女性診療科医のための 漢方医学マニュアル 改訂第2版


著 者
著 後山 尚久(藍野学院短期大学 教授)
発行年
2008年9月
分 類
￿  産婦人科学 東洋医学
仕 様
A5判・468頁・124図・116表
定 価
(本体 6,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1814-9
特 色 
 ストレス社会,高齢化社会の到来,慢性疾患の増加など,現代医学をとりまく複雑な環境にますますその必要性が認められてきた漢方医学の有用性を,永年の診療経験と漢方医学に対する研鑽を通じて痛感してきた著者が,初版以来の5年の間に蓄積された最新研究データ,診療経験,漢方医学教育の変遷などについて,漢方診療への新しい考え方のもとにまとめた第2版である.目指したのは,西洋医学の先端医療に東洋医学の叡知を加えることによって,本当の意味で「治せる」医師,新しい現代医療の担い手の医師への指南書である.
 原則として難解な漢方用語をできるだけ用いず,現代用語でわかりやすく解説.同時に東洋医学専門医,指導医にも十分活用できる知識を提供している.これから漢方を診療に取り入れようとされている先生方には漢方医学ワールドへの入門書として,またすでに漢方による診療を実践されている先生方にはさらに女性診療への充実をはかるために,ぜひ手元に置いていただきたい.

●改 訂 序 文●

 ここ数年の間に全国の医科大学,大学医学部すべてに漢方医学に関するカリキュラムが例外なく導入され,漢方理論,診断,治療,生薬薬理,臨床応用など,さまざまな方向から漢方医学の講義が始まった.それに伴い,卒後研修現場においても,指導医の立場にある医師が漢方医学の基礎的臨床素養に関する教育を研修医に施さなければならなくなっている.時代は大きく変わった.
 かつて私たちの大先輩医師たちが,わが国の標準医療として多くの病人に行っていた医療が,現代医療の最前線で復活しようとする蠢きを,筆者もここ2〜3年はとみに肌で感じられるようになった.医学生や前期研修医の漢方医学への関心は飛躍的に高くなり,市井での漢方勉強会への参加医師の数も想像を超える勢いで増加している.このような勉強会の講師の立場である筆者からみれば,参加医師の漢方医学への取り組みやその勉学姿勢は真剣そのものといえる.
 漢方医学を基礎から学ぼうとする医師には,まず例外なく常に進取の姿勢が伺われ,西洋医療に関してもさらにどん欲に吸収したいという気持ちが汲み取れる.漢方医学の古書のひとつである備急千金要方には,「下医は病を治し,中医は人を治し,上医は国を治す」とある.また「治療」は「癒し」とも書いてある.
 本書は漢方医学を学んで,癒師になることを望んでいる医師に読んでいただきたい.本書が女性の医療の質を少しでも高め,多くの女性が健康で幸せな日々を送っていただくことができるようになれば幸いである.

 2008年8月
蜩の声を聴きながら
後 山 尚 久

■ 主要目次

第1章 漢方医学への入門

1.日常の中の漢方
 1)暮らしに漢方を見いだす
 2)暮らしの中での感冒の対処と漢方医療
 3)よく知られている生薬の基原
2.日本漢方の歴史と現在
 1)漢方医学という呼称
 2)漢方医学と日本漢方の歴史
 3)中国医学の日本への導入
 4)後世派医学
 5)古方派医学と日本漢方
 6)明治以降の日本漢方6
3.漢方医学と西洋医学の接点
 1)西洋医学の誕生
 2)東洋医学の確立
 3)漢方医学と西洋医学の相違点
 4)漢方医学と西洋医学の接点
4.女性疾患と漢方理論
 1)女性の加齢と陰陽五行説
 2)性差医学としての漢方医学
 3)気血水でみる女性の不定愁訴
 4)月経不順の気血水,五臓説による説明
5.漢方薬への科学のメス
 1)漢方の本質
 2)漢方への科学的アプローチ
 3)温経湯の作用機序解明への試み
 4)桂枝茯苓丸の作用機序解明への試み
 5)加味逍遥散の作用機序解明への試み
6.季節と漢方
 1)六淫とは
 2)六淫の邪と症候,適応漢方

