改訂第2版の発刊に向けて
初版の発刊にあたりましては、各方面からご好評を頂き、増刷の運びとなりました。これも皆様のご支援の賜物と感謝致します。ただ初版の発刊のあと2年が経過し、この間、がんセンターの診療ならびに連携拠点病院としての役割も大きく変貌を遂げてきました。このため、この度新たに改訂第2版を出すことに致しました。診療面では各科のプロトコールの見直し、新しいレジメンの登場、また精神腫瘍科、サポーティブケアセンター、在宅支援、がんサポートチームの新設など、主に緩和に関する整備が進んできました。また、新たに国の方針として打ち出された地域連携クリティカルパスの導入などに向けて、地域連携室の強化と、新たなパスの導入も確実に実を結んできています。新規技術の導入では超音波気管支内視鏡(EBUS)により肺がんの縦隔リンパ節転移診断が確実になり、肺がんの診療に大きな変化をもたらしました。さらにこの技術を用いたがんの遺伝子診断の開発も進んでいます。今回新たに追加された脳外科の神経膠芽腫では遺伝子診断に基づくテーラーメイドの治療も紹介されています。精神腫瘍科ではがんの臨床現場で生じる精神的な諸問題—がん罹患による精神的衝撃、がん治療の支障になる精神症状の管理—を主に取り扱っています。これによりがんにまつわる身体的、精神的、社会的ストレスや不安に対し適切な情報を提供することでこれらを軽減したり、カウンセリングや薬物療法で治療に役立てています。がん拠点病院の体制に関しても、今までの教育研修専門部会、院内がん登録専門部会、相談支援専門部会、在宅緩和医療専門部会に加えて地域連携クリティカルパス専門部会が立ち上げになり、この中に六大がん(胃がん、肺がん、乳がん、肝がん、大腸がん、子宮がん)の部会が設置されました。この臓器別がんの連携パスの導入により拠点病院と地域病院、かかりつけ医が連携し、患者さんの自宅近くで質の高い医療を提供することが可能となります。これにより、がん治療の均てん化、標準化、レベルアップがさらに進むと期待されます。このハンドブックが、がん治療に携わる皆様になんらかの参考になれば幸いです。
編集委員長 木村秀樹
第1部 疾患別プロトコールと成績
■1 肺がん
1 肺がんの治療プロトコール
2 治療成績
■2 食道がん
1 初発食道がん
2 切除後再発
3 CRT後再燃
4 治療成績
■3 胃がん
1 胃がんの治療プロトコール
2 治療成績
■4 大腸がん
1 結腸がんおよび直腸S状部、上部直腸がん
2 下部直腸がん
■5 肝細胞がん
1 外科的切除が第一選択の場合
2 内科的治療が第一選択の場合
■6 膵臓がん
1 切除可能例
2 術後再発例
3 切除不能例
■7 乳がん
1 乳がんの治療プロトコール
2 治療成績
■8 卵巣がん、子宮がん
1 上皮性卵巣がん
2 悪性卵巣胚細胞腫瘍
3 子宮体がん
4 子宮頸がん
■9 前立腺がん、腎がん
1 概 念
2 前立腺がんの診断方法
3 前立腺がんの病期診断
4 治療法
5 再発治療
6 前立腺がんの治療プロトコール
7 腎がんの治療プロトコール
■10 リンパ腫、急性白血病
1 びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)
2 DLBCLに対するR−CHOP療法の治療成績
3 急性白血病
■11 骨肉腫
1 骨肉腫の治療プロトコール
2 当科における骨肉腫への取り組み(治療成績)
■12 喉頭がん
1 喉頭がんの治療プロトコール
2 治療説明と治療成績
■13 脳腫瘍
1 乏突起神経膠腫とは
2 治療について
3 治療成績について
4 神経膠芽腫の治療
■14 精神腫瘍科
1 精神腫瘍学とは
2 精神腫瘍科で取り扱う問題
3 精神腫瘍科コンサルテーション
4 精神腫瘍科で行う治療
5 がん患者・家族の精神的サポートの体制
第2部 がん診療連携拠点病院としての活動
■1 千葉県のがん拠点病院と千葉県がんセンターの役割
■2 がん医療従事者研修事業と診療プロトコール開発管理委員会(Cancer Board)
■3 院内がん登録
1 動き出した「がん登録」
2 院内がん登録とは
3 院内がん登録の対象と内容
4 院内がん登録の利用
5 地域がん登録
6 がん対策の推進へ
■4 地域医療連携
1 がん診療における地域連携
2 地域連携クリティカルパスの活用
3 地域医療連携室の役割
■5 サポーティブケアセンター
1 緩和ケアの早期導入
2 症状マネジメント
3 緩和医療のコーディネート
■6 緩和医療センター
1 緩和医療センターへの入院の目的
2 在宅療養のサポート
3 入院患者数と平均入院日数
■7 がんサポートチーム
1 チームの役割
2 チームメンバー
3 コンサルテーションの実際
4 勉強会の開催
■8 患者相談支援センター
■9 外来化学療法の進歩と当センターの取り組み
1 がん化学療法の現況
2 治療プロトコールの整備と電子カルテの活用
3 副作用マネジメント
4 スタッフ教育
5 今後の問題点
■10 抗がん剤投与方法の統一
■11 地域連携クリティカルパス(泌尿器がんモデル)
1 千葉泌尿器科地域連携協議会
2 前立腺がんの地域連携パス
3 地域連携パスの運用システム
4 地域連携パスの運用状況
第3部 先進医療
■1 肺がん切除後の補助化学免疫療法─所属リンパ節由来の樹状細胞と活性化リンパ球を用いて
1 対象および方法
2 結 果
3 成 績
■2 強度変調放射線治療(IMRT)
■3 切らずに超音波で腫瘍を焼灼する治療─HIFU─
■4 画像診断の進歩─三次元画像の治療への応用
■5 核医学の進歩
1 核医学による診断
2 核医学による治療
■6 脳腫瘍の画像支援ナビゲーション手術
■7 超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS—TBNA)
1 縦隔・肺門リンパ節転移診断法
2 EBUS−TBNAの適応と注意点
3 EBUS−TBNAの臨床成績
4 EBUS−TBNAの将来展望
■8 新規がん候補遺伝子の同定から創薬へ
■9 がん組織バンクとその応用研究
1 神経芽腫の組織バンクとその応用研究
2 成人がんの組織バンクとその応用研究
■10 がんプロトコールスタディにおける前向き付随研究の推進