改訂序
2000年7月に刊行された本書は,出版からすでに6年半が経過した.
肛門疾患を専門にするものだけでなく,肛門疾患に馴染みのない一般外科医を対象として肛門疾患診療の実際を明らかにし,臨床的に役立つ内容とするように企画された本書は,幸いにも好評を持って迎えられた.
これは各執筆者が実際に第一線で活躍しており,その内容は単なる知識の羅列,他論文の引用となっておらず,自らの豊富な経験で裏づけされたもので,明日からの臨床に役立てる点が評価されたためであろう.ひとえに執筆された先生方のおかげと,改めて感謝申し上げたい.
さて今回,永井書店から改訂の申し出があった.
言うまでもなく肛門診療における基本は標準的な治療であり,それは肛門診療に携わる臨床医がマスターし実施し得なければならないレベルの診療である.
そして,本書は肛門診療における標準的な治療を主に述べた書である.
一方,治療には絶えず新しい試みが為されており,それらの中には既に評価が定まり標準的な治療の一部になりつつあるものもある.
今回,改訂をすることで,このような新しい治療法も取り入れup to dateな標準的な治療を含めた書となることを目指した.
肛門病を専門とする唯一の学会である日本大腸肛門病学会の専門医1,527名中,肛門領域の専門医が261名と,日本における肛門病診療が未だ充実していると言えない現状において,本書が肛門の臨床に携わる方々の一助となることを期待したい.
2007年2月
岩垂 純一