●序 文●
はじめに
国際的緊張の高まりの中「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(国民保護法)に関する厚生労働省国民保護計画において、NBC災害・テロへの対応体制を確立することが喫緊の課題となっている。しかし現状では原因物質ごとに異なる医療体制がとられており、実際のNBCテロ発生時に、まっ先に矢面に立って対応しなければならない救急医療機関において、初動時の対応困難、混乱が懸念される。研究班では、今後のあるべき方向性として、N・B・Cと原因物質ごとに異なる対応を行うことを廃止し、救急医療機関においてすべての原因物質に対して適切な初期対処が可能となるような体制整備を求めてきた。
研究班では、平成18年度厚生労働科学「テロに対する医療体制の充実及び評価に関する研究」において「医療機関におけるNBCテロに対する標準的対応」をまとめた。これを受け、平成19年度の現研究班において医療機関に対する研修の手法・教材を開発し、厚生労働省より日本中毒情報センターに委託され「NBCテロ対策セミナー」として実施している。今回、セミナーの実施を通して、現場レベルでの具体的対応を効果的・効率的に実施できる手順を一般の救急医療機関における初動マニュアルとして策定した。さらに、本マニュアルに沿って対応するために整備するべき「標準的資器材リスト」を整理し添付している。各災害拠点病院および救急医療機関におかれましては、NBCテロへの適切な対応のために必要となる諸資器材および院内体制を整備し、マニュアルに基づいた訓練を実施して頂きたい。
本マニュアルが、各医療機関でのテロ対応体制整備に大いに活用され、「いざ、テロ発生!」の際、適切な受け入れ対応および診療が展開され、被災者および病院職員の人的被害が最小限に食い止められることを期待している。
厚生労働科学研究事業「健康危機管理における効果的な医療体制のあり方に関する研究」主任研究者東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科救急災害医学
大友 康裕
■主要目次
重 要
本マニュアルは、各施設で既に策定している「院内災害対応マニュアル」と補完的に運用することを前提に作成した。よって地震や大規模事故などの通常災害発生時に実施される院内対応を基本とし、本マニュアルではCBRNEテロ発生時における対応の際に付加的に実施するべき事項について解説する。
CBRNEテロ医療対応における重要概念
1 医療機関におけるCBRNEテロ
災害対応の全体的な流れ
2 事前計画
3 CBRNEテロ・災害発生後の準備
4 収容準備(Prepare)
T.ゲートコントロール(Gate control)
U.ゾーニング(Zoning)
V.除染(Decontamination)エリア設定
5 Pre DECON triage(除染前トリアージ)
6 除染(Decontamination)
7 Post DECON triage(除染後トリアージ)
8 評価と診療(Evaluation and Care)
9 必要資器材リスト、必要人員リスト
付録CBRNEテロ災害患者への案内掲示板(例)(CD付)