とモノポーラを中心とした実践的腹腔鏡下直腸癌手術
(黒柳洋弥)
■1■腹腔鏡下直腸低位前方切除術に必要な解剖の考え方(黒柳 洋弥)
 1.解剖の総論
 2.手術に必要な局所解剖
■2■器具・体位・ポート位置・First port挿入などについて(富沢 賢治)
 1.手 術 器 具
■3■手術開始〜IMA根部処理・LCA温存〜S状結腸外側授動(森山  仁)
 1.手術開始時の心得
 2.術 野 展 開
 3.内側アプローチ
 4.S状結腸外側の授動
■4■直腸周囲剥離〜直腸切離吻合について(戸田 重夫)
 1.直腸周囲剥離
 2.直腸切離〜吻合
■5■括約筋間切除・経肛門吻合について(花岡  裕)
 1.括約筋間切除・経肛門吻合について
 2.ISRを行う前に
 3.腹腔鏡下操作
 4.肛門側操作
 5.ドレーン挿入〜閉創
■6■術前化学放射線治療症例・側方郭清について(的場周一郎)
 1.術前化学放射線治療症例
 2.側 方 郭 清

3.次世代の腹腔鏡下直腸癌手術を目指して
(奥田準二)

田中慶太朗/近藤 圭策/茅野  新/山岡健太郎/山本 誠士/
鱒淵 真介/石井 正嗣/濱元 宏喜/藤井 研介
1.適応と術式
2.術 前 処 置
3.腸管前処置
4.手術中に注意していることと合い言葉
■1■私どもの愛用している主な機器・器具
■2■体位の取り方とポート配置
■3■適切な術野展開の手順
■4■術野展開の工夫
■直腸進行癌に対する腹腔鏡下(超)低位前方切除
■5■内側アプローチ
■6■LCA温存D3郭清
■7■外側の剥離
■8■左結腸曲の剥離授動が必要な場合
■9■直腸の剥離授動と切離
■次世代の腹腔鏡下直腸癌手術の重要ポイント
■Single fire resectionを目指して(直腸一回切離がGold Standard)
■10■側 方 郭 清
■11■Double stapling technique(DST)吻合
■亜腸閉塞例で術後縫合不全を回避するために
■腹腔鏡下超低位前方切除のオプション(Prolapsing法(反転法)併用)
■12■腹腔鏡下超低位直腸切除(経肛門的括約筋部分切除併用:Lap ISR)
■13■腹腔鏡下直腸切断術(Lap Miles)
■14■“My robot”の導入


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