発達障害児のリハビリテーション
運動発達系障害と精神発達系障害

著 者
監￿￿￿修:伊藤 利之
￿￿￿(横浜市総合リハビリテーションセンター 顧問)
編集:
￿￿伊藤 利之(横浜市総合リハビリテーションセンター 顧問)
北村由紀子(横浜市地域療育センターあおば センター長)
小池 純子 (横浜市総合リハビリテーションセンター 副センター長/横浜市西部地域療育センター センター長)
半澤 直美 (横浜市戸塚地域療育センター センター長)
発行年
2008年5月
分 類
リハビリテーション医学
仕 様
B5判・330頁・132図・77表
定 価
(本体 6,000円+税)
ISBN
978-4-8159-1806-4
特 色
障害者自立支援法制定により障害種別を越えた療育体制が求められる今こそこの1冊!
 子どもの発達過程における運動(肢体)系と精神(知的)系の障害を一括して発達障害としてまとめ,過去20年間に培ってきた横浜市の療育技術を具体的な症例を示して実践に即してわかりやすく解説した.障害児にかかわる専門職の必携の書.

●序  文●

 本書の第一の特徴は、胎生・出生時を含む子どもの発達過程における障害を運動(肢体)系と精神(知的)系に分け、これらを一括して発達障害としてまとめたことである。第二の特徴は、横浜市における療育システムを基盤に行ってきた療育の実際を紹介したことであり、その内容について、各論では具体的な症例を示して詳述したことである。
 折しも、「障害者自立支援法」により障害種別を越えたサービス提供の在り方が明示され、現場と法制度の溝が若干埋められた。今後は肢体施設や知的施設などという名称にこだわらず、いずれの施設においても両者の合併児を違和感なく療育できる体制が求められよう。因みに横浜市では、1989 年に戸塚地域療育センターを開設して以来、肢体障害と知的障害を区別することなく、可能な限りその子の特性に合わせてクラスを編成することによって、同一施設内で対応してきた経緯がある。
 この間、少子高齢化、核家族化が急速に進むとともに、医療技術の進歩により障害児を取り巻く社会環境も大きく変化した。運動系では、典型的な「脳性麻痺児」は激減し、代わって重度・重複化が進むと同時に、医療機器の開発・改良により濃厚な医療・介護を要する、いわゆる「超重症児」が増えつつある。一方精神系では、単なる知的障害(知能低下)だけでなく、「自閉症」と診断される子どもが明らかに増えている。これにより保健所健診を起点とする早期発見・早期療育のルートは、運動系障害児から精神系障害児にシフトし、運動系障害児については医療機関との直接連携が求められるようになった。さらに最近では、アスペルガー症候群や高機能自閉症など、知的遅れのない発達障害児が増えており、療育の出口である学校との関係においても単なる引き継ぎにとどまらず、合同カンファレンスによる情報の共有と学校への技術移転を図る必要に迫られている。
 本書では、このような状況を背景に過去 20 年間培ってきた横浜の療育技術について紹介した。永井書店の好意により、執筆者は横浜リハビリテーション事業団の職員(過去〜現在の在籍者)に限ったため、内容の一貫性を保つことができた。しかしその反面、横浜の独自性が強過ぎたきらいがあるかも知れない。読者の皆様には、その点を十分に考慮してお読み頂ければ幸いである。
 本書が障害児にかかわる多くの方々の参考書になることを祈念するとともに、ご執筆頂いた先生方に心より深謝申し上げる。
 2008 年 5 月吉日
 伊藤 利之

■ 主要目次

I.発達障害の捉え方と療育の対象

1.発達障害の捉え方
  発達障害とは
  障害児施設
  障害像の表し方
  障害特性と療育プラン
2.療育の対象児
  障害と療育センターの役割
  疾患名と障害名の整理
  障害の気づかれる時期と代表的な療育の対象児
  療育センター利用児の実態

II.療育とリハビリテーション

1.療育とリハビリテーションの考え方
  療育概念の変遷と広がり
  リハビリテーションと療育概念の関係
  小児(特に先天性または乳幼児期からの障害)と
   成人リハビリテーションの対比
2.療育センターにおける療育の在り方
  療育の両輪
  療育における診断の意義
  診断と告知の時期
  子どもへの支援
  保護者への支援
  運動発達障害系療育と精神発達障害系療育の対比
  療育における医師のかかわり
3.バリアフリー
  バリアフリーとユニバーサルデザイン
  運動障害のバリア
  精神系発達障害のバリア
  心のバリアフリー
  医療におけるバリアフリー
  横浜市における障害児者の医療環境調査から

