最新 心・血管病の分子イメージング



著 者
監 修:
今泉 勉(久留米大学医学部心臓・血管内科 教授)    Jagat Narula(カリフォルニア大学アーバイン校循環器内科 主任教授)
編 集:
田原 宣広(久留米大学医学部心臓・血管内科,カリフォルニア大学アーバイン校循環器内科)
発行年
2010年6月
分 類
循環器一般
仕 様
B5判・220頁・48図・27表 カラー写真106点
定 価
(本体 8,500円+税)
ISBN
978-4-8159-1863-7
特 色 
 血管造影に代表されるように従来の画像診断は主に形態診断であった.しかし,心筋梗塞をきたすプラークを例にとれば,心筋梗塞をきたすプラークは,その狭窄度が25〜50%と軽度であり,このことはプラークの形態ではなくその性状こそがプラーク破綻の大きな要因であることがわかる.心・血管病における画像診断は,いまや形態診断から性状診断へと変化し,心・血管病の分子イメージングの世界は急速に広がりつつある. 本書は, 心・血管病の分子イメージングの世界をコンパクトにまとめた最新のテキストである.

●序   文●

 ￿私はもともと画像診断の専門家ではない。専門家でない私がこの単行本の監修をするようになったのは訳がある。心・血管病の画像診断の進歩は目覚ましい。しかし、血管造影に代表されるように従来の画像診断は主に形態診断であった。何万例という冠動脈の血管造影をみてきて思ったのは、われわれはもしかして治療の必要のないプラークにインターベンションをしているのではないかということである。事実、心筋梗塞をきたすプラークはその狭窄度が25〜50%と軽度であることは今や周知の事実となった。このことはプラークの形態ではなく、その性状がプラーク破綻の大きな要因であることを意味する。
 最近では超音波、CT、MRIなどで不安定(vulnerable)プラークの同定ができるという報告が相次いでいるが、素人の私が画像をみてもはっきり確信がもてなかった。一方、動脈硬化は炎症であり、不安定(vulnerable)プラークにはマクロファージの集積があることも周知の事実となっている。しかし、なにぶんにも目で見えない。私も他の人と同様自分の目で見えないものは信じることができない。そんな折、大学のPETセンターでがん検診を受けている患者の頸動脈にFDGの取り込みが亢進しているものがいることがわかった。頸動脈エコーと対比すると確かにプラークが存在する。文献を検索すると1〜2年前に同様の所見がCirculationに報告があり、しかも、その部位に内膜【剥】離術を施行してプラークにマクロファージが集積している画像が掲載されていた。そのとき初めてFDG-PETで炎症性プラークを可視化できることに自信をもった。
 その後当教室の田原先生を中心にPETを用いていくつか臨床研究を行った。彼が、画像診断の専門家であり、JACCイメージングの編集長であるJagat Narula先生のもとに留学しており、Narula先生から田原先生に心・血管病の分子イメージングの本を書かないかと言われてできあがったのがこの本である。本のタイトルをみて頂くだけでも、分子イメージングの世界が急速に広がりつつあることがおわかりになると思う。
 分担執筆者の北海道大学玉木教授、関西労災病院石田先生をはじめ、この方面の専門家の先生にはお忙しい中、執筆を賜わり大変感謝しております。素晴らしい本ができあがったと思っております。最後にこの本が日本の読者のお役に立てることをNarula先生とともに祈念致します。
 平成22年5月吉日
 監修 今泉 勉

■ 主要目次


1 心・血管病の分子イメージングの歴史、現状
  T.分子イメージングの潮流
  U.心血管領域における分子イメージングの現状

2 原理・方法
【1】 原理・装置
  T.分子イメージング
  U.計測装置―SPECT/PETを中心として―
  V.心血管分子イメージングの実例
【2】 分子プローブの分子設計
  T.核 種
  U.合成化学・生物学・薬剤学的性質
  V.心・血管病の分子イメージング用放射性分子プローブの分子設計の例
【3】 方 法
  T.心筋梗塞の発症
  U.梗塞病変の炎症所見
  V.プラーク内の可能性あるトレーサの標的
  W.現在研究中のトレーサ標的が可能な分子
  X.マクロファージのイメージング
  Y.血管新生のイメージング
  Z.アポトーシスのイメージング
  [.Cell traffickingの分子イメージングへの応用
  \.当院でのカテーテル下での分子イメージングに関する取り組み
【4】 融合画像
  T.融合画像の作成方法
  U.CTとの一体型装置の出現
  V.PET/MRIの出現
  W.冠血流CTとの融合画像
【5】 対象臓器
 a.癌
  T.FDG-PETの保険適応とわが国の現状
  U.FDGの癌集積機序とFDG集積の評価
  V.FDGが集積しにくい癌
  W.FDG-PETの臨床の実際
  X.治療効果判定
  Y.PETがん検診
 b.心 筋
  T.心不全の分子病態解明と分子イメージング
  U.細胞移植治療と分子イメージング
 c.血 管
  T.動脈の構造
  U.弾性動脈と筋性動脈
  V.血管を栄養する血管
  W.生理活性物質

