リウマチ病セミナーXVIII


編 集
監修:七川 歡次(滋賀医科大学名誉教授)
発行年
2007年12月
分 類
膠原病・リウマチ
仕 様
B5判・292頁・156図・87表
定 価
定価 8,610円(本体 8,200円+税5%)
ISBN
978-4-8159-1797-5
特 色
 本セミナーは,1990年以来毎年発行の実績を誇り,常に本領域における最新データを提供してきた.
 シリーズ第18冊目となる本書は,これまでの蓄積の中より取捨選択された知識の神髄と, 日進月歩で飛躍的な進歩をみせる最前線の現状を織り交ぜ,  リウマチ病の新世紀を見据える好著となっている.

■ 序文
 今回は従来にまして魅力ある題材が多いように見えるのは,リウマチ学の着実な前進を裏づけているように思えて心強い.
 まず炎症リウマチとしては,最近発表の多いRAと心血管イベントについて,単なる合併症というより,素因や慢性炎症との関わり,その理由や対策について,志水正敏先生に解説して戴いたが,先生の睡眠障害からの視点が加わって,流石に内容が一段と豊富になった.ついで,“自己免疫疾患とピロリ菌感染”,“結合組織病のcalcinosis”はともに優れた論文で,大いに理解を深めて戴けるものと思う.村田先生の“関節リウマチの寛解”,前田先生の“画像診断とスコアリング”,井上先生の“Spondyloarthropathyの早期診断”は,炎症リウマチの二大疾患の診断の現状を余すところなく伝えてくれていて,現場では重宝なものと思う.
 わが国の痛風の実状については,数少ない疫学研究の成績を川崎先生が披露してくれていて,これは本セミナーならではの論文と思う.
 骨や靱帯組織の生病理に関するテーマが少なからず出るようになったのは喜ばしい.“神経系による骨形成の調節について”と題して,今井先生を煩わし,アディポサイトカインの一つであるレプチンについて旨く書いてもらった.著者も言う通り今後期待される分野である.破骨細胞については佐伯先生に,Marfan症候群については志水信彦先生にお願いした.後者でのfibrillinの役割,その異常,欠落,これからくる弾性線維形成不全,心血管イベントの惹起は,強直性脊椎炎の発症要因としての関与も想像されている.最もリウマチ医を悩ましている“ステロイド性骨粗鬆症”については上好昭孝先生に解説して戴いたので日常診療の参考にされたい.RAでのステロイド性骨粗鬆症は短絡的にステロイドだけを標的とするわけにもいかず,なお不明の点も多いので,全体像をよく判断したうえで薬物治療を考えるという著者の意見に賛成する.
 大腿骨頭壊死症の治療薬としてのビスフォスフォネートの効果について西井孝先生のオリジナルの成績が注目される.さらに軟骨組織に対する薬剤が余りにも強く喧伝されているが,本城先生に“遅効性抗関節症薬”としてレビューして戴いているので参考にされたい.また“血管新生阻害
物質”は現在多くのものが出ており,血管形成誘導因子とともに精しく松浦教授に解説して戴いた.啓発されるところが大きく,深謝したい.
 その他痛み治療の最前線として,CRPS,坐骨神経痛の炎症因子は,痛みの患者を扱う医師にとって必須の知識で,最新の見解を述べて戴いた.三木先生,西林教授に御礼申し上げる.
 “NKT細胞とリウマチ病”については,塩沢教授に最近の進歩を分かりやすく述べて戴き,著者の最近の知見を交えた貴重な論文であるので是非お読み戴ければと思う.
 リウマチ病の薬剤治療に関しては,tailor madeの治療を目指す薬理遺伝学の有用性を東教授に,メトトレキサートとrituximabをそれぞれ脇谷,谷口両先生に最前線のところを解説してもらっているので参照されたい.
 これからは虚弱老人に対する対応が医療のすべての現場で求められるが,北先生の“高齢者のバランス障害と運動療法”は,日常の診療に役立つところが大きく,リウマチ医に欠かせない知識である.
 手術については,吉田教授に,最近進歩の著しい脊椎のminimal intervention surgeryを,大西先生には,今や30年以上の耐容性が求められるTHAの成績について,両大家を煩わし,レベルの高い論文を頂戴できて喜んでいる.
 その他リウマチ診療でよく遭遇する肘部管症候群を阿部先生に,RA患者の骨折を橋本先生に,高齢者大腿頸部骨折を福田先生に,フットボール選手の膝について吉矢教授に,手根伸筋腱炎について小宮先生に,up dateのところを書いて戴いた.厚く御礼申し上げる.
 Fibrosisはリウマチ学の中のきわめて興味深い,重要な研究分野であるが,進歩がおそいようである.八田先生に後腹膜線維腫について多くの症例を呈示して戴き参考になった.
 最後に“RA患者の介護支援”の問題は患者のoutcomeを知り,経験するほど各方面からの組織的な対策が求められることを痛感させられる.小松原先生に今回改めてこの課題をとりあげて戴いた.本セミナーのシンポジウムのテーマもpsychorheumatologyであったが,この領域での大きな前進がrheumatologyに強く求められている.

