見て診て学ぶ 虚血性心疾患の画像診断
−CT・MRI

核医学・USで診断する



著 者
編集:
木村 文子(埼玉医科大学国際医療センター画像診断科 教授)
西村 重敬(埼玉医科大学国際医療センター心臓内科 教授)
発行年
2009年3月
分 類
￿  循環器一般 放射線医学・核医学
仕 様
B5判・372頁・271図・写真396・35表
定 価
(本体 14,700円+税)
ISBN
978-4-8159-1832-3
特 色 
 非観血的心血管画像診断法の各種検査法の概略を素早く学びたいと望んでいる循環器医,循環器を専攻したいと考えている若手医師や放射線診断学や核医学を学び始めた方々を対象に,今後臨床画像検査で主流となる統合画像診断時代を見据え各検査の特徴,適応,比較などをわかりやすく解説した虚血性心疾患の画像診断法のテキスト.
 統合画像診断時代では,循環器医,放射線医,診療放射線技師,放射線物理士などが協力し,形態と機能の両面からの疾患,病態の評価が必要とされる.循環器医にとっては基礎的原理,撮像法,画像構成法を,放射線医には画像診断以外の知識を,それぞれ一定水準の知識をもてるようにバランスよく解説.各検査法の特徴がよく理解でき,臨床的根拠に基づいて目的にあった検査の適切な選択ができるようになっている.
 虚血性心疾患における画像診断を用いた診断戦略決定のためにぜひお役立ていただきたい.


●序   文●

 非観血的心血管画像診断には、30年以上の歴史をもつ心エコー図検査と心臓核医学検査に加えて、新しく心臓CT検査と心臓MRI検査が、機器の開発と進歩に伴い臨床での使用が可能となってきた。観血的検査法の中の冠動脈造影検査は虚血性心疾患診断のgold standardとして用いられ、血管内超音波検査は経皮的冠動脈形成術の前後で実施される。
 心臓CT検査、心臓MRI検査のような新しい検査法が開発導入されたとき、それを用いて臨床診断を行うには、最低限の知識を学び経験を積むことが望まれる。学ぶべきポイントは、各機器や検査法の基礎原理、撮像法、画像構成法と影響因子、診断方法と定量評価法などである。同時に、関係する疾患の臨床ガイドラインを知る必要もある。一方、心エコー図検査あるいは心臓核医学検査においても、機器・技術の進歩や新しい診断法が開発され、臨床的エビデンスも追加されている。一般に、循環器医には基礎的原理、撮像法、画像構成法などについての理解が不足しがちであり、放射線医には画像診断以外の知識が不十分となる傾向は避け難い。本書は、その点も配慮し、循環器医と放射線医のそれぞれの立場から利用頂けるようにしながら、全体としてバランスを保つ構成とするように努めた。
 画像検査法として望ましい検査法とは、診断精度が良好、再現性がよい、予後予測ができる、治療方針決定に寄与する、身体的負担が少ない、費用対効果にも優れるなどが挙げられる。DPC下の診療報酬制度では、入院患者では画像診断が包括医療に含まれており、各検査法の特徴をよく理解して、臨床的根拠に基づき予後改善の診断戦略に有用である検査の適切な選択は、限りのある社会資源の有効利用のために、われわれに求められていることである。
 心血管系の画像診断法も、非観血的と観血的検査、形態的と生理学的評価検査、代謝評価検査、分子イメージング検査などに分類することができる。さらに、PET-CTやSPECT-CTの普及に伴い、部位と機能評価像を重ね合わせた融合画像診断や機能画像を組み合わせた統合的診断も一般的に行われるようになってきている。癌の画像診断では、既に局在部位とその部位の生理学的異常を同時に評価することが普及しており、心血管系の画像診断でも、形態か機能かの二者択一の議論でなく、両面からの疾患、病態の評価が必要となっている。今後は、統合的評価によって、より適切な介入・治療が選択でき、アウトカムの改善が得られるか否かの検証が望まれる。統合画像診断の時代には、読影者は、各検査法について一定水準の知識と経験をもつことが必須である。本書では、専門家の先生方に各検査の特徴、適応、比較などをわかりやすく執筆して頂き、統合画像診断時代の先駆けとなる内容にしたいと考え編集した。
 欧米では、複数の検査を用いて循環器医と放射線医が協力して診断をする心血管画像診断センターが新設され、その数も急速に増加しつつある。同時に、循環器領域の専門分野として、心血管画像診断(cardiovascular imaging)部門を確立させて、専門医養成を目指したトレーニングプログラムをつくるべきとの議論がなされている。専門医養成が最終目標としても、その第一歩は、循環器医、放射線医、診療放射線技師、放射線物理士などが協力することであり、本書はその成果といえる。
 本書を、検査法の概略を素早く学びたいと望んでいる循環器医、循環器を専攻したいと考えている若手医師や放射線診断学や核医学を学び始めた先生方などの循環器疾患の診療に携わる方々に利用して頂き、虚血性心疾患における画像診断を用いた診断戦略決定に役立てて頂ければ幸いである。
 平成21年3月吉日
 木村 文子
 西村 重敬

