総合臨床医に役立つ 内 科 読 本

著 者
著 田村 康二(山梨医科大学名誉教授
        立川メディカルセンター顧問)
発行年
2008年8月
分 類
￿  内科学一般
仕 様
A5判・226頁・13図・77表
定 価
(本体 2,500円+税)
ISBN
978-4-8159-1812-5
特 色
内科医の常識!?
 医学ニュースで時々耳にするけれど,説明できない内科の論理.なんとなくわかるけれど,ちゃんと知っておきたいあの内科の常識.今さら聞けない内科の情報,そんな情報への解説をお届けします.こうすればもっとよい内科医になれる,自分もやってみたいと思うような読みやすく広く役立つ楽しい本.

●はじめに●

 この本は「読む教科書」であり、「調べる教科書」は目指していない。
 あるとき「それは内科医の常識じゃないよ」と言ったら、教室員がこう答えた。「先生はいつか医者の常識は世間の非常識だとおっしゃったじゃありませんか」。なるほどバカの壁という本が売れるわけだ。実は医師の多くは「俺が俺が」でいて主観が強く、しかも時に「それが客観だ」として見ているから困る。誤って認知していることに気づいてもらう必要がある。
 医療裁判で必ず問われることは、「争点が医療の常識に適っているか?」である。内科の大家が口を揃えて強調することは「内科医には考え方、つまり論理が大切だ」ということである。しかし私が知る限り「内科の論理」の体系立った本は見当たらない。
 大学を去ってから実地医療を5年あまりしてみると、内科の常識がつくづく必要だと痛感している。医療の基本的な論理は全科に共通している。しかし「外科医としてもっている論理は、内科にもそのまま通用する」と言われると、「そうかな? だが待てよ……」と言いたくなる。外科には「外科の論理」があるだろうし、それは「内科の論理」とは必ずしも一致しない点もあるからだ。
 50年あまりも内科医をしていても、内科は広く深いので実はいまだによくわかっていないと己の限界を認識しているつもりだ。そこで私は適当なところにエイヤッと線を引いてその線までの理解を「内科の常識」と勝手に決めることにした。内科医の常識とは熟練した内科医の考え方、つまり論理から当然のこととして帰結されることをいうのだろう。
 平成20年からさまざまな医療制度の改革が始まっている。その1つに地域医療連携がある。そこでこの方面のオピニオン・リーダーである順天堂大学の田城孝雄准教授にこれらについての執筆をたってお願いした。私の常識をはるかに超えていて、一線の医師が常識として参考になる新しい内容となっている。

 こうすればもっとよい内科医になれる、自分もやってみたいと思うような読みやすい本になるように努めたつもりだ。新たに参加してくる研修医、内科医の生涯学習、さらには定年後に新たに参入してくる新米の内科医まで方々に広くお役に立てればと思っている。

平成20年8月吉日
田村康二

■ 主要目次

第1話 内科の常識

1 常識を考える
2 生理を学習する
 1.内科医は診療のために多くの事柄を知っておく必
   要がある。しかし今では素人でもインターネット
   で億単位の最新医療情報が得られる
 2.虎の縦縞は変わらない
3 「なんでぇー、嘘ォー、ホント、バカみたい」と
  言う、定型が崩れてきた時代だ
 1.選んだ内科が天職だ
 2.ワーキング・プアから脱却したい医師
 3.50歳・60歳で内科医はどうスキル・アップし、
   他科医は内科へどう転向したらよいか?
4 己の力で己の世界へ。それを自分で証明したら?
 1.Second chance、Hollywood endingなどという
   言葉、聞いたことあるでしょう?
 2.「バカの壁」をよじ登る
 3.壁を登るのを手助けするプログラム
 4.医師になったくらいだから、あなたの知能は優れ
   ている。その優秀性は多才であることを証明して
   初めて立証される
 5.あなたも私も日本人。だから独善的なのだ
5 内科医に必要なのは高いEQだ
 1.EQ(心の知能指数)が高い人が、内科医には適し
   ている
 2.試しに「富士山を動かせますか?」と自問して
   みよう
6 内科医にとって当たりまえでも、他科医には当たり
  まえではないことがある
 1.注射が打てなくても、臨床医か?
 2.内科医の品質保証をしてくれ!
 3.あなたは心臓が専門でしょう? しかし肺はわか
   らないんじゃありませんか?
 4.医療連携とは「みんなで渡れば怖くない」の心理
   なのか?
 5.富士山が綺麗なのは裾野が広いからだ。電信柱が
   どんなに高くても、美しくはない
7 内科診断学は虚学ではないか
 1.Diagnoseとは、「診断する」ではない
 2.「診る」とは?
 3.「断ずる」科学・意思決定学を学ぼう
8 「こんにちは」は声かけだ。それすら訓練がいる
 1.病歴聴取で70%は見当がつく
 2.面接技法は内科医の腕の見せどころだ
 3.既往に学ばないとしたら、それは欠点だ
 4.System Reviewしよう。有用ですよ
 5.「ムンテラ」は藪医者が使う隠語だ
9 五感ってなんだろう?
 1.人はでたらめに表情やジェスチャー、動きなどを
   しない。だから科学的に心を読み取ろう
 2.個室では女性患者と男性医師と、2人きりになって
   はまずい
 3.女性(異性)を診るには特別な注意が必要だ
 3.医療施設の内外での暴力行為から身を守ろう
 4.タッチとハイタッチを活かそう

