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前立腺肥大症のすべて
- 著 者
- 編集 平尾 佳彦(奈良県立医科大学泌尿器科学 教授)
- 発行年
- 2009年1月
- 分 類
泌尿器科学
- 仕 様
- B5判・390頁・229図・105表
- 定 価
- (本体 12,000円+税)
- ISBN
- 978-4-8159-1823-4
- 特 色
- 最近20年間の前立腺肥大症(BPH)に関する診断,治療,医療機器の発展は目覚しく,その診療における最新の知見をBPH診療のエキスパートが,高齢化社会のただなかにいるすべての一般実地医家へお届けする.
診 断:病態を定量化する試み、症状については国際前立腺症状スコア、形態については経直腸的超音波断層診断法、機能については尿流動態検査法が確立し,これら三者を総合的に評価する疾患概念も確立された.臓器特異性の高いPSAの開発は前立腺癌との鑑別診断向上に大きく寄与している.
治 療:排尿症状の改善に寄与する薬物療法としてαブロッカーの効能が見直され、副作用の少ない薬剤が開発された.泌尿器科医のみならず一般実地医家も診療に加わりBPHに悩む患者に大きな福音をもたらしている.さらに医工学の発展は経尿道的前立腺切除術(TURP)の概念を大きく変え,低侵襲治療への発展を可能にしている.
「前立腺肥大症診療ガイドライン」の作成と,新たに導入された過活動膀胱の概念,高齢男性にみられる性機能障害や排泄機能障害、さらには高齢者の加齢に伴う種々の病態への関与もとりあげBPHをとりまく新たな気運を詳解.
今まさに全人的な対応が求められている高齢男性への診療のために,ぜひ本書を紐解いていただきたい.
全人的な対応が求められている高齢男性診療のための必読書.
●序 文●
前立腺肥大症(BPH)の診療概念が大きく変化してきている。医療の発展には、break-throughとなる診断法、薬剤・医療機器を含む治療方法の新規開発が鍵になるが、この20年間においてBPHの診療に寄与する目覚ましい進歩がみられている。従来は、外科治療の対象となる患者には前立腺被膜下摘除術もしくは経尿道的前立腺切除術(TURP)、非対象者には尿道留置カテーテルと、その治療選択肢が極めて少ない状況におかれていた。この間における着実な基礎医学研究、薬学ならびに医工学における成果が積み重ねられ、診断と治療の両者においてepoch
makingとなる発展につながっている。
診断においては、病態を定量化する試みがなされ、症状については国際前立腺症状スコアが、形態については経直腸的超音波断層診断法が、機能については尿流動態検査法が確立され、これら三者を総合的に評価する疾患概念が確立されている。また、臓器特異性の高いPSAの開発も前立腺癌との鑑別診断の向上に大きく寄与している。
治療においても、排尿症状の改善に寄与する薬物療法としてαブロッカーの効能が見直され、副作用の少ない薬剤が開発され、BPHに悩む患者に大きな福音をもたらし、泌尿器科医のみならず一般実地医家も診療に加わるようになってきている。また、医工学の発展も大きく貢献し、前立腺高温度治療に代表される低侵襲性治療の概念はさまざまな機器の開発につながり、TURPの概念を大きく発展させた低侵襲治療に発展してきた。
同時に、これらの幅広い領域における発展を科学的に評価しエビデンスに基づく検証が開始され、「前立腺肥大症診療ガイドライン」が作成されたが、同時にBPHの臨床疫学的・基礎医学的研究がさらに加速され、今まさにBPHを新たな観点から見直す気運が高まっている。近年、新たに導入された過活動膀胱の概念により、男性下部尿路症状は必ずしも前立腺肥大のみに起因していないことが報告され、同時に高齢男性にみられる性機能障害や排泄機能障害、さらには高齢者の加齢に伴う種々の病態の関与なども報告されており、高齢男性への全人的な対応が今まさに求められている。
こうした時期にBPHに関する最新の知見をまとめることが企画され、このような観点から、わが国のBPHの診療に携わっておられるエキスパートに執筆を依頼した本書は、BPHの日常診療に関連する事項を網羅したものとしてお役に立てるものと存じます。
平成21年1月吉日
編集 平尾 佳彦
■ 主要目次
I.前立腺の解剖
1 前立腺の発生と外科解剖
2 前立腺の超音波断層診断
3 前立腺のMRI画像診断
II.前立腺肥大症の基礎
1 前立腺肥大症の疫学
2 前立腺肥大症の自然史
3 前立腺肥大症の成立機転
4 重症度と治療効果の判定基準
5 前立腺肥大症の症状増悪因子
6 前立腺肥大症とPSA(針生検の適応を含む)
III.診断のポイント
1 理学的検査
2 神経学的検査
3 排尿障害と排尿神経機構
4 超音波検査
5 膀胱尿道鏡による診断
6 下部尿路X線画像診断
7 上部尿路画像診断
8 ウロダイナミクス検査
9 ビデオウロダイナミクス
10 排尿機能検査士の役割
IV.診断・治療における問題点
1 小さい前立腺肥大症の鑑別
2 前立腺肥大症と尿失禁・尿滴下
3 前立腺肥大症と排便機能障害
4 前立腺肥大症と間質性膀胱炎
5 前立腺肥大症と性機能
6 前立腺肥大症とLOH
7 前立腺肥大症と尿路感染症
8 前立腺肥大症と前立腺炎
9 前立腺炎の診断と治療
V.治療のポイント
1 治療法の選択と実際
2 薬物療法
3 経尿道的治療
4 経直腸的治療—HIFU
5 開放手術—恥骨後式前立腺被膜下摘除術
VI.前立腺肥大症と社会
1 前立腺肥大症の診療ガイドライン
2 前立腺肥大症診療ガイドラインの問題点と展望
3 前立腺肥大症のインフォームド・コンセント
4 前立腺肥大症のクリニカルパス
5 前立腺肥大症の保険診療上の注意点と問題点
6 病診連携について:いつ専門医に紹介するか
7 前立腺肥大症:在宅・入所介護の問題点