第2章 漢方医学理論から臨床へ

1.女性診療における漢方医学の位置づけ
 1)漢方医学の女性疾患での位置
 2)女性疾患における漢方治療の対象
2.月経不順(月経周期異常)の漢方治療
 1)月経不順,排卵障害の漢方医学的解釈
 2)月経不順に用いる漢方薬の「証」と標準治療
3.不妊症と漢方
 1)不妊症の漢方医学的解釈
 2)一般的な不妊症の漢方療法
 3)漢方薬による不妊治療の臨床成績
 4)新しい現代的な不妊症の漢方療法
4.妊娠と漢方
 1)妊娠の漢方医学的解釈
 2)妊娠中の漢方療法
 3)産後の愁訴と漢方
5.月経困難症,月経前症候群の漢方治療
 1)月経困難症の漢方医学的解釈と漢方治療
 2)月経前症候群(緊張症)の概念と漢方理論,その治療
6.子宮筋腫,子宮内膜症の漢方治療
 1)子宮筋腫の漢方医学的解釈とその病態
 2)子宮内膜症の漢方医学的解釈とその病態
 3)子宮筋腫,子宮内膜症の漢方治療
 4)子宮筋腫,子宮内膜症の治療に用いる処方解説
7.女性の感染症の漢方治療
 1)女性の感染症の漢方医学的解釈とその病態
 2)女性の感染症の適応漢方
8.女性の幼児期,思春期の漢方治療
 1)漢方医学における小児の病態
 2)思春期の捉え方
 3)女性小児期,思春期の疾患と漢方治療
9.更年期障害の漢方治療
 1)更年期障害(不定愁訴症候群)の漢方医学的解釈
 2)更年期不定愁訴例の漢方診断と方剤選択
10.ストレスと漢方
 1)ストレスの成因と漢方医学的解釈
 2)ストレス関連疾患の漢方治療
11.心身医学と漢方医学の接点とその臨床応用
 1)心身医学,漢方医学と複雑系
 2)心身症とは
 3)心身医学と漢方医学
12.女性老年期の漢方治療−尿失禁,動脈硬化,骨粗鬆症
 1)老化,高齢化の漢方医学的解釈
 2)閉経後のエストロゲン失調晩期障害への漢方治療
13.冷え症の漢方治療
 1)冷え症の漢方医学的解釈
 2)選択される漢方と冷え症治療
 3)漢方治療による血流動態
14.腹部症候の漢方治療
 1)腹部症候の漢方医学的解釈
 2)腹部症候への適応漢方薬
15.貧血の漢方治療
 1)貧血の漢方医学的解釈
 2)貧血に対する漢方治療
16.頭痛の漢方治療
 1)緊張性頭痛と片頭痛
 2)頭痛,頭重感の漢方医学的解釈とその病態
 3)頭痛,頭重感の漢方治療
17.肥満女性の漢方治療
 1)肥満の漢方医学的解釈
 2)肥満女性の漢方治療
18.睡眠障害の漢方治療
 1)不眠症の漢方医学的解釈
 2)不眠症に対する漢方薬
 3)不眠症の治療への漢方薬の応用
19.精神障害の漢方治療
 1)精神障害の漢方医学的解釈
 2)精神障害の漢方治療
 3)原典に記載された精神障害に対する漢方方剤
20.癌治療における漢方の役割
 1)癌患者に対する漢方治療の基本
 2)癌患者の心身不調に対する漢方医学的解釈
 3)癌患者の漢方治療
 4)ターミナルケアへの漢方医学を代表とする全人的医療のかかわり
21.これだけは使いたい女性の漢方
 1)更年期不定愁訴症候群
 2)月経異常,不妊症
 3)妊娠合併症
 4)産後の愁訴
 5)女性によく用いられる漢方薬

