CKDってなに?−その理解と早期発見・治療のために
- 著 者
- 著 北岡 建樹(望星病院 院長)
- 発行年
- 2009年1月
- 分 類
内科学一般 腎臓
- 仕 様
- B5判・136頁・46図・57表
- 定 価
- (本体 3,800円+税)
- ISBN
- 978-4-8159-1822-4
- 特 色
- いま,世界的に腎臓病が注目され,日本でも慢性腎臓病(CKD)は新たな国民病と言われ,2007年
から本格的な取組みがスタートした。CKD対策が国をあげて実施される背景にはCKDの治療が可能な時代になってきたことが挙げられる。
本書はCKDの治療について,腎臓専門医のみではなく,心血管系の循環器系医師,CKDの最大の原因となる糖尿病対策での内分泌系の非腎臓病内科医師,またかかりつけ医との総合的な診療ネットワークの構築に役立つよう企画されたCKDのやさしいテキストである.そして,診療ネットワークでもう一方の主役である患者やその家族にもわかるように平易に記述されている.
医師-医療従事者-患者-家族が,CKD対策の重要性と現状,対策をよく理解し,慢性腎臓病の早期発見と予防のために本書を手元に置いていただきたい.
●序 文●
今、世界的に腎臓病に関心が集まっています。国際腎臓学会と腎臓財団国際連合は2006年より3月の第2木曜日を「世界腎臓デー」と定め、慢性腎臓病(CKD)への理解と早期発見、早期治療の重要性を呼びかけてきています。2008年では3月13日がその日に当たりました。わが国においても2007年頃からCKD対策を大きな目標として取り組むことになりました。そのため日本腎臓学会は、腎臓病を専門としない医師や医療関係者にも理解でき、適切な治療を進められるように「CKD診療ガイド」という書籍を出版し、生活改善や薬剤による治療法などの情報を概論し、さらに日本医師会と協力してCKDの普及に努めています。
日本腎臓学会によると、国内のCKD患者は2,000万人、治療が必要な人だけでも420万人に上ると推定しています。その内訳として生活習慣病やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)などに由来する糖尿病性腎症と従来からの免疫異常による慢性糸球体腎炎が大部分(CKD患者全体の約7割)を占めるとされます。このようなCKDとされる疾患の増加が団塊の世代から中高年を中心に増加しており、慢性腎不全の予備群となっているわけです。
このようなCKD対策が国を挙げて実施される背景には3つの要因があると考えられています。第一は、CKDの終末像である慢性透析患者がわが国では27万人を超え、高額医療費の代表的疾患である透析患者がこれ以上増加することは社会的な問題となり、CKDから透析に至る症例を減らすことにより医療費削減の必要性があること。第二はCKD自体が心血管疾患発症の危険因子であることから、早期発見により心血管系の合併症を防止する、あるいは治療することが可能となってきているため。第三は、CKDの治療が可能な時代になってきたことにあるといえます。
このようなことから、心血管疾患予防と透析患者の抑制を目的としたCKD対策が注目されているわけです。近年CKDと脳卒中、心筋梗塞などとの関連を示す研究が次々と発表され、CKDがメタボリックシンドロームと同じように心血管疾患の危険因子であることがわかってきました。いずれの疾患も、治療として行われる血圧管理や減塩、腎機能保持の方法と心血管疾患予防策はほとんど同じ治療法となり、両者を視野に入れることで、より効率的に治療を進めることができるわけです。
腎機能が低下してなくても、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙などの危険因子をもつ人は「ハイリスク群」と呼ばれ、発症予防のために早期の生活改善や他の疾患の管理が重要だとされます。このようなことから腎臓の専門医だけでなく、循環器系や内分泌系の非腎臓病専門医、かかりつけ医と協力して治療を進める必要があるといえます。
以上のようなCKD診療を推進するためには、腎臓病専門医とかかりつけ医との連携-病診連携という総合的な診療のネットワーク体制が確立されることが急務であるといえます。
それと同時に、すべての国民に健康とは何か、どうすれば健康を維持することができるかを教育することが必要になっているわけです。医学の進歩により長生きすることができるのが当たりまえの風潮ですが、健康を維持するには日常生活の改善が重要であることを理解してもらうことが何よりも大切であるといえます。
わが国の平均寿命は女性は世界1位、男性も世界2位とされています。長生きが当たりまえといっても寝たきり生活の長寿では、自慢にはなりません。健康長寿というか、QOLやADLが良好に維持されている長寿であることが望まれるのです。
ところが現在、世界的にも経済不況の波が押し寄せ先行きの不安が危惧される状況となっています。少子高齢社会の道を歩むことになるわが国の社会・経済情勢の不安は医療福祉の制度にも大きく影響することが予想されます。国民一人ひとりが、自分の健康について深く考え、日常生活管理の重要性を認識していくことが重要になるわけです。今後の社会は健康が何よりの宝であり、自分の健康は自分で守るという自己管理能力が必要になるといえます。
平成20年12月吉日
北岡 建樹
■ 主要目次
CHAPTER1
なぜ今、CKDが世界的に注目されているのでしょうか?
CHAPTER2 腎臓のはたらきと解剖学的知識
1.CKDを理解するための腎臓の基礎的知識
2.腎臓の位置と構造について
3.腎臓の血管系について
4.顕微鏡的な構造は?
5.腎臓にはどのようなはたらきがあるのでしょうか?
CHAPTER3 腎臓病の原因
1.どのような疾患がCKDの原因となるのでしょうか?
CHAPTER4 腎臓病が疑われる症候
1.腎臓病の症候には
2.蛋白尿にはどのような意味があるのでしょう
3.血尿にはどのような意味があるのでしょう
4.蛋白尿・血尿の原因となる腎傷害因子には?
CHAPTER5 検査法とその意義—
1.尿検査の意義は?
2.腎機能の検査
CHAPTER6 腎不全についての基礎知識
1.慢性腎不全(CRF)というのは?
2.尿毒症というのは?
3.現在の透析医療の現実は?
CHAPTER7 CKDに関する基礎知識—
1.CKDの概念と定義
2.ネットワークと病診連携
3.腎機能の解釈について
CHAPTER8 腎機能をどう評価するか?
1.実際的な腎機能の評価には?
2.数式から腎機能を推算する方法
3.eGFRには問題点はないか?
4.腎機能低下に関する個人的な疑問
5.最新の推算式
CHAPTER9 CKDの診断から診療までの要点
1.CKDの原因疾患の検討は?
2.検尿の重要性
3.CKDの臨床経過
4.CKDと心血管系合併症の関係
5.CKDと生活習慣病、メタボリックシンドロームとの関連
CHAPTER10 CKDへの取り組み方—
1.CKDへの取り組み
2.CKDがみられた場合にどうするか
3.専門医への紹介の時期は?
4.CKDの経過観察とかかりつけ医の役割
5.どこまでを目標値とするか
CHAPTER11 治療の基本的な考え方
1.CKDの食事療法の考え方
2.糖尿病診療とその治療
3.脂質代謝異常の管理
4.高血圧の治療
5.腎性貧血の治療
6.CKD-MBDの治療
CHAPTER12 末期腎不全・尿毒症に対する管理
1.食事療法
2.高K血症の対策
3.高K血症の緊急的な治療法
4.代謝性アシドーシスの対策
5.尿毒症毒素の対策
6.透析治療の導入の基準は?
CHAPTER13 腎不全時の薬物療法の特徴
1.腎不全における薬物療法の注意事項
2.腎機能障害時の薬剤の問題
CHAPTER14 CKD対策の目標達成の可能性は
付録 薬剤の使用法