見て診て学ぶ 脳卒中の画像診断
  −画像診断法の基礎から臨床応用まで−

著 者
監修 小川  彰(岩手医科大学学長・脳神経外科 教授)
編集 中川原譲二(中村記念病院脳神経外科 診療本部長
         ・脳卒中センター長)
   佐々木真理(岩手医科大学先端医療研究センター
         准教授)
発行年
2008年7月
分 類
￿  脳神経外科学・神経内科学 放射線医学・核医学
仕 様
B5判・572頁・491図・55表 写真1,070点
定 価
(本体 18,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1811-8
特 色
 脳卒中診療に携わる研修医および専門医の方々,放射線技師,臨床検査技師,専門看護師の方々を主な対象に,脳卒中の画像診断をCT,MRI,SPECT/PET,超音波,DSAなどの画像診断法に関する基礎的知識をまとめた第 I 部,脳卒中の各病型に対する各modalityの臨床応用の実際をまとめた第 II 部の2部構成で,基礎的側面と臨床的側面の両面を学べるよう工夫した脳卒中画像診断学の集大成.

●序  文●

  近年の脳卒中診療において画像診断が果たしてきた役割の重要性については、改めて言うまでもないが、画像診断はコンピュータ技術の進展に支えられ脳卒中の病態を的確に診断する方法として普及してきた。その端緒は1970年代後半に導入された頭部CTによって切り開かれた。当時の頭部CT装置では、8スライスの頭部断層画像を撮像するために約20分間という時間が必要であった。分解能も低く、画像解析といってもX線吸収値がレインボーカラーで示される程度であった。しかしこの頭部CTの登場によって脳卒中の三大病型である脳出血、脳梗塞、くも膜下出血などを、発症間もなく確実に鑑別することができるようになったことは、確かに脳卒中診療における『ブレイクスルー』であった。神経学的診断が全盛期であった時代に登場した頭部CTに対する専門医の評価は、当初こそ『CT画像を無批判に使う診療は神経学的診察をおろそかにするものである』として必ずしもよくなかったが、日本脳神経CT研究会(現在の日本脳神経CI学会)や日本神経放射線研究会(現在の日本神経放射線学会)などでその有用性が検証され、治療への応用が進展するにつれて次第に高い評価へと変わった。その後に登場した脳領域における画像診断の量的進歩・質的進歩については、述べるまでもなく目覚ましいものであり、今日、私たちは神経画像診断全盛の時代を迎えている。
 脳卒中の画像診断は、形態的画像診断に裏打ちされた機能的画像診断の開発により、超急性期から精度の高い病態診断を診療の現場にもたらす方向へと進展しつつある。これまでの画像では捉えることが困難であった脳卒中のさまざまな病態が容易に画像化される時代となり、診療の現場ではさまざまな画像診断に基づいて有効性と安全性のより優れた診療計画が立てられるようになってきている。しかしながら、診療計画に用いる画像診断技術が高度であればあるほど画像再構成法がブラックボックス化し、『バーチャルな画像を無批判に使う診療は現実に対する洞察力を弱体化させる』という皮肉な現実に直面する可能性もあり、常に注意深い対応が必要となる。
 最近の脳卒中の画像診断の進歩に関しては、これまでにも優れた解説書や雑誌の特集などが刊行されているが、本書では、CT、MRI、SPECT/PET、超音波、DSAなどの画像診断法に関する基礎的知識をまとめた第㈵部と脳卒中の各病型に対する各modalityの臨床応用の実際をまとめた第㈼部からなる2部構成とした。脳卒中診療に携わる研修医および専門医の方々、放射線技師、臨床検査技師、専門看護師の方々が、脳卒中の画像診断に関して基礎的側面と臨床的側面の両面について学ぶことができるように配慮した。画像診断法に関する基礎的知識については、主として画像診断法の開発に携わっている専門医の先生に執筆をお願いし、各modalityの臨床応用については、主として脳卒中の診療に携わっている専門医の先生に執筆をご依頼した。
 執筆者の皆様には、本書の主旨をご理解のうえ、ポイントとなる事項をご記載頂き深く感謝申し上げます。 本書が、本邦における脳卒中の画像診断のスタンダードな解説書として、読者の皆様方の脳卒中診療に少しでもお役に立つことができれば、編集者としてこれ以上の喜びはありません。

 平成20年7月吉日
 中川原譲二
 佐々木真理

■ 主要目次

T.各種画像診断法の基礎知識

1 CT
 1.CTの原理
 2.単純CT、造影CT
 3.CTA(64列MDCTを中心に)
 4.A1d、CT灌流画像(CT perfusion)
 5.Xe-CT

2 MRI
 1.MRIの基礎知識
 2.Conventional MR imaging
 3.拡散強調画像
 4.A2d、MR灌流画像(MR perfusion)
 5.MRA、black blood MRI
 6.拡散テンソルtractography
 7.MRS

3 SPECT・PET
 1.SPECT・PETの原理
 2.定量画像解析法(ARG、DTARG、QSPECT)
 3.統計画像解析法
 4.定位定量的画像解析法、定位定性的画像解析

4 超音波
 1.超音波の原理
 2.頸動脈超音波検査―プラーク性状の評価
 3.経頭蓋超音波検査(TCD)―MESの臨床の意義
 4.経食道心臓エコー検査(TEE)
 5.超音波造影剤の有用性

5 DSA
 1.DSAの原理と実際の方法
 2.Balloon test occlusionの基本


U.各種画像診断法の臨床応用

1 脳梗塞
 1.分類
 2.血栓溶解療法と画像診断
 3.EC-ICバイパスと画像診断
 4.CEAと画像診断
 5.CASと画像診断
 6.開頭減圧術と画像診断
 7.出血性脳梗塞の画像診断
 8.3T-MRIによる急性期脳梗塞の画像診断

2 脳出血
 1.CT分類
 2.MR所見
 3.血腫除去術と画像診断(適応条件)

3 くも膜下出血(破裂脳動脈瘤)
 1.CT分類、脳動脈瘤の分類
 2.DSAか3D-CTAか
 3.クリッピング術と画像診断
 4.コイル塞栓術と画像診断
 5.巨大脳動脈瘤に対するBTOの評価と画像診断
 6.脳血管攣縮の画像診断
 7.続発性正常圧水頭症の画像診断

4 脳動脈解離
 1.頸部内頸動脈解離と画像診断
 2.椎骨動脈解離と画像診断

5 脳動静脈奇形
 1.分類
 2.外科的摘出術と画像診断(Spetzler-Martin分類)
 3.脳動静脈奇形に対するガンマナイフ治療

6 もやもや病
 1.DSAとMRAによる病期分類
 2.SPECTによる病期分類
 3.虚血型小児もやもや病と画像診断
 4.出血型成人もやもや病の画像診断

7 静脈洞血栓症
 1.分類
 2.上矢状静脈洞血栓症と画像診断

8 無症候性脳血管障害
 1.MRIによる無症候性脳梗塞と白質病変の鑑別
 2.T2*WIによる微小出血(microbleeds)
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