第2話 内科の診断

1 内科の思考は「帰納的」だ。演繹的思考では誤る
 1.診断したら、診断論理を相手に伝えよう
 2.演繹的思考は教科書的になりかねない
 3.帰納法は内科医の考え方だ。だからあくまでも
   推理にとどまっている
2 内科診断の医師間の一致率は高い
 1.傷病名はICD−10に倣って付ける
 2.傷病名を忘れないで記入する
 3.問題指向(型)医療記録を書く。チーム医療の
   時代なのだ
 4.内科での診断の確からしさは、100%も0%もない
   のが特徴だ
3 どういう医師が格好よいのか?
 1.白衣・ネクタイ無用
4 内科診療は人間観察に始まり観察に終わる
 1.医者着物なんてあるの?
 2.医術は医学とは違い、机の上の本からは学べない
5 患者とのコミュニケーションがとれればよい医療が
  できる
6 内科医のポケットと鞄の中身
 1.白衣のポケットの中身
 2.内科医の鞄の中身
7 嗅覚や味覚さえも診断に使おう
 1.鼻を利かせる
 2.舌を活かす
 3.あなたはインフルエンザ・ワクチンの予防注射を
   する前に、胸部を必ず診察しますか?
8 誤った数字(検査数値など)信仰(テクノロジーに
  溺れる医療)
 1.正常値と基準値を読み違える
 2.あなたのBMIを22にしてください
 3.集団X線検診では思わぬ誤診をしてしまう危険性
   がある
 4.やたらに検診でも検査すればよいわけではない。
   不要な検査をして誤診をする危険性がある
9 パソコンを使えない内科医はおしまいだ
 1.レセプトのオンライン請求の義務化
 2.電子カルテの実用化が迫っている
 3.メタボリックシンドロームの診断基準
 4.クリニカルパスはチーム医療には欠かせない
10 藪医者の手柄話
 1.「あなたのお父さんは認知症です」、なるほど
   認知症の初期診断は難しい
 2.診たこともない病気は、誤診しやすい
 3.内科の病気は治らないから困る
 4.誤診とは避けられない診断のことだ
 5.内科医の常識は劇的に変わる。それが誤診を招き
   かねない
11 死の宣告をする
 1.死後に生き返ったらどうする?
 2.死の宣告は医師の専権事項だ

第3話 内科診療は一般的な水準、常識を下回っては
    いけない


1 医療訴訟における過失の判断基準は「常識」にある
 1.インフォームド・コンセントの常識
 2.学術的水準、医療水準、医療慣行はそれぞれ違う
 3.インターネットで医療情報の常識を知る
 4.診療録の常識
2 内科の慢性疾患への対応を学ぶ
 1.アメリカでも慢性疾患への教育は不十分だ
 2.以前は肺結核、今は高血圧で慢性疾患への対応を
   学ぶ
 3.持病をもっていると医師になれる
 4.終末期医療への対応
3 食事療法・食事箋
 1.健康法
 2.大学でも病院でも教わらない食事処方
 3.肥満や糖尿病は怖い! それなら、白米は止めて
   発芽玄米や玄米に、白パンは止めて黒パンにしな
   さい
 4.米国糖尿病学会などの公式なお勧め料理は「地中
   海料理」だ
 5.高蛋白・低炭水化物食は日本人には合わない?
 6.日本の食事指導・食事箋はアメリカとは基本的に
   違う
 7.肥満、高血糖、高コレステロール症のための食事
   の提案
 8.海外旅行の飛行機内で治療食などの特別機内食を
   味わってみたら?
 9.食育は認知療法の手順で行うと、効果がある
 10.認知療法の手順で行えば、患者とのコミュニケー
   ションは向上する
 11.みのもんたとバナナ
4 運動療法・運動処方をする
 1.医学系大学の体育の授業で、何をわれわれは学ん
   だのだろうか?
 2.運動には体育、スポーツの2種類がある
 3.運動処方をする
 4.米国スポーツ医学会(ACSM)/米国心臓学会
   (AHA)が提唱する運動ガイドライン
 5.体育の実際:ショッピングセンター・ウォークを
   勧める
5 病気の経過・経時的変化に注目していく
 1.「入院熱」がある。入院生活に適応するには、5日
   間かかる
 2.生体リズムにはさまざまな種類がある
 3.血圧にはサーカジアン・リズムがある

