産科救急の初期診療


著 者
編集 北川 道弘(国立成育医療センター副院長)
発行年
2008年9月
分 類
￿  産婦人科学 救命・救急医学
仕 様
B5判・154頁・26図・47表
定 価
(本体 4,600円+税)
ISBN
978-4-8159-1816-3
特 色 
 各疾患や症状で救急来院した場合に,現場にいわわせた医師としてまず第一に何をすべきかを,わが国の産科救急における第一人者の先生方が,初期診療のEBMに基づき解説する産科救急実践書.
 それぞれの疾患,症状に対し第一に何をすべきか各章の頭書に簡潔にまとめ,産婦人科専門医,臨床研修医,コメディカルなど病院,診療所に勤務する幅広い方々にとってすぐに指針となるようわかりやすい構成になっている.
 産科救急医療では,来院したときに初期対応を誤ると重篤な病態へ進行してしまう場合もあり,初期対応の不手際からトラブルの発生も多く報告されている.本書では,初期対応での適切な処置こそがその後の経過を左右するという信念の元にわかりやすく,第一に何をすべきか,またその後どうすれば良いのかを簡潔にポイントを押さえた内容となっている.日常診療において突然やってくる産科救急患者に対し,日頃からの知識と備えのためにぜひ置いていただきたい.


●はじめに●

 産科医療は母と子の2つの命を同時に預かり、また正常妊娠・分娩経過の場合でも突然異常へとダイナミックに変化する極めて特殊な診療分野といえます。いざ来院したときにその初期対応を誤ると重篤な病態へ進行してしまう場合もあり、産科救急の難しい点だと言えます。逆に言えば初期対応で適切な処置が施されればその後の経過が良好に推移する場合も少なくありません。
 臨床においてEBM(Evidence-Based Medicine)の必要性、重要性が叫ばれて参りましたが、医学の進歩は目覚ましく、次々に新しいevidenceが生まれてきております。特に周産期領域の進歩は他の領域に比べて顕著であり、初期対応の不手際からトラブルの発生も多く報告されるようになりました。
 産科にかかわる書籍は多数出版されていますが、産科救急の初期対応に主眼をおいた本はあまりみられておりません。そこで、それぞれの分野でわが国の第一人者の先生方に執筆をお願いし、産科救急における初期診療のEBMに基づいた見解を中心にまとめました。各疾患や症状で救急来院した場合に、まず第一に何をすべきかを頭書に簡潔にまとめてあり、産婦人科専門医、臨床研修医、コメディカルを含むより広い範囲の方々の参考になるよう、わかりやすい構成にしております。是非この本を参考に日常の産科救急診療にあたって頂ければ幸いです。最後にご執筆頂いた先生方の努力に感謝するとともに敬意を表します。

 平成20年8月吉日
 北川 道弘

■ 主要目次

1 妊娠初期の出血
1.切迫流産
 流産の原因
 流産のリスク因子
 妊娠初期の出血と絨毛膜下血腫
 流産の診断
 流産の合併症
 切迫流産・流産の治療
2.胞状奇胎
 奇胎とは
 奇胎の臨床症状と娩出前診断
 奇胎の娩出
 全奇胎と部分奇胎との鑑別診断
 奇胎娩出後の管理
 胎児共存奇胎の診断と管理
3.子宮外妊娠
 医療面接
 月経歴
 hCG(Human chorionic gonadotropin)値
 内 診
 超音波検査
4.頸管妊娠
 頸管妊娠の病態
 頸管妊娠の診断
 頸管妊娠の治療

2 悪心・嘔吐
 つわり(妊娠嘔吐)と妊娠悪阻
 糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシス)
 妊娠中の肝機能障害

3 発 熱 
 発熱の機序
 白血球数とCRP
 診 断

4 出血を伴わない下腹部痛・子宮収縮
 妊娠初期
 妊娠後期
 妊娠中の偶発合併症

5 出血を伴う下腹部痛(激痛も含め)への初期対応
 Systematic review
 基本的な初期対策
 妊娠時期と代表的な疾患
 その他の鑑別上、重要な疾患

6 水様帯下
 水様帯下について
 Premature Rupture of Membrane(PROM:前期破水)について
 破水の診断
 破水の診断方法
 破水の補助診断
 PROMの確定診断
 PROM症例の高次施設への母体搬送
 PROM診断時の子宮内感染評価
 前期破水診断時の胎児評価
 前期破水後の児娩出時期
 PROM後の治療
 PROMと絨毛膜羊膜炎
 絨毛膜羊膜炎の早期診断
 PROMの予防

7 外陰部疼痛・腫脹・【掻】痒感・膿性帯下
 診察の流れ
 外陰部疼痛・腫脹・【掻】痒感・膿性帯下の鑑別診断(横断的評価)
 代表的疾患と症状、妊娠・分娩や児(胎児・新生児)への影響について

8 妊娠中後期の出血
1.切迫早産
 切迫早産の診断
 早産のハイリスク症例の選別
 その他の検査
 切迫早産の治療、管理
 子宮収縮抑制薬
2.前置胎盤
 臨床所見
 前置胎盤の診断
 癒着胎盤の合併
 癒着胎盤の術前予測
 前置胎盤への対応
 癒着胎盤が予想される場合
3.常位胎盤早期剥離
 定 義
 頻 度
 病 態
 リスク因子
 症 状
 診 断
 管理・治療

9 頭痛、痙攣、意識障害
 妊娠中の頭痛について
 妊婦の痙攣について
 妊娠中の意識障害

10 ショック
 一般的なショックの鑑別と治療
 産科ショックの特殊性
 妊産婦の心肺蘇生

11 自宅・助産所からの搬送例の現状と分娩後搬送例の処置
 わが国の出産を取り巻く現状
 分娩後搬送例の処置

12 不慮の事故の取り扱い
 不慮の事故とは
 妊娠中の外傷の頻度
 妊娠に伴う身体変化
 妊婦外傷患者の評価
 初期評価
 産科的評価
 常位胎盤早期剥離
 Fetomaternal hemorrhage
 予後
 妊婦のシートベルトの装着について
 まとめ
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