医学生・コメディカルのための手引書
リハビリテーション概論
- 著 者
- 編 著
- 上好 昭孝
- (大阪河崎リハビリテーション大学 学長)
土肥 信之
- (兵庫医療大学リハビリテーション学部 学部長・教授)
- 発行年
- 2009年2月
- 分 類
リハビリテーション医学
- 仕 様
- B5判・200頁・42図・45表
- 定 価
- 改訂第3版があります.
- ISBN
- 978-4-8159-1827-9
- 特 色
- 読みやすさと理解しやすさに重点をおいたリハビリテーション概論の教科書.
本書は, これから看護師, 理学療法士, 作業療法士, 言語聴覚士や関連専門職を目指しておられる方々や, またリハビリテーションにかかわられる医学生諸氏に,
“リハビリテーションとは何か”, その本質にふれ, 現在のリハビリテーションの仕組みを正しく知ってもらうことを第一のテーマとした解説書である.
従来の教本とは異なり, 分かりやすく, 理解しやすさに重点をおいており, 指導される側の先生方にも, 一定レベルの内容を網羅した使いやすい教科書であることを目指している.
執筆者には, 現在リハビリテーションの現場において指導する立場で活躍されている先生方にご執筆いただいた.
リハビリテーションによせる社会の今後の期待を知るとき, わが国のリハビリテーションを担う医学生, コメディカルの方々が, 本書を通して“リハビリテーションとは何か”を正しく理解し,今後の進路に必ず役立てていただける格好の教科書となっている.
●序 文●
近年医学の進歩とともに栄養や感染症対策の向上で,人生50年ともいわれた戦後と比べ,平均寿命が飛躍的に延び,高齢化社会を迎えていることは喜ばしいことである.
一方,高齢化とともに認知障害や介護の必要な高齢者も増加し,大きな社会問題となっている.また,戦後経済発展とともに家族の崩壊ともいわれる核家族化が進み,女性の就労による社会進出,晩婚化などさまざまな要因から少子化が起こり,社会構造が大きく変化してきた.いったん,心身に障害を伴えば過去のような大家族制とは異なり,家族介護を得ることが困難となり,老老介護などの介護問題が起こっている.そのためいかに健康に長寿を迎えるかが国を挙げ重要な課題となっている.
2000年WHO(世界保健機関)は病気や認知症などで要介護状態になる期間をできるだけ短くするため,平均寿命とは異なり,生活指標として健康寿命を提唱した.わが国においても厚労省が健康寿命の延伸を目的とし,2008年に21世紀の国民健康づくり運動「健康日本21改訂」を提示した.
このような時代背景を考えれば,これからリハビリテーションにかかわられる医学生,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士や関連専門職を目指しておられる方々に“リハビリテーションとは何か”,その本質にふれ,現在のリハビリテーションの仕組みなどを知ってもらうことは重要である.
そこで従来の教本とは異なり,リハビリテーションの本質に少しでもふれてもらい,リハビリテーションとは何かを考えてもらうために,分かりやすく,読みやすく,理解しやすさに重点をおいた解説書としてのリハビリテーション概論の必要性を以前から痛感しており,また,多くの方々から強く要望されてきた.
幸い今回現在リハビリテーションの現場と教育の場で活躍されている先生方に,編集者の思い ・ 趣旨にご賛同をいただきご執筆いただいた.リハビリテーションによせる社会の今後の期待を知るとき,本書を通して“リハビリテーションとは何か”を今一度考えてもらい,今後の進路に役立てていただければ編集者の所期の目的が達せられ,望外の喜びである.
最後に編集にあたり何かとご助言いただいた土肥信之教授,こころよくご執筆いただいた先生方に感謝申しあげます.