第4話 内科の治療

1 誰を治療するのか?
2 患者の言うことを聴く、それが治癒への鍵だ
 1.積極的傾聴をする。しかし患者の気持ちはわかる
   のか?
 2.医師は探偵もする。それが治療になる
 3.治療効果の判定には患者のQOLが大切だ
3 「自然治癒力で助けること」は人類発生以来の内科
   医の務めだ
 1.自然治癒力で治す
 2.自然的療法と人為的療法は相補う
4 「国貧し大学貧し、卒業す」(素十)
 1.内科治療の選択は専門医間では、次第に一致しつ
   つある
 2.医師ごとに違った治療が、今や標準化された治療
   に変わっている
 3.Medical Tourism・地球規模化だ
 4.ジギタリスはなるべく使わない
 5.日本人向けの薬用量とは?
 6.薬物の注意事項は、日進月歩で進化している
 7.ゾロ(後発医薬品)の使用は本当に危なっかしい
   のか?
 8.サプリメントには有効なものがある
 9.処方箋には、統一された記載方法がない
 10.食事と薬の関係に注目しよう
 11.薬と食べ合わせ
5 チーム医療が、治療には必要だ
6 治療効果の有効性を知る目標指数を知ろう
 1.臨床的な「判断値」を利用する
 2.治療目標値とエンドポイントを目指す
 3.医師も患者も血圧コントロールへの認識が
   不十分だ
 4.「医者の不養生」は本当らしい
7 あなたの“医療行為のマンネリ化”が糖尿病治療の
  壁になっていないか?
 1.医師の医療行為がマンネリ化する原因
 2.糖尿病治療でのマンネリ化を減らす方策
8 アスピリンを血栓症の一次予防薬として飲む
9 「ドクター」には「ごまかす」という意味がある

第5話 内科医は地域医療連携で生き残る

1 医療制度改革はこちらへ行く
 1.医療制度改革の方向性
 2.新たな医療計画に盛り込む内容
 3.「良質な医療を提供する体制の確立を図るための
   医療法等の一部を改正する法律案」の概要
 4.医療法の改正
2 医療連携推進の歴史から今後を知ろう
 1.政策の流れからみる医療提供体制改革の方向性
 2.医療提供体制の改革のビジョン案
 3.新医師臨床研修制度
 4.平成16年度4月診療報酬改定
 5.平成18年度医療法第五次改正
 6.対応策
 7.まとめ
3 地域医療連携クリティカルパスが必要だ
 1.医療制度改革と地域医療連携クリティカルパス
 2.地域医療連携クリティカルパス
   (厚生労働省資料より)
 3.地域医療連携クリティカルパスに適した疾患
 4.地域医療連携クリティカルパスの分類
 5.生活習慣病疾病管理地域医療連携クリティカル
   パス
 6.地域医療連携クリティカルパスの必要条件
 7.なぜ、大腿骨頸部骨折の連携パスはうまくいっ
   て、脳血管疾患後遺症の連携パスはうまくいかな
   いのか
4 循環器地域医療連携クリティカルパスを活かそう
 1.循環器地域医療連携クリティカルパスの事例
 2.循環器地域医療連携クリティカルパスの今後・
   進化
5 医療連携を知ろう
 1.医療連携の多様な側面
 2.医療連携の特徴
6 在宅医療の今後を知ろう
 1.在宅医療
 2.今なぜ在宅療養支援診療所か:在宅療養支援診療
   所が必要となった背景
 3.30年間の重み
 4.在宅療養支援診療所の分類
 5.今後の在宅医療
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