■ 主要目次

1 画像診断に必要な臨床的基礎知識

 T.虚血性心疾患の分類
 U.冠動脈硬化症の病理
 V.安定労作性狭心症の病態
 W.冠攣縮性狭心症の病態
 X.虚血性心筋症の病態
 Y.急性心筋梗塞に対する再灌流療法
 Z.冠動脈リモデリングと冠動脈硬化の進展ならびに退縮
 [.狭心症の治療ム冠血行再建術
 \.薬剤溶出性ステント(DES) 


2 画像診断に必要な解剖、生理の知識

 1.解剖・生理の一般的な知識
 T.冠動脈の解剖 U.一般的な冠循環の生理

 2.CT
 T.心臓CTの画像表示法 U.冠動脈のCT解剖 V.冠静脈のCT解剖 W.心臓のCT解剖

 3.MRI
 T.撮影断面の決定と有用性 U.各撮影断面の断層解剖

 4.核医学
 T.標準的心筋セグメント分類と冠動脈支配領域 U.冠動脈の走行、支配領域と心筋SPECT V.冠動脈狭窄度と心筋虚血 W.冠血流予備能(CFR)

 5.US(T TE、IVUS)
 T.経胸壁心エコー図検査(TTE) U.TTEを理解するための解剖学的知識 V.TTEを用いて評価し得る心臓生理:心機能評価 W.血管内超音波検査(IVUS)


3 画像診断の特性、検査方法

 1.CT
 T.CTの特性 U.検査の手順 V.撮影条件の決定 W.撮像開始のタイミング X.造影剤投与法 Y._-blockerの使用について Z.再構成法 [.その他の注意点

 2.MRI
 T.MRIの特性 U.心臓MRIの撮影法 V.心臓MRIの検査プロトコール W.心臓MRIの安全性について

 3.核医学
 T.使用される放射性医薬品と検査の特性 U.負荷法、検査プロトコールV.撮像装置、撮像方法 W.データ処理、画像化 X.定量化、画像解析

 4.US
 T.超音波検査の基本原理 U.心エコー図検査の主な方法と原理 V.実際の検査法 W.心エコー図による基本的計測法 X.心エコー図による虚血性心疾患の診断

 5.IVUS
 T.血管内超音波検査(IVUS)の原理 U.IVUSの撮影方法V.IVUSによる診断


4 冠動脈病変の評価

 1.CT
 T.冠動脈狭窄病変の検出能と限界 U.冠動脈プラークの評価 V.冠動脈ステントの評価 W.冠動脈石灰化の評価X.CTの情報をPCIに活かす

 2.MRI
 T.冠動脈MRAの特長と変遷 U.Whole heart coronary MRA撮影のポイント V.冠動脈MRAの臨床的有用性 W.冠動脈MRAの課題と今後

 3.IVUS
 T.冠動脈狭窄の検出能 U.Remodeling V.不安定プラークの同定 W.薬剤溶出性ステント(DES)とIVUS

 4.どう使い分けるか
 T.冠動脈狭窄の評価 U.冠動脈プラーク評価 V.冠動脈プラークの経時的変化 W.ステント評価X.左主幹部病変 Y.静脈グラフト病変 Z.慢性完全閉塞(CTO)病変


5 心筋灌流の評価

 1.CT
 T.CTによる方法 U.具体的撮像方法 V.早期造影欠損(ED)とは何を示しているのか W.心筋梗塞の評価:安静時心筋パーフュージョンX.狭心症の評価:薬剤負荷心筋パーフュージョン Y.問題点Z.MRIとの比較