3 心・血管病の病理
【1】 心筋炎・心筋症
  T.心筋炎の組織学的診断基準と分類
  U.心筋症の定義と分類
  V.代表的な心筋炎・心筋症の病理組織学的所見
【2】 動脈硬化
  T.ヒト冠動脈プラークの分類
  U.不安的プラークの病理・病態
  V.プラーク不安定化に関与するバイオマーカー
【3】 動脈瘤
  T.動脈壁の構造
  U.動脈瘤の生物学的特性

4 分子イメージングの基礎
【1】 FDG
  T.2-デオキシ-2-[18F]フルオログルコース(18F-FDG)とは
  U.18F-FDGを用いた不安定プラークのイメージング
【2】 MMP
  T.動脈硬化病変の進展、血管リモデリングおよび病変の不安定化に果たすMMPの役割
  U.不全心の病態進展および形成におけるMMPの役割
  V.MMP分子イメージング
  W.動脈硬化抑制治療のモニタリングにおけるMMP分子イメージングの有用性
【3】 アネキシン
  T.アポトーシス
  U.フォスファチジルセリン
  V.アネキシンV
  W.不安定プラークとアネキシンV
  X.急性心筋梗塞とアネキシンV
  Y.心不全とアネキシンV
  Z.その他の心血管疾患とアネキシンV
  [.今後の課題
【4】 心筋梗塞後のコラーゲン沈着の分子イメージング
  T.心筋梗塞後の心筋リモデリング
  U.心筋リモデリングを評価するトレーサ(▲99m▲Tc-CRIP)
  V.梗塞モデルマウスにおけるCRIPイメージング
  W.心エコーによる左室機能、左室内腔の変化の推移
  X.病理学的評価
  Y.抗RAA系薬剤による薬物治療後の評価
  Z.まとめ
【5】 遺伝子発現
  T.遺伝子発現イメージングの概念
  U.さまざまなモダリティのレポーター遺伝子

5 心臓病の分子イメージング
【1】 心筋viability評価
  T.心筋代謝
  U.心筋viabilityの定義
  V.心筋viabilityの臨床的意義
  W.心筋viabilityの評価の基準
  X.核医学検査による心筋viability検出
  Y.各種核医学手法による心筋viabilityの診断精度
  Z.各種核医学手法の予後推定における有用性
  [.FDG-PET検査の臨床的意義
  \.各種画像診断手法の心筋viability診断精度の比較
  ].その他の心臓核医学検査による心筋viability診断の試み
【2】 心サルコイドーシス
  T.サルコイドーシスの病態・病理
  U.症例提示
  V.Gaシンチグラフィ
  W.心筋血流SPECTおよび123I-BMIPP SPECT
  X.18F-FDG PET
  Y.心臓MRI
【3】 心筋炎・心筋症・心臓腫瘍
  T.心筋炎
  U.心筋症
  V.心臓腫瘍

6 血管病の分子イメージング
【1】 高安動脈炎
  T.概 念
  U.疫学と病因
  V.臨床症状
  W.診 断
  X.18F-FDG PET
【2】 動脈硬化
  T.炎症と動脈硬化
  U.分子イメージング
  V.FDG-PET
  W.FDG-PETによる不安定プラークの検出
  X.動脈硬化の炎症に関与する因子
【3】 大動脈瘤・大動脈解離
  T.大動脈瘤・大動脈解離について
  U.大動脈瘤の分子機序・病態
  V.分子イメージングについて

7 分子イメージングによる薬物治療の評価
【1】 副腎皮質ステロイド 
  T.副腎皮質ステロイド
  U.血管炎症候群
  V.血管炎症候群におけるステロイド治療の効果判定
  W.心サルコイドーシス
  X.心サルコイドーシスに対するステロイド治療の効果判定
【2】 スタチン
  T.不安定プラーク
  U.スタチン
  V.画像診断
  W.スタチンによる薬物治療の効果判定
【3】 プロブコール
  T.背 景
  U.プロブコール治療効果の18F-FDG PETによるイメージング
  V.まとめ
【4】 その他
  T.レニン・アンギオテンシン系阻害薬に対する薬物評価
  U.コレステロール吸収阻害薬に対する薬物評価

8 将来展望
【1】 冠動脈プラークの分子イメージング
  T.冠動脈プラーク(plaque:粥腫)とは
  U.どのような冠動脈プラークがACSへ移行しやすいのか?
  V.不安定プラークの病理組織像と2-deoxy-2-[F-18]fluoro-D-glucose(FDG)-PETとMDCT
  W.ACSで現在わかっていること
  X.ACSとMDCT
  Y.不安定プラークとFDG-PET
  Z.不安定プラークにおいて何が重要か? FDG-PETに期待される役割とは?
  [.不安定プラークとFDG-PET/MDCT
  \.冠動脈プラークにおける分子イメージングの将来展望
【2】 CTによる分子イメージング
  T.CTを用いた冠動脈評価
  U.ナノ粒子を用いた分子イメージング
  V.Micro-CTを用いた分子イメージング
  W.CTによる分子イメージングの今後の展望
【3】 MRIによる分子イメージング
  T.分子イメージングとは
  U.MRIによる分子イメージングの特徴
  V.ナノテクノロジーを用いたMRIイメージングプローブの開発
  W.心血管疾患におけるMRI分子イメージング
  W.今後の展開

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