どうする!?外来診療 糖尿病の患者教育
−教えて 学んで 疑問に応える



著 者
編集:坂根 直樹(独立行政法人国立病院機構 京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室 室長)
発行年
2009年3月
分 類
￿  糖尿病
仕 様
B5判・154頁・69図・写真14・45表
定 価
(本体 3,800円+税)
ISBN
978-4-8159-1831-6
特 色 
 糖尿病は「患者教育の病気」ともいわれている.
 自覚症状のなさから進行してゆく恐ろしさを実感できずにいる患者には,医学的根拠に基づいた注意をしても一過性のものになってしまい治療の継続が難しい.糖尿病を見つけたら,自覚症状がない患者やすでに合併症が出ている患者に上手に説明し,患者をやる気にさせる<説明力>が糖尿病患者に向き合う医師には求められている.
 本書では,治療に取り組む患者の信頼感をたかめ,いかに治療中断を防ぐかを糖尿病専門医が懇切に解説している.多忙な外来診療のなかで医師が行う食事,運動療法,また患者の特徴に合った薬物療法選択や,いざというときの外来でできるインスリン導入法や血糖自己測定の活用の仕方など,また最近注目されているナラティブ・アプローチや難しい患者への対応法も取り上げ,最終章では患者からよく聞かれる質問と上手な対応法を〔Q & A〕としてコンパクトにまとめた.
 糖尿病患者への指導と教育の教科書であり,外来診療のアプローチ法を発見する手がかりとなり,外来診療で困ったときにすぐに役に立つようになっている.糖尿病専門医のノウハウを学びぜひ日常診療で実践していただきたい.


●序   文●

 本邦でも食生活やライフスタイルの近代化,そして高齢化に伴い糖尿病患者が増加しており,その対策が急務とされています。しかし,「一度,入院して糖尿病についてじっくり学んでみてはいかがですか?」と患者に糖尿病教育入院を促しても,「仕事が忙しくて入院する時間がない」「自覚症状がないから,まだ大丈夫……」などと言い訳される場合もよくあります。「糖尿病は患者教育の病気」ともいわれています。漫然と糖尿病薬を患者に投与するだけでは血糖コントロールは改善しません。「そんなことをしていると大変なことになりますよ」と医学的おどしを用いてもその効果は一過性のようです。これからの外来診療の中では,いかに楽しく患者をやる気にさせるかが医師に求められているのではないかと思います。
 それでは,忙しい外来診療でどのくらいまで糖尿病教育は可能でしょうか? まずは上手に糖尿病を見つけ,自覚症状がない患者や既に合併症が出ている患者に上手に説明する「説明力」が必要となります。患者に難しい医学用語をわかりやすく説明することで,患者の理解が深まります。忙しい外来診療の中で医師が行う食事,運動療法とはどんなものでしょうか。そして,低血糖などの副作用の少ない患者の特徴に合った薬物療法を選択することで医師への信頼感は高まります。それが,治療中断を防ぐわけです。いざとなったら,外来でできる上手なインスリン導入法や血糖自己測定の活用まで身に付けておきたいものですね。最近はやりのナラティブ・アプローチや難しい患者への対応を学ぶことで,新しい外来診療のアプローチ法を発見する手がかりになるかともと思います。
 そして,本書の後半では「ご飯を食べなければお酒を飲んでもいいですか?」など患者からよく聞かれる質問と上手な対応について「Q&A」としてコンパクトにまとめてあります。その場で,いい加減に答えることなく,上手に対応することで患者の満足度が上がることでしょう。
 以上,「どうする!? 外来診療—糖尿病の患者教育」と題して,外来診療で困ったときにすぐに役に立つような本づくりを目指しました。いずれの先生方も第一線で糖尿病患者と深くかかわっておられる方々です。是非,各先生方のノウハウを学んで,皆さんの外来診療の中で実践してみてください。
 平成21年3月吉日
坂根直樹

■ 主要目次

1 糖尿病患者の見つけ方
1. 問診に際してのポイント
2. 糖尿病の診断基準
3. 診断に利用される検査
4. 75gブドウ糖負荷試験判定区分・判定基準
5. 臨床診断の手順
6. 正常型と境界型の基準および境界型の取り扱い

