厚生労働省カリキュラムに則った
研修医のための
詳説 卒後臨床研修ガイドブック
- 編 集
- 福井 次矢(聖路加国際病院 院長)
- 発行年
- 2007年5月
- 分 類
- 臨床医学一般・医学教育
- 仕 様
- B5判・604頁
- 定 価
- 定価 8,400円(本体 8,000円+税5%)
- ISBN
- 978-4-8159-1788-3
- 特 色
- 新医師臨床研修制度の根幹をなす臨床能力の一覧と研修カリキュラムの作成に深くかかわってきた編者が,研修医カリキュラムの2年間で獲得すべき基本的臨床能力(到達目標)を示し,その道しるべとなるよう懇切に解説するガイドブック.
本書は,厚生労働省の研修カリキュラムの項目だてに準拠して,大きく「卒後臨床研修における行動目標」と「卒後臨床研修における経験目標」に分け,医療人として何が求められているのか(行動目標),何を経験し,どのレベルまで学べばよいのか(経験目標)を具体的に丁寧に解説し,研修医自身が自分の到達目標が確認できるよう構成されている.幅広い診療科のローテイションを課された研修医にとって非常に利用しやすいものとなっている.
新研修制度ではすべての研修医が幅広い臨床能力を身につけることを求めれられている.卒後臨床研修にこれから望もうとするあるいは研修中の研修医にとって,また指導医にとっても本書は必携のガイドブックである.
序 文
今春をもって、平成16年度から義務化された新医師臨床研修制度下で研修を終えた医師も2学年を数える。内科、外科、救急/麻酔、小児科、産婦人科、精神科、地域保健・医療のローテイションを全研修医に課し、研修病院の選択をマッチングにより決定するという36年ぶりの大改革では、当初より、予測できない事柄も起こるであろうし、なんらかの混乱は覚悟するところであった。実際、マクロ的には、産婦人科や小児科をはじめとする多くの診療科の医師が地域の中小病院から大学病院に引き上げたり、多忙で、リスクの高い病院診療科から去る中堅医師が目立ってきたりしたため、この改革が地域医療の崩壊を招いたとの批判を浴びることとなった。ミクロ的には、2年間の研修を終えた医師が専門研修を始めた時点で、各専門領域の立場からは、かつての卒後3年次の医師に比べて、臨床能力が劣っているのではないかとの指摘を受けたりもしているところである。しかし、医師の地域・専門診療科の分布不均衡は、新臨床研修制度のみがその原因といえないことは明らかであり、われわれが行った調査研究では、旧研修制度下の研修医に比べて、新研修制度下の研修医は症候や疾患の経験症例数が押しなべて増え、その結果、臨床能力が著しく向上している可能性が高いことも明らかとなった。いずれにしても、新たな改革に伴う移行期の混乱が十分収まった時点で、新研修制度の功罪は客観的に評価されることになろう。
私自身、新しい制度のさまざまな準備段階に深くかかわってきた。その1つが、研修医が2年間に獲得すべき臨床能力—到達目標—の一覧と研修プログラム(研修カリキュラム)の作成である。正式に採用されている研修カリキュラムは、平成15年6月12日付で厚生労働省医政局から発令(医政発第06123004号)されているものであるが、その内容は、国立大学医学部附属病院長会議常置委員会教育研修問題小委員会卒後臨床研修必修化に関する検討部会(部会長:福井次矢)が平成13年12月に報告した国立大学附属病院卒後臨床研修共通カリキュラムをほぼそのまま踏襲し、ごく一部修正を加えたものである。
新研修制度の根幹を成す研修カリキュラムの作成に携わった者としての責任を果たすため、私は、研修医のための懇切丁寧なガイドブックを出版したいものだと密かに思っていたところである。実際、永井書店からそのようなお話があって、ここぞとばかりにお引き受けしたものの、京都大学の教授職を定年まで10年以上を残して辞し、聖路加国際病院に移ったこともあり、執筆を引き受けて頂いた先生の交代や私の多忙と怠慢のせいで、取りかかってから大分時間が経過してしまった。執筆されたすべての先生方と永井書店の皆様に陳謝する次第である。できあがった本書は、私が当初夢見たガイドブックをほぼ実現したものとなった。構成は研修カリキュラムの項目立てを踏襲し、どのレベルまで学べばよいのかを明示してあり、研修医の皆さんにとっては、利用しやすいものとなっていると思う。
今後とも、新研修制度の基本理念である幅広い臨床能力をすべての研修医が身につけてゆくことが求められる以上、研修カリキュラムの到達目標の全体が、従来の診療科の枠を超えて体系化される必要があろう。わが国における21世紀の新しい世代の医師が具現すべき基本的臨床能力を体系化してゆくうえで、本書がなんらかの礎石になることを願うものである。
■ 主要目次
1 必修化された卒後臨床研修制度の目的とその意義
1)卒後臨床研修制度の変遷
2)必修化の目的と背景因子
3)今後の医療と臨床研修の必修化
4)臨床研修の到達目標
2 卒後臨床研修における行動目標 医療人として必要な基本姿勢・態度
1.患者-医師関係
2.チーム医療
3.問題対応能力
4.安全管理と院内感染対策
5.症例提示
6.医療の社会性
3 卒後臨床研修における経験目標
A●経験すべき診察法・検査・手技
1.医療面接
2.基本的な身体診察法
3.基本的な臨床検査
4.基本的手技
5.基本的治療法
6.医療記録
7.診療計画
B●経験すべき症状・病態・疾患
1.頻度の高い症状
2.緊急を要する症状・病態
3.経験が求められる疾患・病態
C●特定の医療現場の経験
1.救急医療
2.予防医学
3.地域保健・医療
4.周産・小児・成育医療
5.精神保健・医療
6.緩和・終末期医療