最新 泌尿器科診療指針
- 著 者
- 編集: 村井 勝
- (国際親善総合病院院長・慶應義塾大学名誉教授)
- 塚本 恭司
- (札幌医科大学泌尿器科 教授)
- 小川 修
- (京都大学大学院医学研究科泌尿器科学 教授)
- 発行年
- 2008年2月
- 分 類
- 泌尿器科学
- 仕 様
- B5判・468頁・387図・166表・写真365
- 定 価
- (本体 13,000円+税)
- ISBN
- 978-4-8159-1801-9
- 特 色
- 第一線の泌尿器科医から泌尿器科専門医を目指す医師,また一般の若い臨床医や研修医まで幅広い読者を対象に,泌尿器を対象とした実際臨床の現場で役立つ最新・実践的な泌尿器診療指針書.
医学・医療の現場では進歩と多様化はめざましく,医師は患者一人一人の個別性を考慮しながら,吟味された最新のエビデンスに基づいて専門的技能を適切に駆使できるように治療方針を決定し,実践していくことが常に求められている.
本書では,泌尿器科救急疾患,基本的処置法,診断確定への問診および診察法を「総論」とし,排尿障害,感染症,尿路結石症,腫瘍,腎血管病変,腎不全,副腎・後腹膜疾患,不妊症・性機能障害,化学療法・放射線療法,小児泌尿器科疾患などの「各論」,さらに画像検査も含めた泌尿器科検査法までを含め,全国の第一線で活躍する各分野のエキスパートが解説し,日々の診療指針決定に役立つようできる限りの情報を網羅した.
日常の外来やベッドサイドなどで,常にそばに置いて活用していただきたい泌尿器科診療指針の集大成である.
●序 文●
近年医学・医療の現場においてその進歩と多様化がますます顕著になってまいりました。ヒトゲノムの全容が明らかとなるとともに、世はプロテオームの時代に入っております。これらの生物学いわゆる分子生物学の進歩により疾病の病態生理の解明が一段と進み診断や治療に大きな変革をもたらしつつあります。また医学に応用される物理学をはじめとする工学系の進歩も日進月歩です。バイオテクノロジーを用いた診断、CT、MRI、PETなどの画像診断、光学やレーザー、マイクロウエーブ、ラジオ波など種々エネルギーの治療への応用なども顕著です。さらにビデオ、CD、DVDなどの出現により手術操作トレーニング法も格段に進歩を遂げております。臨床の現場ではこのように進歩した多くの診断・治療を的確に選択し、実践していくことが常に求められます。
一方、1990年代の後半から、限られた医療資源を有効に用いたより質の高い医療を実践するためにEBM(evidence-based medicine)が提唱されました。EBMはその推進者Sackettによると“the
conscientious, explicit and judicious use of current best evidence in making
decisions about the care of individual patients”と定義され、臨床的な判断に際し関係した文献をみつけ出し、その妥当性を評価し、眼前の患者の状態に適応していいかどうかを検討するという一連の行動指針を指します。先に述べたように個々の検査方法や治療手段が進歩し多様化する中で逆に、これらを結びつける診断や治療の論理が曖昧で経験主義の枠内にとどまってきたことの弊害も目立ち、その科学化を目指す動きとしてEBMが登場してきたともいえます。診断や治療の科学化には臨床疫学的な研究の推進が不可欠ですが、実際の臨床現場では根拠(evidence)が揃っていないことも多いのが現状です。EBMによる臨床意思決定の在り方は、それぞれの患者の病態と環境に加えて患者の価値観と行動という個別性を考慮しながら吟味された最新のエビデンスに基づいて、臨床医の専門的技能を適切に駆使できるように治療方針を決定するとされています。いろいろな疾患に対しEBMに基づいた診療ガイドラインが提唱されておりますが、日本泌尿器科学会でも各疾患に対する診療ガイドラインを整備しつつあります。但しこれら診療ガイドラインは臨床意思決定を支援する際のツールであり、決定に際し拘束力をもつものではありません。
