見て診てわかる

乳 癌 診療のコツと留意点


著 者
編著 岡  隆宏(京都第一赤十字病院名誉院長)
   李  哲柱(京都第一赤十字病院乳腺外科部長)
発行年
2008年8月
分 類
￿  癌・腫瘍一般 画像医学・超音波医学
仕 様
B5判・150頁・13図・7表・写真269点
定 価
(本体 4,800円+税)
ISBN
978-4-8159-1815-6
特 色 
 外科専門医から,産婦人科,内科,放射線科,家庭医の先生,研修医,また放射線・超音波技師などのコメディカルの方々まで,およそ乳腺疾患の診療に携わる広い読者層を対象に,乳癌の初診から確定診断にいたるまでの流れを260枚にもおよぶ症例写真を提示し,早期診断に役立てるよう企画された乳癌ビジュアルテキストである.
 内容は,問診,視触診,マンモグラフィ,超音波,MRIと乳癌の診断に関する幅広い分野をカバーし,「見て診てわかる乳癌」の書名どおり,視診・触診による局所所見の捉え方をはじめ,マンモグラフィ,超音波,MRIなどの画像診断の豊富な症例写真による解説に重点を置いた.また,第1章の身体所見では,著者が長年積み重ねてきた触診技術のエッセンスを披露し,画像診断機器の精度にのみ頼りがちな専門医には熟読していただきたい内容である.
 欧米とは逆に,乳癌の死亡率がいまだ上昇傾向にあるわが国ではまだまだ改善の余地が残されている.さらなる早期診断,早期治療に本書を役立てていただきたい.


●はじめに●

  最近,わが国では乳癌の発症頻度(罹患率)と死亡率が急激に増加している。それも欧米並みに中年層よりも高年齢層での発症率が増えているという。わが国の乳癌による死亡者数は年間約1万人,罹患者数は正確な統計資料はないが,約4万人と推定されている。死亡者数の罹患者数に対する割合は欧米よりも高いとされており,このことはわが国では乳癌の早期発見に対する方策にまだまだ改善の余地があることを示している。どこの臓器の癌でも一般的には中高年齢者に多いが,乳癌は20歳台後半〜30歳代でも決して稀ではないのが女性にとって恐いところである。
 頻度の高い乳腺疾患の種類は,乳癌,乳腺症(嚢胞を含む),乳腺炎,線維腺腫,の4疾患である。この中ではもちろん乳癌が最重要であり,他の3疾患は乳癌を否定するため,すなわち乳癌の鑑別疾患としての対象でしかない。
 乳腺疾患の診断は画像診断機器の進歩により,正確かつ迅速になされるようになってきた。もちろん,そのためには的確な画像の描出法と読影力が重要である。また,乳腺疾患は体表の疾患であるため,問診のほかに,触診と視診による身体所見(局所所見)から診断することも可能である。身体所見であれ,画像診断であれ,高い観察能力が乳腺疾患,特に乳癌の診断の重要な要素である。このことから本書の表題を“見て診てわかる乳癌”とした。問診(病歴の取り方)と触診方法のほか,特に視診による局所所見の捉え方と,マンモグラフィ,超音波,およびMRIによる画像診断に重点をおき,実際の局所所見と画像を供覧しつつ解説していくことを本書の基本方針とした。
 従来,乳腺疾患の診療は主として外科医が担ってきた。しかし,最近は各地の健(検)診センターで乳腺疾患の診療に携わる内科医や産婦人科医も増えている。また,いわゆるかかりつけ医(家庭医)が日常診療の中で,乳腺疾患,特に乳癌を見つける機会も増えていくことだろう。本書がそのような医師諸先生の少しでもお役に立てば,著者として望外の幸いである。

岡 隆宏

■ 主要目次

I 身体所見

1.問診(病歴とmedical history) 
 1.年齢
 2.主訴
 3.生活歴(生殖歴)
 4.既往歴
 5.家族歴
 6.女性ホルモン摂取歴
2.視診による乳癌の局所所見
 1.視診を行う際の諸条件と方法
 2.視診で得られる所見
3.触診方法
 1.リンパ節の触診
 2.乳房の触診
 3.乳腺腫瘍の触診所見

II 画像診断

1.画像診断の役割とその進め方
 1.乳腺疾患と乳腺の構造
 2.腫瘤性病変の種類
  1.視触診もしくは画像上乳腺に腫瘤を形成する病変
  2.乳腺にはっきりした腫瘤を形成しない病変
 3.診断の進め方

2.マンモグラフィ
 1.マンモグラフィの特徴
 2.所見の捉え方と症例
  1.腫瘤(Masses)
  2.石灰化(Calcifications)
  3.その他の所見

3.超音波
 1.超音波の特徴
 2.検査の基本事項
  1.被検者の体位と検者の位置
  2.探触子の操作法
  3.検査手順
 3.病変部の位置と大きさの記載方法
  1.部位(左・右・両側)
  2.大きさ
 4.所見の捉え方と症例
  1.腫瘤
  2.乳管内病変
  3.その他の所見
 5.症例の追加とまとめ
  1.授乳期乳腺炎
  2.乳腺症
  3.線維腺腫
  4.葉状腫瘍
  5.嚢胞内腫瘍(嚢胞内乳頭腫または嚢胞内癌)
  6.非浸潤癌
  7.浸潤性乳管癌
  8.浸潤性小葉癌
  9.粘液癌
 10.髄様癌
 11.扁平上皮癌

4.MRI
 1.MRIとは
 2.MRI検査の実際
 3.造影剤
 4.乳腺MRIの目的
 5.診断の実際
  1.腫瘤の形態・辺縁の性状
  2.腫瘤内部の造影パターン
  3.腫瘤を形成しない病変の診断
  4.代表的な所見用語
  5.T2強調画像
  6.ダイナミック検査
  7.鑑別診断
  8.ACR BI-RADS-MRIとカテゴリー分類
 6.症例提示
  1.良性病変
  2.悪性腫瘍(乳癌)
  3.MRI診断の問題点
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