よくわかる大腸癌のすべて
- 編 集
- 小西 文雄(自治医科大学附属大宮医療センター外科 教授)
- 発行年
- 2007年4月
- 分 類
- 消化器外科学
- 仕 様
- B5判
- 定 価
- 定価 12,600円(本体 12,000円+税5%)
- ISBN
- 978-4-8159-1786-9
- 特 色
- 近年発生頻度の上昇著しい大腸癌について,内科医と外科医を含む幅広い読者を対象に,その発生機序,診断,治療に関するup to dateな知識を,とくに大腸疾患を専門として活躍する著者らがわかりやすく解説.基礎的領域:先端的分野である遺伝子レベルでの研究成果を,遺伝子診断や新しい化学療法にいかに臨床応用するか;translational medicineへの挑戦を解説.臨床領域:高解像度内視鏡を用いての,欧米のレベルを超える内視鏡診断による適切な治療方針決定と内視鏡治療の適応拡大;早期癌のみならず進行癌に対しても標準治療となった腹腔鏡下大腸切除術;また再建術式や吻合法の工夫,自律神経温存術式の発展などにより,術後の機能面での改善が期待される機能温存手術の現状;さらに新たな抗癌剤が次々に導入される化学療法の進展など,いま行われている画期的な変革を詳解する.大腸癌の最先端の研究と診療の最新知識を包括的に理解し,今後の臨床に役立てていただくためにぜひお勧めしたい一冊である.
序 文
生活の欧米化に伴い、本邦における大腸癌発生頻度は明らかに上昇し、大腸癌に関する臨床および研究は近年飛躍的に発展した。遺伝子レベルでの研究においては、Vogelsteinらにより、1988年に家族性大腸腺腫症の遺伝子が同定されたことを契機に大腸癌における遺伝子変化の解明が飛躍的に進歩し、遺伝性大腸癌のみならず通常の大腸癌の発生にかかわる遺伝子変化やエピジェネティックな変化の解明も進んできた。基礎的領域でのこれらの研究成果を、大腸癌の遺伝子診断や新しい化学療法にいかに臨床応用するか、すなわちtranslational medicineへの挑戦が現時点での先端的分野であろう。
大腸癌の臨床領域では、拡大内視鏡などの高解像度の内視鏡を用いて大腸腫瘍の性状診断や早期癌の浸潤度診断が可能となり、内視鏡治療の適応決定に寄与している。早期大腸癌の治療方法に関しては、内視鏡的粘膜切除や最近では内視鏡的粘膜下層剥離法の導入により、内視鏡的治療の適応がさらに拡大しつつある。本邦におけるきめの細かい内視鏡診断学とそれに基づいた適切な治療方針の決定は、欧米のレベルを越えるものがある。また、外科治療の領域では、腹腔鏡下大腸切除が13年前に導入され、低侵襲性で美容的にも優れた大腸癌手術が可能となった。本術式は、早期癌のみならず進行癌に対しても標準治療としての位置づけがなされている。また、機能温存手術としては、特に直腸癌手術にける再建術式や吻合法の工夫、自律神経温存術式などが発展し、術後の機能的な面での評価が重要視されている。さらに、化学療法の領域では有効な新たな抗癌剤が次々と導入されており、画期的な変革がなされつつある。
本書では、大腸癌の診断と治療におけるこのような目覚ましい進歩の過程にあって、大腸癌の発生機序、診断、治療に関するup to dateな内容を幅広く取りあげた。執筆者の多くは、自治医科大学付属大宮医療センター外科および同大学付属病院消化器一般外科の医師、および関連した施設において大腸疾患を特に専門として活躍している医師である。さらに、検診、病理組織、肛門癌、化学療法などの専門領域に関しては、他の専門的施設の先生方に執筆をお願いした。また、3つの章は、編者が特に関係の深い海外の専門医に執筆を依頼した。本書は、内科医と外科医を含む幅の広い読者を対象としている。読者の方々に大腸癌の研究と診療の最新知識を理解して頂き、今後の臨床に役立てて頂くことができれば幸いである。 最後に本書の企画にあたり御助言を頂き、さらに御執筆頂いた恩師 金澤曉太郎先生に深謝致します。また忙しい中、編集に御協力頂いた岡田真樹先生、河村 裕先生、冨樫一智先生に感謝致します。
平成19年4月
小西文雄
■ 主要目次
I. 大腸癌の診療における基本的事項
1)大腸癌診断(発見)のプロセス
2)治療方針決定のための検査
3)治療方針の決定
4)インフォームド・コンセント
5)術後補助療法,術後フォロー
II. 大腸癌の発生過程
1 大腸癌の疫学
2 大腸癌発生における環境因子と発 癌予防
3 大腸癌の遺伝子変化
4 大腸癌の組織発生Adenoma-Carcinoma Sequenceとde novo
5 潰瘍性大腸炎と大腸癌
6 遺伝性大腸癌
III. 大腸がん検診
1 便潜血検査(反応)による大腸がん検診
2 大腸内視鏡による大腸がん検診
IV. 大腸癌治療における診断学の役割
1 内視鏡,超音波内視鏡による深達度診断―1,000μm以上のSM浸潤の診断を中心に
2 CT colonography
3 MRIによる直腸癌局所浸潤およびリンパ節転移の評価 MRI in the assessment of local invasion and lymph
node involvement in rectal cancer
4 大腸癌の病理組織学的特徴
V. 大腸癌の治療
1 大腸癌治療方針決定の基本的手順
2 大腸癌取扱い規約 第7版―基本理念と主な改訂点―
3 大腸早期癌の治療
4 結腸癌の手術
5 腹腔鏡下大腸癌手術
6 直腸癌の手術
7 再発癌の治療
VI. 術後管理・術後フォローアップ
1 大腸癌手術における術後管理およびクリニカルパス
2 大腸癌術後フォローアップスケジュール
3 高齢者大腸癌患者の治療方針
4 大腸癌患者のストーマケア
VII. 大腸癌の化学療法
1 大腸癌術後補助化学療法
2 進行―再発大腸癌に対する化学療法
3 今後期待される薬剤