2009年1月
代表編集者
上 好 昭 孝
■ 主要目次
第1章 リハビリテーションの概念・理念・定義
1.リハビリテーションの概念
1)概 念
2.リハビリテーションの語源
1)語 源 2)歴史的変遷
3.リハビリテーションの理念
1)理 念
2)障害者自立生活運動
3)ノーマライゼーション・ハビリテーション
4.リハビリテーションの定義
1)定 義
第2章 健康と障害の概念と分類
1.健康・疾病・障害
1)健 康
2)疾 病(病 気)
3)障 害
2.疾病と障害の分類
1)ICD(国際疾病分類)
2)ICIDH(国際障害分類)
3)ICF(国際生活機能分類)
3.障害を起こす疾病
1)障害はあらゆる疾患に起こる可能性がある
2)死亡原因と,寝たきりとなるなどの障害を
起こす疾患は異なる
3)リハビリテーションの適応は広がっている
4.障害へのアプローチ
1)チームアプローチとカンファレンス
2)ICIDHとICFによるアプローチの違い
3)不可欠な社会資源の利用
5.廃用症候群,誤用症候群,過用症候群
1)廃用症候群とは
2)廃用症候群の症候
3)誤用症候群
4)過用症候群
第3章 障害の心理,心理的・社会的問題と受容
1.発達段階と障害
1)誕生から児童期へ
2)青年期から成人期へ
3)老 年 期
2.病(障害)の心理
3.防衛機制とコーピング
1)防衛機制の各種
2)コーピング(Coping:対処)
4.障害受容
5.リハビリテーションと心理的アプローチ
1)リハビリテーションにおける心理療法の意義
2)カウンセリング,心理療法,精神療法
3)心理療法が必要な事例とは
4)心理療法の基本的事項
6.患者・家族心理教育
第4章 ヒトの発達と評価−とくに小児−
1.ヒトの発達とは
1)発達と成長
2)発達の法則と特徴
2.発達の時期と特徴
1)発達時期の分類と発達課題
2)発達の目安と鑑別診断
3.発達の評価・検査
1)小児期の発達に関する行政システム
2)発達の評価
4.小児のリハビリテーション
1)小児のリハビリテーションの基本的な考え方
2)主な小児疾患とリハビリテーション
第5章 リハビリテーション過程
1.評価とは
2.評価の捉え方
1)障害別評価
2)リハビリテーションの時期別評価
3)疾患別評価
4)分野別評価
3.評価の時期
4.評価の内容
1)身体的評価
2)精神的評価
5.ゴール設定
6.プログラムの作成
7.リハビリテーション過程とクリニカルパス
第6章 リハビリテーションの諸段階
1.医学的リハビリテーション(医学的リハ)
1)目 的
2)救急医療
(受傷,発症から医療施設への搬入を含む)
3)急性期医療
(発症後2〜3週間−急性期リハ)
4)亜急性期医療
(発症後約3ヵ月−急性期・回復期リハ)
5)慢性期医療(3〜6ヵ月−回復期リハ)
2.職業的リハビリテーション(職リハ)
1)目 的
2)職リハのサービス提供について
3)職リハにおける問題点
3.社会的リハビリテーション(社会的リハ)
1)概 念
2)障害者に対する社会の変革
3)障害者の能力(社会生活力)向上
4.教育的リハビリテーション(教育的リハ)
1)歴史的背景
2)特殊教育(特別支援教育)の現状
3)統合教育と交流教育
4)現状と課題
第7章 医療とリハビリテーション専門職種と役割
1.リハビリテーション専門職種にかかわる諸問題
1)インフォームドコンセント
2)医療安全
3)個人情報保護
4)チーム医療
5)EBM
2.リハビリテーション専門職種
1)医 師
2)理学療法士
3)作業療法士
4)言語聴覚士
5)義肢装具士
6)臨床心理士
7)リハビリテーション看護師
8)医療ソーシャルワーカー
9)介護福祉士
10)介護支援専門員
第8章 チームアプローチ
1.チーム医療,連携医療
1)チームの構成
2)チームリーダー
3)チームアプローチの有効性
2.評価会議とゴール設定
1)評価会議
2)評価会議の問題点
3)ゴール設定
3.リハビリテーションプログラムと
クリニカルパス
1)クリニカルパスの成り立ち
2)わが国のクリニカルパス
3)リハビリテーション医療における
クリニカルパス
第9章 ADL,QOLの概念と評価法
1.ADL(狭義,広義)
1)ADLの概念
2)ADLの項目
3)ADL評価表
2.IADL
1)IADLの項目
2)IADL評価表
3.QOL
1)QOLの概念
2)QOLの項目
3)QOL評価表
第10章 地域リハビリテーションと社会資源,在宅ケア
1.地域リハビリテーションと社会資源
1)地域リハビリテーション
2)社会資源と施設
3)地域リハビリテーションの実際
4)施設サービス
2.在宅ケア
1)在宅ケアと在宅医療
2)ケアの理念
3)ケアの目標
4)ケアの対象疾患
5)緩和ケア
6)介護支援
7)療養支援診療所
8)著者の在宅ケア実績
第11章 高齢者・健康対策と少子化対策
1.高齢者対策
1)ゴールドプラン21
2)2015年の高齢者介護〜高齢者の尊厳を
支えるケアの確立に向けて〜
3)今後の展望と課題
2.健康対策
1)健康管理
2)健康増進(ヘルスプロモーション)
3)1次・2次・3次予防
4)各種保健
(母子保健・学校保健・産業保健・精神保健など)
3.少子化対策
1)少子化の背景
2)少子化対策に関する施策
第12章 医療・福祉制度
1.社会福祉制度の概念と定義
1)社会福祉とは何か
2)社会福祉の対象の多様化
3)社会福祉の原則と連携
4)社会福祉制度の転換と統合
2.医療保険制度
1)医療保険とは何か
2)医療保険の仕組み
3)医療サービスの仕組みと機能
3.公的扶助制度
1)公的扶助とは何か
2)生活保護の基本原理と原則
3)生活保護の種類
4.介護保険制度
1)介護保険が成立するまでの過程
2)介護保険の仕組み
3)介護保険におけるサービス給付の種類と内容
4)介護サービスの提供と利用者の負担
第13章 医療法・福祉関係法規
1.医 療 法
1)医療提供の理念の明示と在宅医療の推進
2)医療計画
2.保健衛生法規
1)地域保健法
2)精神保健福祉法
3)高齢者医療確保法
3.福祉関係法規
1)障害者自立支援法
2)身体障害者福祉法
3)知的障害者福祉法
4)発達障害者支援法
5)児童福祉法
6)老人福祉法