見て診て学ぶ 肺癌の画像診断
- 編 集
- 本田 憲業(埼玉医科大学総合医療センター 教授)
- 発行年
- 2007年7月
- 分 類
- 癌・腫瘍学一般 画像医学・超音波医学
- 仕 様
- B5判・226頁
- 定 価
- 定価 7,980円(本体 7,600円+税5%)
- ISBN
- 978-4-8159-1789-0
- 特 色
- 研修医,病棟医,実地医家を主な対象に,肺癌画像診断をとりまく幅広い内容から読者にとって真に有益な情報にテーマを絞り,本邦における肺癌画像診断の最新の知見をわかりやすく解説した.
すなわち,臨床の第一線で活躍する専門家により,600点を超える画像データを駆使しながら,今後癌診療において重要な検査法となるF18 FDG
PETおよびPET/CT複合機検査に重点をおいて解説.また,画像診断を理解するうえで必要となる「マクロ病理学」の知識や,「正常画像解剖」について解説.
さらに<がん対策基本法>の成立によって, 今後癌治療で重要度が高まってゆく「放射線治療」についてのトピック,同法でも重要課題である癌の予防と早期発見に必要不可欠な「CT肺癌検診」の現状と問題点を明らかにしている.肺癌予防の面で効果が実証された「禁煙指導」を取り上げ,肺癌診療に携わるすべての医師に禁煙指導の重要性を説く.
肺癌医療への核医学の貢献を鮮明にする著者渾身の一書.
序 文
本書は、研修医、病棟医、実地医家を主要な読者と想定してかかれています。肺癌の画像診断をテーマとして本書をまとめるに当たり考えたことは、第一に、画像診断の幅広い内容を含むこと、第二に、網羅的に「あれもある、これもある。」では読者に有益な情報とはならないので、テーマを絞ること、第三に、F18
FDG PETおよびPET/CT複合機検査のような、今後癌診療において重要な検査となりうる、あるいは、なるべき検査に重点を置くことでした。また、画像診断はマクロ病理学の影絵でありますので病理の解説は必須と思い、一章を割きました。画像診断は、形態の変化に基づいて診断するのが基本でありますので、正常画像解剖についても記述していただきました。
本書に特徴を出すことを意図して、画像診断以外の情報も一定程度、掲載することにいたしました。放射線治療は進歩が著しい分野でありますうえ、従来わが国では十分な利用が行われなかった領域であります。がん対策基本法の成立という新しい時点に立ったいま、わが国がん対策の一層の深化に伴い放射線治療の知識は必須であろうと考えて、放射線治療のトピックの掲載をお願いしました。癌の予防と、検診による早期発見を通じた治療成績の改善とは、同基本法のもとでも、重要課題でありますので、CT肺癌検診の項目を追加しました。本書の記述はCT検診の現状と問題点を明らかにしていると思います。CT肺癌検診は米国で無作為比較対象試験が進行中であり、その結果発表は2009年が予想されると聞き及んでいます。禁煙指導は画像診断を扱う書物では珍しいと思いますが、肺癌予防の面では、すでに効果の実証された方法と見てよいと思います。肺癌を疑われ、あるいは、心配して画像診断をうけられ、肺癌がないとわかった患者の皆様に、もし喫煙者であれば、禁煙を指導する、または、禁煙指導への道筋をつけることは画像診断に携わる医師にも重要とおもいます。
私は核医学医でありますので、核医学に関連する記述が多くなりましたが、核医学が肺癌医療に貢献できることを示したと自賛しております。外科手術については、本書のタイトル「見て診て学ぶ肺癌の画像診断」とは距離があると重い、割愛いたしました。