第3章 漢方の目‥‥漢方診療を理解するために

1.古典について
 1)医 学 書
 2)原典条文
2.漢方理論
 1)気 血 水
 2)五臓六腑
 3)六病位(三陰三陽)
 4)虚と実,陰と陽,寒と熱,表と裏(八綱弁証)
3.漢方と薬学
 1)生薬と薬理,薬効
 2)生薬の構成
 3)上薬,中薬,下薬
 4)生薬の配合数と有効性
 5)漢方処方における生薬構成と合方,加減方合方/加減方
 6)暖める漢方と冷やす漢方
 7)動物性生薬
 8)煎薬,丸薬,散薬
 9)漢方薬の名前を読む
  10)煎じ薬の基礎知識
4.漢方診断学
 1)漢方四診
 2)望診(とくに顔診,舌診)
 3)脈   診
 4)腹   診
5.漢方薬の分類
 1)補   剤
 2)駆■血剤
 3)利 水 剤
 4)柴 胡 剤
6.漢方薬の効果
 1)更年期不定愁訴例に対する漢方治療とホルモン補充療法
 2)劇的に効く漢方はあるか?
7.Evidence based medicineと漢方医学
 1)Evidence based medicine
 2)Narrative based medicine
 3)東西融合医療

第4章 症例に学ぶ‥‥こんな患者にはこの漢方

  1.耳鳴り,難聴,疲労感(八味地黄丸)
  2.意欲低下,不眠,いらいら(柴胡加竜骨牡蠣湯)
  3.気力がない,のど〜胸のつかえ,腹部膨満,いらいら(半夏厚朴湯)
  4.顔面・下肢の浮腫,全身倦怠感(五苓散)
  5.不妊症,四肢の冷え,貧血(当帰芍薬散)
  6.のぼせ,肩こり,めまい,いらいら(加味逍遥散)
  7.肩こり,のぼせ,下肢の冷え(桂枝茯苓丸)
  8.動悸,逆上感,不眠(桂枝加竜骨牡蠣湯)
  9.便秘,月経不順(大黄牡丹皮湯)
 10.強い腰から下半身の冷え(当帰四逆加呉茱萸生姜湯)
 11.めまい,ふらふら感,嘔気(苓桂朮甘湯)
 12.倦怠感,疲れやすい,ため息,集中力・持続力低下(補中益気湯)
 13.無月経,体重減少,気力低下(六君子湯)
 14.全身倦怠感,食欲不振,冷え(十全大補湯)
 15.腰痛(疎経活血湯)
 16.のぼせ,背中の灼熱感,易疲労感,月経不順(温清飲)
 17.月経前の気分変調,焦燥感,全身倦怠感(桃核承気湯)
 18.不眠,めまい,のぼせ,頭重感,月経不順(女神散)
 19.妊娠8週,感冒,嘔気,嘔吐(香蘇散)
 20.いらいら,動悸,不眠(抑肝散加陳皮半夏)
 21.感冒後の咳,倦怠感(竹■温胆湯)
 22.過労,不眠症,いらいら(酸棗仁湯)
 23.のぼせ,めまい,頭重感,抑うつ,腹部膨満感(通導散)
 24.月経不順,足の冷え(温経湯)
 25.耳鳴り,しびれ,腰痛(牛車腎気丸)
 26.挙児希望,反復する流産(柴苓湯)
 27.不安,いらいら,不眠,もの忘れ(加味帰脾湯)

第5章 漢方医学での食養生

  1.養生の基本と食養生
  2.食養生の基本
  3.漢方医学における食養生
  4.一般食養生の実践
  5.よくある症状の改善のための食事

付録 漢方のことば / 漢方のなぜ/はてな?

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