最新 狭心症診療の実際
- 著 者
- 編集:小川 久雄(熊本大学大学院医学薬学研究部循環器病態学 教授)
- 発行年
- 2009年3月
- 分 類
循環器一般
- 仕 様
- B5判・292頁・142図・写真105・74表
- 定 価
- (本体 8,000円+税)
- ISBN
- 978-4-8159-1834-7
- 特 色
- 近年の高齢化,食生活の欧米化,社会生活でのストレスの増大などによって,冠動脈疾患は増加の一途をたどっている.狭心症についても,病因としてのメタボリックシンドロームの重要性の認識,診断機器の著しい進歩により正確さを増した治療成績,新薬の開発,治療に関する日本人固有のエビデンスの報告など,著しい展開がみられる.
しかし,狭心症の診療の根幹は,発作をコントロールしてクオリティライフを高めること,急性冠症候群の発症を予防することに変わりはない.本書は,第一線で活躍する循環器専門医が,狭心症の概念,病態,診断,治療など,どの項目をみても世界的レベルのうえで最新の内容を,著者らの実際の臨床でしか培えないエッセンスとともに盛り込んだ狭心症の診療テキストである.
本書で最新の狭心症診療の根幹に触れ,担当医として「何をなすべきなのか」を知ることができる.狭心症診療に従事する研修医やプライマリ・ケア医,さらに循環器専門医にも幅広く役立つ本書をぜひ手にとって読んでいただきたい.
●序 文●
近年人口の高齢化、食生活の欧米化、社会におけるストレスの増大により冠動脈疾患は増加の一途にある。冠動脈疾患の代表的疾患は狭心症と心筋梗塞である。分子生物学やモダリティの進歩により病因が詳細に解明されてきた。狭心症の診断と治療についても最近の急速な発展により著しい展開がみられている。病因としてのメタボリックシンドロームの重要性は広く認識されるところとなった。診断に関しては、血管内超音波法や血管内視鏡さらにはoptical
coherence tomography(OCT)やマルチスライスCTの著しい進歩で正確さを増した。また、インターベンションもdrug-eluting
stent(DES)の普及により、治療成績も一段と向上した。一方、遅発性血栓症などの新しい問題も出てきている。薬剤としてスタチンの有効性も認識され、また抗血小板薬の使用法の重要性もクローズアップされてきた。しかし、従来からの硝酸薬、Ca拮抗薬、β遮断薬などの基本的な薬剤の重要性は変わるものではない。
狭心症の診療は日進月歩で、治療に関するエビデンスも続々と発表されている。従来は欧米のエビデンスを日本にそのまま当てはめて応用してきたが、最近は日本人のエビデンスを出そうとの機運が高まり、数多く報告されるようになった。日本人の狭心症は欧米人とは異なる。その代表が冠攣縮であり日本から多くの素晴らしい業績が発表され、「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン」も出された。その他、体質や薬物の反応性などでも日本人と欧米人とでは異なる点は多々みられる。狭心症診療においては本当に多くの知識が必要とされるようになってきた。多忙な循環器専門医には厳しい状況にある。しかし、診療の根幹をなすものは従来から大きく変わるものではない。発作をコントロールしてクオリティライフを高めること、急性心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠症候群の発症を予防すること、である。そのために何をなすべきかを掴むことも重要である。狭心症診療はさまざまな疾患の中でも、担当医による成績の差が出やすい分野であるし、それ故に努力しがいのある分野と考えている。
本書は第一線の臨床医によって書かれた最新の狭心症診療のテキストである。内容は狭心症の概念、病態、診断、治療のどの項目をみても世界的に見て最新の内容が書かれている。しかも実際に臨床に携わっている先生にしか書けないエッセンスがにじみ出ている。本書が狭心症診療に従事している研修医やプライマリ・ケア医のみならず循環器専門医にもお役に立てると確信している。
平成21年3月吉日
編集 小川久雄
■ 主要目次
1 狭心症の概念
2 狭心症の病態生理
3 狭心症の分類
4 狭心症の病理像
5 狭心症をいかに予防するか
6 メタボリックシンドロームと狭心症
7 虚血性心疾患と性差
8 冠動脈硬化症の成因
9 たこつぼ(型)心筋障害
10 狭心症の診断における問診のポイント
11 狭心症の診断における心電図判読のポイント
12 狭心症の緊急処置と専門医への転送の判断
13 冠攣縮性狭心症の診断基準
14 狭心症における心筋シンチグラフィ
15 狭心症の診断におけるマルチスライスCT(MSCT)
16 狭心症のカテーテル検査
17 狭心症における血管内超音波法(IVUS)の意義
18 狭心症に対するOptical Coherence Tomography(OCT)
19 狭心症の診断における血管内視鏡
20 狭心症の薬物療法
21 冠動脈インターベンション(PCI)の適応
22 Drug-eluting stentについて
23 安定狭心症の治療指針
24 不安定狭心症の治療指針
25 冠攣縮性狭心症の治療指針
26 糖尿病を合併する狭心症患者の治療
27 腎疾患を合併する狭心症患者の治療
28 脂質異常症を合併する狭心症患者の治療
29 冠動脈バイパス術(CABG)
30 重症冠動脈病変に対する冠動脈インターベンション
31 薬物療法、PCI、CABGの対比
32 血管新生療法