筆者の先生方は、学会等で講演をお聞きしたり、論文や学会発表にてその実力に私が敬服申し上げている先生方をお願いしました。日ごろお話しをしている先生も、まれにしかお会いできない先生も、著者の先生方にはいらっしゃいます。先生方は非常に多忙ななか、快く執筆をお引き受けいただき、感謝申し上げます。わが国の最良の先生方にご執筆いただいたと、自負いたしております。どうぞ、本書をお楽しみください。
■ 主要目次
1・肺癌画像診断のバックボーンとしての病理像
T.総論
U.画像診断のための肺癌の病理像―各論
2・画像診断に必要な呼吸器の解剖
T.胸部X線解剖:正常構造のチェックポイント
U.CT解剖:肺門を中心に
3・胸部X線写真による異常の拾い上げ
T.撮影のポイント
U.見落としを防ぐ読影法と読影のコツ
V.早期肺癌の画像
W.異常読影のランキング
X.側面像の異常拾い上げのポイント
4・肺癌のCT診断@
1.孤立性肺結節の診断―典型および非典型例
T.診断の進め方の基本
U.高分解能CTによる肺結節の質的な診断
V.高分解能CTでの振り分けと経過観察
2.肺門部癌の診断
T.縦隔浸潤の評価方法と診断精度
U.進展範囲の診断
V.発生部位による特徴
W.肺門部肺癌に類似する良性疾患
5・肺癌のCT診断A
1.肺癌N因子のCT診断
T.リンパ節転移の診断基準と診断精度
U.リンパ節による浸潤と二次変化
V.リンパ節転移と鑑別を要する病態
2.肺癌P因子のCT診断
T.肺癌P因子の術前診断の意義
U.胸膜・胸壁の正常解剖
V.P因子のCT診断
W.MRIによる胸壁浸潤
X.その他の画像撮像法によるP因子診断
6・FDG-PET―診断の原理、異常集積の判定法
T.診断の原理
U.異常集積の判定法
V.肺腺癌のFDG集積度とHRCT所見との関係
W.まとめ
7・FDG-PET/CTの読影ピットフォール
T.技術的要因に起因するピットフォール
U.読影に起因するピットフォール
8・FDG-PET/CTによる治療前の病期診断
T.TNM分類の病期診断の概略
U.T因子の診断
V.N因子の診断
W.M因子の診断
X.肺癌の組織型別診断精度
9・FDG-PET/CTによる治療後の効果判定・再発診断
T.治療効果判定
U.再発診断
V.診断上の注意
10・FDG-PET/CT、PETの放射線治療計画への寄与
T.腫瘍の輪郭抽出について
U.放射線治療計画の再現性について
V.病期診断について
W.放射線治療計画における問題点と今後の展望
11・肺癌の放射線治療up to date
T.肺癌に対する放射線治療について
U.化学放射線療法
V.治療機器・治療法の進歩
W.最新画像を用いた治療計画
X.非小細胞肺癌
Y.小細胞肺癌
Z.放射線治療による合併症
[.姑息・対症目的での放射線治療
\.転移性病変に対する放射線治療
12・肺癌のヘリカルCT検診―診断法、有効性のエビデンス
T.肺癌の動向
U.肺がん検診の動向
V.低線量CTによる肺がん検診
W.肺がん検診の有効性に関するエビデンス―CT検診の有用性検証のための無作為化比較試験の必要性
X.低線量CTによる肺がん検診の方法
13・MRI―現状での利用価値と利用方法
T.肺結節の質的診断および肺腺癌の分化度の推定
U.TNM因子診断
V.肺機能診断
14・画像診断に有益な肺機能の知識
T.肺のメカニクス
U.肺内の空気
V.換気と血流の相関
W.換気と血流の肺内分布
X.呼吸刺激
15・呼吸器核医学検査による肺癌術後肺機能予測
T.息止め肺血流SPECT撮像法
U.通常SPECTと比較した息止め肺血流SPECTの利点
V.CTと比較した息止め肺血流SPECTの利点
W.息止め肺血流SPECT-CT融合像を使用した肺癌術後肺機能予測
X.考察
16 禁煙指導
T.「軽いタバコ」への要望
U.「軽いタバコ」のトリック
V.喫煙関連疾患
W.禁煙指導の実際