このような状況の中で約1年半前に、永井書店より塚本泰司先生、小川修先生そして小生に泌尿器科臨床の現場で役立つ実践的な教科書の編纂計画が示されました。3人の編集者が集まり検討を加えた結果、上記のことを踏まえて、第一線の泌尿器科医をはじめ若い臨床医、研修医にとって日常の外来やベッドサイドなどで実際に役立つ最新の診療指針の集大成を目指したいと考えました。そこで泌尿器科救急疾患、基本的処置法、診断確定への問診および診察法を総論とし、排尿障害、感染症、尿路結石症、腫瘍、腎血管病変、腎不全、副腎・後腹膜疾患、不妊症・性機能障害、化学療法・放射線療法、小児泌尿器科疾患などの各論、さらに画像検査も含めた泌尿器科検査法の項目も加えることとしました。項目数が増えましたが、全国の第一線で活躍されているそれぞれのエキスパートに執筆を依頼させて頂きました。
企画から1年以上過ぎこの度やっと刊行することができ、ご執筆頂きました先生に深く感謝申し上げます。泌尿器科の日常臨床の場で、本書の企画意図が理解されかつ評価されて多くの泌尿器科医、さらには研修医に役立つことを心から願っております。
2008年2月吉日
編者を代表して 村井 勝
■ 主要目次
第1部 総 論
1 救急を要する疾患
1.急性腎盂腎炎(慢性複雑性尿路感染症の急性増悪も含む)
2.急性腎不全による無尿
3.尿路結石による疼痛
4.腎梗塞
5.前立腺肥大症による尿閉
6.急性前立腺炎
7.急性陰嚢症
8.尿路性器損傷
9.尿路異物
10.持続勃起症
11.嵌頓包茎
2 泌尿器科的基本的処置法
1.経尿道的カテーテル留置
2.尿道拡張(ブジー法)
3.経皮的膀胱瘻造設術
4.経皮的腎瘻造設術
5.尿管カテーテル留置
3 症候と問診
1.尿と排尿の異常
2.疼痛
3.腫瘤
4.性機能・精液の異常
5.発熱、全身症状
6.その他の症状
4 診察法
第2部 各 論
1 排尿機能障害
1.過活動膀胱・尿失禁
2.神経因性膀胱
2 感染症
1.尿路感染症
2.性器感染症
3 尿路結石症
1.尿路結石症(総論)
2.上部尿路結石
3.下部尿路結石
4 腫瘍
1.腎腫瘍
2.腎盂・尿管癌
3.前立腺腫瘍
4.膀胱癌
5.精巣腫瘍(胚細胞腫瘍を含む)―40〜50歳台の鑑別診断として
6.尿膜管腫瘍
7.尿道腫瘍
8.陰茎腫瘍
5 腎血管病変
1.腎血管性高血圧
2.腎動脈瘤
3.腎動静脈瘻
6 腎不全
1.急性腎不全
2.慢性腎不全
3.人工透析(透析療法)
4.腎移植
7 副腎・後腹膜の疾患
1.副腎疾患
2.後腹膜の疾患
3.副腎腫瘍
8 不妊症・性機能障害
1.男性不妊症(精索静脈瘤を含む)
2.性機能障害
3.男性更年期障害
9 化学療法・放射線療法
1.癌化学療法
2.放射線療法(小線源療法、粒子線などを含む)
10 泌尿器科医に必要な小児の腎・泌尿器疾患の知識
1.上部尿路通過障害および下部尿路通過障害
2.膀胱尿管逆流症と逆流性腎症
3.Wilms腫瘍
4.神経芽細胞腫
5.停留精巣
6.陰嚢内容の異常(陰嚢水腫、特発性陰嚢浮腫、精巣腫瘍、傍精巣横紋筋肉腫)
7.陰茎の異常(亀頭包皮炎、包茎、埋没陰茎)
8.夜尿症
9.性分化の異常
10.尿路性器系に異常をきたす先天性疾患
11.遺伝性疾患による尿路結石の成因と治療
第3部 検 査
1 泌尿器科医が取得すべき検査とそのコツ
1.尿検査
2.腎機能検査
3.超音波検査
4.X線検査
5.RI検査
6.尿路内視鏡検査
7.尿流動態検査
8.遺伝学的検査
9.泌尿器科的生検法
10.画像検査の泌尿器科領域への新しい応用