 2.MRI
 T.心筋パーフュージョンMRIの検査方法U.心筋虚血評価のための負荷心筋パーフュージョンMRI V.負荷心筋パーフュージョンMRIの診断能 W.急性心筋梗塞患者における安静時心筋パーフュージョンMRIX.心筋パーフュージョンMRIの定量評価 Y.問題点

 3.核医学
 T.心臓核医学検査の理論的背景 U.心筋血流シンチグラフィの方法ム撮像と読影 V.血流の定量化 W.虚血の診断能 X.問題点 Y.長所と短所ム他のモダリティと比較して

 4.US
 T.運動・ドブタミン負荷心エコー図検査 U.冠動脈エコー図検査 V.心筋コントラストエコー図検査 W.ストレインとストレインレート

 5.どう使い分けるか
 T.心筋灌流評価の原理 U.各検査法の臨床成績とその比較 V.現時点における診断戦略 


6 心機能評価

 1.CT
 T.一般的事項 U.撮像 V.解析 W.臨床現場での応用 X.解剖と機能の融合

 2.MRI
 T.MRIを用いた心機能評価法の特徴 U.シネMRI V.流速・流量測定 W.タギング法

 3.核医学
 T.心電図同期心筋SPECT U.Cardio GRAF V.心RIアンギオグラフィ

 4.US
 T.方法と診断法 U.利点と限界 V.他の方法との比較

 5.どう使い分けるか
 T.心エコー図検査 U.核医学検査 V.MRI W.MDCTX.各モダリティの使い分け 


7 心筋viability評価

 1.CT
 T.方法 U.急性心筋梗塞のMDCT V.陳旧性心筋梗塞のMDCT W.他のモダリティとの比較、今後の展望

 2.MRI
 T.シネMRIのviability評価における役割 U.遅延造影MRIの仕組み V.遅延造影MRIによるviabilityの評価 W.遅延造影MRIにおける微小循環障害所見 X.拡がりつつある遅延造影MRIの臨床応用 Y.問題点

 3.核医学
 T.201Tl心筋シンチグラフィによる心筋viability評価 U.99mTc製剤心筋シンチグラフィによる心筋viability評価 V.低用量dobutamine負荷心電図同期SPECTによる心筋viabilityの評価 W.123I-BMIPPによる心筋viabilityの評価X.18F-FDGイメージング Y.各心筋viability診断法の比較

 4.US
 T.理論的背景 U.ドブタミン負荷心エコー図検査V.心筋コントラストエコー図検査W.他のモダリティとの比較X.今後の課題

 5.どう使い分けるか 各種診断方法によるmyocardial viabilityの評価とその比較
 T.心筋viabilityの定義と臨床的意義 U.各種検査による心筋viabilityの評価V.Viabilityの有無:血行再建と左室機能の改善 W.Viabilityの有無:治療と長期予後 


8 今後の展望

 1.CT
 1 CT被曝と被曝低減の試み
  T.心臓CTの被曝線量が多い理由 U.被曝線量計測の指標 V.CTの被曝線量とその他の検査との比較 W.CT被曝と発癌リスクX.心臓CTにおける被曝低減戦略 
 2 256列CT〜Area detector CT:64列MDCTとの比較
  T.256列検出器CTの開発 U.64列MDCTと比較した256列CTの特徴V.プロトタイプ256列CTの問題点 W.Area detector CT(ADCT)の登場X.臨床例
 3 Dual source CT
  T.Dual source CT(DSCT)の原理 U.DSCTの臨床的有用性 V.DSCTを用いたスキャンプロトコール W.DSCTによる冠動脈評価X.冠動脈評価におけるDSCTの利点、問題点Y.DSCT読影の注意点Z.心機能評価 [.小児への応用
 4 高分解能CTイメージングの可能性:Fine-cell detector CT
  T.高分解能CTイメージングがもたらすもの U.マイクロCTV.Fine-cell detector CT(FDCT)の概要 W.FDCTの可能性 

 2.MRI
 T.現況と今後の展望 U.高磁場3T装置 V.多チャンネル化(32チャンネルコイル) W.3Dデータ収集 X.複数機能検査(シネ遅延造影)

 3.核医学
 T.心臓核医学検査の特徴 U.心筋血流量の定量評価V.エネルギー代謝イメージング W.分子機能イメージング X.血管情報と心筋血流情報との関係

 4.US
 T.体表アプローチの心エコー図検査 U.血管内超音波検査(IVUS)
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