2 自覚症状がない患者への教育
1. 自己認識を手助けする
2. 集団の力を利用する
3. 変化ステージの活用
4. 患者の思いを聴く

3 合併症が出ている患者への教育
1. 糖尿病外来の実情
2. 糖尿病の自然史
3. 合併症の評価
4. 説明にあたって

4 医師が行う食事指導とは?
1. 食事療法はなぜ難しいのか
2. 実効のある食事療法とは
3. なぜ食事療法は長続きしないのか?
4. 糖尿病食事療法の意義
5. 食事療法の今昔
6. 糖尿病食は難しくない
7. 食事療法の原則
8. 食事療法指導の実際

5 外来でできる運動療法
1. 患者の運動習慣の変化ステージは?
2. 運動が血糖を下げる機序と糖尿病予防
3. 糖尿病患者における運動療法の意義

6 患者に合った薬物療法の選び方
1. いつから薬物療法を始めるのか
2. 薬物療法の基本的な考え方
3. 経口薬の特徴と薬物療養指導のポイント

7 外来でできる上手なインスリン導入法
1. 外来でできるインスリン導入の満たすべき条件とは
2. 従来療法と呼ばれるインスリン療法の盲点
3. それならばどのようなインスリン療法を勧めるべきか?
4. 3回注射を行ってくれない患者,3回はちょっとと言う医師,
  それならば…

8 血糖自己測定の上手な活用法
1. 糖尿病教育のスタートは技術=血糖自己測定(SMBG)から
2. SMBGの導入
3. SMBGの振り返り
4. SMBGの利用
5. SMBGを行うにあたってうまくいかない場合
6. 代替採血について

9 糖尿病に対するナラティブ・アプローチ
1. 自己紹介:ナラティブ・アプローチとの出会い
2. ナラティブ・アプローチが生まれた背景
3. ナラティブ・アプローチの特徴
4. 社会構成主義に基づく医療実践とはどのようなものか?
5. ナラティブ・アプローチによって「医師(医療者)-患者関係」は
  どう変わるのか?
6. ナラティブ・アプローチに求められる態度
7. ナラティブ・アプローチに基づく医療実践の具体例
8. ナラティブ・アプローチで用いられる「ストーリー」という言葉に
  ついて
9. ナラティブ・アプローチが目指すのは「変化を生む対話」である
10. 「私の糖尿病物語」を書いてもらうという試み
11. 臨床におけるストーリーの意義
12. ナラティブ・アプローチにおける病歴聴取のポイント
13. 診療記録の取り方のコツ

10 開業医の立場からの患者教育
1. 患者にやさしい医療の実践
2. 治療の意義を具体的に教育する
3. 高血糖が持続する場合
4. チーム医療の重要性
5. まとめに代えて

11 難しい患者さんへの対応
1. 行動変容への変化ステージ
2. 関係性を強める
3. 共感する
4. 動機づけの三要素
5. 非言語的コミュニケーション
6. エンパワーメントアプローチ
7. アキュチェックインタビュー
8. 難しい患者さんがあなたを相手に問題を投げかけてきたら
9. 過保護
10. 難しい患者さんに対応するための治療者側の環境

Q&A患者さんからよく受ける質問への上手な対応
1●糖尿病って尿に糖が出ることではないのですか?
2●自覚症状がないのですが,本当に糖尿病なのですか?
3●どのくらいの血糖から合併症が出ますか?
4●間食を止めるとストレスが溜まりそうです。何かよい方法は
  ありますか?
5●犬の散歩でも運動になりますか?
6●薬の副作用,特に低血糖が心配です。低血糖を起こしにくい
  薬はありますか?
7●インスリン治療は1回始めたら一生続けないといけないので
  しょうか?
8●痛くない血糖の測定法はありますか?
9●糖尿病の情報やほかの患者さんの療養について知ることがで
  きるサイトはありますか?
10●糖尿病専門医を探すにはどうしたらいいですか?
11●ご飯を食べなければお酒を飲んでもいいですか?


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