よくわかる 子どもの肥満
- 著 者
- 編著: 岡田 知雄
- (日本大学医学部小児科学 准教授)
- 発行年
- 2008年2月
- 分 類
- 小児科学一般
- 仕 様
- B5判・192頁・83図・64表
- 定 価
- (本体 5,000円+税)
- ISBN
- 978-4-8159-1802-6
- 特 色
- 小児肥満の増加は,わが国のみならず今や世界規模での問題であり,近年では小児科領域でもメタボリックシンドロームの診断基準が提案されるなど,小児肥満は小児期・思春期のみならず成人期につながる,ヒトの一生にかかわってゆく重要な病態であることが認識されている.脂肪細胞の科学(アディポサイエンス)も飛躍的に発展を遂げ,肥満の病態生理も徐々に解明されつつある.
本書は,一般臨床医のみならず,看護,栄養,保健,教育関係者まで子どもをとりまくあらゆる方々が,小児肥満の最新知見に触れ,肥満の判定法,診療,日常の食事,運動などへの対応を深く理解し役立てるように,わかりやすさを重視しながら解説された小児肥満のテキストである.
日々進歩する多くの最新情報,広い分野での知識をまとめたぜひ手元において頂きたい一冊である.
●序 文●
21世紀は,肥満との戦いの世紀であるといわれています。小児肥満の増加は,わが国のみならず,今や世界規模での問題です。一方,脂肪細胞の科学(アディポサイエンス)が飛躍的に発展を遂げ,肥満の病態生理が徐々に解明されつつあり,これらの基礎的研究が,ゆくゆくは臨床応用されてゆくものと期待されます。
近年,小児科領域でもメタボリックシンドロームの診断基準が提案され,小児期・思春期のみならず成人期につながる,ヒトの一生にかかわってゆく重要な病態であることが認識されました。
しかし,肥満に関連する多くの分野について,最新の知識をもって対応するためには,日常診療に携わる臨床医を含めて一般の人々にとっては十分に理解することは難しいのではないでしょうか。こうした事情の中で,本書は,小児の肥満を中心に,肥満に関する最新の知見を紹介しながら,小児肥満の第一線でご活躍の方々に,わかりやすさを重視して小児肥満の判定法や診療,日常の食事,運動などの対応を解説して頂きました。
本書が,医師のみでなく,看護関係者,栄養関係者,保健関係者,教育関係者など幅広い読者の皆様に少しでもお役に立てば幸いです。
平成20年2月吉日
岡田知雄
■ 主要目次
I.子どもの肥満の正しい理解のために
1.子どもの肥満の評価
[1.子どもの肥満の判定と評価]
[2.体脂肪量と脂肪分布について]
2.子どもの肥満がなぜ問題なのか
1.肥満と生活習慣病
2.小児肥満の増加
3.成人肥満の起源としての小児肥満
4.小児の肥満症
5.小児期におけるメタボリックシンドローム
3.子どもの肥満と年齢区分
[1.乳児肥満,幼児肥満,学童肥満,思春期肥満]
[2.子どもの肥満の予防と治療,予後]
4.子どもの肥満症,メタボリックシンドロームとは
1.小児のメタボリックシンドローム:小児科学において示される心血管病の先行としての概念
2.子どもの内臓脂肪は成人のそれと同じと考えてよいか?
3.小児肥満と高脂血症,脂質異常について
4.胎児プログラミングやadiposityreboundの概念
5.子どもの肥満はなぜ生じるのか
[1.肥満の遺伝素因と遺伝性肥満]
[2.摂食の調節・脂肪細胞の機能]
[3.生活習慣,食事,運動など]
[4.肥満小児の栄養評価]
II.子どもの肥満の治療
1.肥満治療のアプローチとフォローの方法について
1.小児肥満の診断
2.小児肥満の成因とそのアプローチについて
3.小児肥満症,小児メタボリックシンドロームの概
4.診断
5.治療の原則
2.食事療法の進め方
1.栄養所要量のめやす
2.子どもの肥満に対する食事指導の実際
3.運動療法の進め方
1.子どもの運動療法の基本は特別扱いし過ぎない
2.目的は子どもの健全育成ということ
4.行動療法の実際
1.治療対象としての小児肥満
2.小児肥満における行動療法の考え方と治療の最近の動向
3.学童期の小児肥満における行動修正治療の実際
4.学童肥満の治療成績が示すもの
5.その他の治療と今後の展望
1.肥満に対する薬物療法
2.肥満に対する外科的治療
3.今後の展望
III.子どもの肥満の合併症
1.糖尿病と肥満
1.糖尿病の分類
2.2型糖尿病の頻度
3.2型糖尿病の病態
4.糖尿病の臨床症状
5.2型糖尿病の治療
2.高脂血症と肥満
1.成長に伴う血清脂質値の変化
2.小児肥満の血清脂質への影響
3.内臓脂肪蓄積と血清脂質異常
3.高尿酸血症・脂肪肝と肥満
1.高尿酸血症
2.脂肪肝
4.高血圧と肥満
1.血圧測定
2.疫学
3.乳幼児期の成長と高血圧
4.病態生理
5.肥満高血圧の合併症
6.管理
5.肥満における血管障害とその評価
1.動脈硬化とは
2.動脈硬化初期病変の非侵襲的検査法
6.その他の身体的異常
1.黒色表皮腫(acanthosisnigricans)
2.皮膚線条や股擦れなどの皮膚所見
3.大腿骨頭すべり症や関節障害
4.月経異常
7.肥満に伴う精神・心理的異常
1.幼児期から学童期の肥満
2.思春期の肥満
3.小児肥満にみられる心理・精神的問題について
IV.子どもの肥満の予防
1.子どもの肥満に関連する要因について
2.肥満に関連する要因の回避・改善について
1.遺伝的要因について
2.胎児期,新生児期の因子について
3.身体活動について
4.食生活について
5.健康教育
6.精神・心理的要因
3.早期発見
V.トピックス
1.胎児プログラミング仮説
1.胎児プログラミング仮説
2.DOHaD
3.早産低出生体重児と成人期慢性疾患
2.Adiposityrebound, foodintakeandearlygrowth
1.adiposityreboundとは
2.Adiposityrebound,メタボリックシンドローム,2型糖尿病
3.Adiposityreboundに影響する因子
4.早期栄養とadiposityrebound
5.早産児に対する栄養,成長のcatch-up,インスリン抵抗性
3.幼少期からの食行動の発達について
1.出生前および乳幼児期の成長と肥満
2.小児の食行動の変化
3.背景となるライフスタイルの変化
4.肥満と安静時エネルギー消費
1.REEの測定
2.REEに影響する因子
3.REEの利用方法
5.食事摂取とグレリンのメカニズム
1.グレリンの構造と分泌
2.グレリンの作用
3.ヒトにおけるグレリンの分泌調節
4.小児肥満でのグレリンの検討
6.ビスファチン
1.脂肪細胞とアディポサイトカイン
2.ビスファチンとは
3.検討結果
4.血中ビスファチン値の意義
7.子どもの肥満の成長特性
1.症例:A(男児)
2.症例:B(男児)
3.症例:C(女児)
4.症例:D(男児)
5.症例:E(男児)
6.症例:F(男児)
8.食育と食事指導
1.食育について
2.肥満症の頻度
3.食事指導
4.乳児肥満の食事
5.幼児,学童期肥満の食事
6.思春期肥満の食事