2007年12月
七 川 歡 次

■ 主要目次

炎症リウマチ
 RAと心血管イベント ……………………………………… 志水 正敏
 自己免疫疾患とピロリ菌感染 ……………………………… 大島 至郎
 結合組織病のcalcinosis ……………………………………… 塩澤 和子
 関節リウマチの寛解 ………………………………………… 村田 紀和
 Spondyloarthropathyの早期診断 …………………………… 井上 康二
 痛風の疫学 …………………………………………………… 川崎  拓

骨関節,脊椎,神経
 神経系による骨形成の調節について ……………………… 今井 晋二
 Marfan症候群 ……………………………………………… 志水 信彦
 CRPS(複合性局所疼痛症候群)の
  診断基準(日本版)作成 ………………………………… 三木 健司
 肘部管症候群 ………………………………………………… 阿部 宗昭
 坐骨神経痛の炎症因子 ……………………… 西林 保朗/吉本 沙織
 後腹膜線維症について ……………………………………… 八田 和大
 フットボール選手の膝 ……………………………………… 吉矢 晋一
 橈側手根伸筋腱炎 …………………………………………… 小宮 靖弘

燐・カルシウム代謝
 ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療 ……………………… 上好 昭孝
 大腿骨頭壊死症とビスフォスフォネート ………………… 西井  孝

検 査 法
 画像診断とスコアリング …………………………………… 前田  晃

生物学的反応
 膠原病の発症病因におけるCD8T細胞および
  NKT細胞の役割 ………………………………………… 塩沢 俊一
 破骨細胞再訪:テトラスパニン/CD9 ………………… 佐伯 行彦
 血管新生阻害物質 …………………………… 松浦 成昭/上田 香織
                      斉藤 真実/横山 雄紀

治療と副作用
 リウマチ科診療に用いられる薬剤のゲノム薬理学 ……… 東  純一
 遅効性抗関節症薬 …………………………………………… 本城  昌
 メトトレキサートの使用法 … 脇谷 滋之/井川  宣/七川 歡次
 Rituximab ……………………………………………………… 谷口 敦夫
 RA患者にみられる骨折の特徴と治療 …… 橋本  淳/南平 昭豪
 高齢者のバランス障害と運動療法 ………… 北   潔/新村 秀幸
 関節リウマチ患者の生活環境と介護支援 ………………… 小松原良雄

手   術
 THAの非成功例の原因・頻度およびその対策
  ………………………………  大西 啓靖/金  石哲/大西 宏之
                岩本 幹生/徳川 祐介/増田 真吾
 脊椎のminimal intervention surgery ………………… 吉田 宗人
 高齢者大腿骨頸部骨折手術のoutcome …………………… 福田 眞輔

索引(XVIII)/総索引(I〜XVIII)/人名索引(I〜XVIII)/
Drug Information
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