III.地域療育システム

1.早期発見・早期療育体制
  法に示された早期発見と療育関連施策
  横浜市における早期発見・早期療育体制
  地域療育センターの概要
  地域療育システムの変遷と課題
  早期発見
2.療育センターのシステム
  1.専門的・総合的機能
   専門性と総合性
   療育ルートにおける専門的・総合的機能
   総合リハビリテーションセンターとの連携
   学齢期、就学に向けて
  2.外来療育・通園療育・地域支援など
   相談の流れ
   代表的な障害群別の療育の流れ
   療育センターのシステムの根幹となる考え方
3.チームアプローチと組織運営
  サービスを支える調整機能
  チームアプローチ
  インフォームド・コンセント(インフォームド・コオペレーション)
  インフォームド・コンセントを支えるチームアプローチ
  摂食クリニックを軸としたチームアプローチ
  補装具クリニックを軸としたチームアプローチ
  人材育成のプログラムと研修の在り方
  組織運営

IV.運動発達系障害のリハビリテーション
  肢体不自由児の療育
 

〈概  論〉
  運動発達障害とは
  早期発見と運動発達障害
  運動発達障害の治療
  運動発達障害とリハビリテーション
  運動発達障害と学校教育
〈各  論〉
  1.脳性麻痺(重症心身障害児を含む)
   1.混合型四肢麻痺
   2.アテトーゼ型四肢麻痺
   3.痙直型両麻痺
  2.二分脊椎
   二分脊椎(脊髄髄膜瘤)とは
   二分脊椎の療育・リハビリテーション
   1.非典型例
   2.典型例
  3.精神運動発達遅滞
   精神運動発達遅滞とは
   精神運動発達遅滞児の療育
   事例と支援内容
   事例紹介
  4.超重症児
   超重症児とは
   重症心身障害児の療育におけるリスク・配慮点;
    医療的配慮の必要度が高い超重症児・準超重症児の療育に際して
   超重症児の療育
   在宅生活を送る超重症児に対する支援について;
    地域療育機関における現状と課題
  5.重複障害
   重複障害とは
   重複障害児の療育課題
   事例

V.精神発達系障害のリハビリテーション
  知的障害児の療育


〈概  論〉
  精神系の発達障害とは
  早期発見と精神系発達障害
  精神遅滞の治療
  精神系の発達障害とリハビリテーション
  発達障害と学校教育
〈各  論〉
  1.精神遅滞
   精神遅滞とは
   知能とは
   精神遅滞の診断
   精神遅滞の分類
   医学的検査と精神遅滞
   精神遅滞の症候
   精神遅滞をきたす代表的な症候群
   その他の精神遅滞をきたす代表的な疾患
   精神遅滞のリハビリテーション
  2.自閉症(および広汎性発達障害)とは
   疾患概念
   定義と分類(カテゴリー概念)
   疫学
   原因論;生物学的な基盤
   基本症状;行動の次元
   付随する症状
   基本障害―心理学的な次元―
   治療的介入
   事例 1:知的障害を伴う自閉症の早期療育例
   事例 2:高機能広汎性発達障害の早期介入例
  3.注意欠陥/多動性障害 
    Attention−Deficit/Hyperactivity Disorder(ADHD)
   基本障害
   基本症状
   疾患概念の変遷
   併存障害(合併症)
   診断
   身体所見および検査
   マネジメント
   事例 1
   事例 2
  4.学習障害 Learning Disorders
   疾患概念
   学校教育における学習障害 Learning Disabilities(LD)
   学習障害の用語をめぐる課題
   医療における学習障害 Learning Disorders
   読字障害 Reading Disorder
   書字表出障害 Disorders of Writing Expression
   算数障害 Mathematic Disorder
   事例 学校で発見した学習障害 Learning Disorders

VI.今後の課題と展望

  1.障害児の現況と展望
   障害児の現況
   法制度改革の動向
   今後の展望
  2.知的障害と発達障害に関する議論と展望
   知的障害と発達障害
   発達障害児への地域ケア体制
   早期発見をめぐる議論
   早期療育をめぐる議論
   療育から発達リハビリテーションへ
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