よくわかって役に立つ排尿障害のすべて


よくわかって役に立つ排尿障害のすべて
著 者
西沢  理(信州大学医学部泌尿器科学教室 教授)
発行年
2007年3月
分 類
泌尿器科学
仕 様
B5判
定 価
定価 6,300円(本体 6,000円+税5%)
ISBN
978-4-8159-1781-4
特 色
 よくわかる排尿障害の百科事典
 日常生活において排尿障害を患う患者の数は,実際の診療の現場に上ってこない数を含めるとかなりの患者が潜在的にいると思われる.医療従事者は,排尿障害が治療可能であり,積極的に医療機関を受診するよう啓蒙することが大切である.
 本書は,排尿障害に関心のある多分野の読者が,日常診療で排尿障害の患者に出会ったときに直ちに役立つ実践書として企画された.排尿障害の原因,診断と治療の実際から介護のケアまでを含めた網羅的な内容を19章に分けて解説し,それぞれを領域の第一人者が執筆.ワンポイントアドバイス,注意点,重要事項,患者・家族に対する疾患・検査などの説明(IC)に至るまで,わかりやすく,きめ細やかにまとめられた百科事典となっている.排尿障害に対する実践力が身につけるために座右においてぜひご活用いただきたい.

序   文

序 文  排尿障害は日常生活の場において頻度が高く,患者と家族のQOLを大きく損なう重要な病態であるが,治療可能なものとして広く認められているわけではない。排尿障害の頻度については,2003年に日本排尿機能学会が実施した40歳以上の1万人を対象とした排尿症状の疫学調査によると,日本全体で排尿症状を有する推定人数は40歳以上の人口が6,640万人であることから,1昼間頻尿,2夜間頻尿,3尿勢低下,4残尿,5尿意切迫感,6切迫性尿失禁,7腹圧性尿失禁,8おむつの使用,9膀胱痛,がそれぞれ,男性では1:1,595万人,2:2,135万人,3:1,088万人,4:792万人,5:449万人,6:202万人,7:82万人,8:57万人,9:73万人であり,女性では1:1,722万人,2:2,347万人,3:657万人,4:375万人,5:460万人,6:377万人,7:461万人,8:248万人,9:77万人であった。尿意切迫感(週1回以上)と頻尿(1日8回以上)の2つの症状を有するいわゆる過活動膀胱がある回答者は12.4%の頻度であり,810万人と推定された。したがって,実地臨床の場において,排尿障害の有無に関して留意を払うことは極めて重要であり,排尿障害が確認された場合には適切な対応が必要である。医療機関への受診率についてみると,過活動膀胱がある回答者の受診率は22.7%に留まり,性別では男性36.4%,女性7.7%であった。排尿の問題で医療機関を受診しない理由で最も多いのは男女のいずれにおいても「困っていない」であり,ほかに「歳をとれば当然」,「病気でない」,「恥ずかしい」などが挙げられており,排尿症状が治療可能であるとする啓蒙活動を行い,医療機関への受診率を高めることが必要である。
 排尿障害の分野では前立腺肥大症,尿失禁,過活動膀胱,間質性膀胱炎について診療ガイドラインが刊行され,診療の標準化が進められてきたものの,細分化され過ぎて,認知度自体が不十分である。本書は『よくわかって役に立つ排尿障害のすべて』と題し,排尿障害の原因,診断と治療の実際から介護のケアまでを含めた網羅的な内容とし,排尿障害に関心のある多分野の読者における日常診療・業務に直ちに役に立つ実践書として企画されたものである。19章にわたる項目は疫学,蓄尿と排尿のメカニズム,QOL,ウロダイナミクス,夜尿症,女性尿失禁,前立腺肥大症,過活動膀胱,間質性膀胱炎,慢性前立腺炎,尿道狭窄,中枢性および心因性排尿障害,脊髄性排尿障害,薬物性排尿障害,在宅医療における排尿障害,漢方治療,アセスメントとケアプラン,骨盤底筋訓練,自己導尿・カテーテル管理・排泄用具に分けられ,百科事典のような感がある。執筆はそれぞれの領域の第一人者が担当しており,本文はもとよりワンポイントアドバイス,注意点,重要事項,患者・家族に対する疾患(検査など)の説明(IC)欄に至るまで,わかりやすく,きめ細やかにまとめられている。本書を座右の書とすることで排尿障害に対する実践力が身につくことを確信する次第である。

2007年3月吉日
西澤 理

■ 主要目次




1.下部尿路症状の疫学

 1.日本排尿機能学会の疫学調査
 2.過活動膀胱の疫学
 3.高齢者の下部尿路障害の疫学

2.蓄尿と排尿のメカニズム
 1.蓄尿,排尿の神経性調節
 2.脳内神経伝達物質を介した調節系
 3.尿路上皮から放出されるメディエーターを介した調節系

3.排尿障害のQOL
 1.背景
 2.QOLとは
 3.下部尿路症状とQOL
 4.排尿障害治療におけるQOL評価の意義
 5.QOLの評価方法
   QOL質問票の条件
   使用できるQOL質問票の具体例
   QOL評価の実際
   国際失禁会議QOL質問票

4.ウロダイナミクス
 1.尿流測定(ウロフローメトリー;Uroflowmetry)
 2.残尿測定
 3.「膀胱内圧測定」「内圧尿流測定」「外尿道括約筋筋電図」「腹圧下尿漏出圧測定」

5.子どもの夜尿症
 1.疾患の概念・原因
1)夜尿症の原因
 1.診断のポイント
 2.治療のポイント

6.女性尿失禁
 1.疾患の概念・原因
 2.診断のポイント
 3.治療のポイント
 4.看護・介護ケア

7.前立腺肥大症
 1.疾患の概念・原因
 2.診断のポイント
 3.治療のポイント

8.過活動膀胱
 1.過活動膀胱の新しい概念
 2.病態
 3.診断
 4.治療
 5.診療アルゴリズム

9.間質性膀胱炎
 1.疾患の概念:除外診断の上に成り立つ疾患
 2.原因
 3.診断のポイント:まず疑う
 4.治療のポイント
 5.看護・介護ケア

10.慢性前立腺炎
 1.前立腺炎の概念・原因
 2.診断のポイント
 3.治療のポイント
 4.看護・介護ケア

11.尿道狭窄
 1.尿道狭窄治療後の経過
 2.男性尿道の解剖
 3.尿道狭窄の原因
 4.尿道狭窄の病理
 5.狭窄による二次的な影響
   合併損傷
   治療による影響
   臨床症状
   評価
   治療

12.中枢性排尿障害および心因性排尿障害
 1.中枢性排尿障害
 2.心因性排尿障害

13.脊髄性排尿障害
 1.疾患の概念・原因
 2.診断のポイント
 3.治療のポイント
 4.看護・介護ケア

14.薬物性排尿障害
 1.疾患の概念・原因
 2.排出障害を起こす薬物
 3.蓄尿障害を起こす薬物
 4.診断のポイント
 5.治療のポイント

15.在宅医療における排尿障害
 1.疾患の概念・原因
 2.診断のポイント
 3.治療のポイント
 4.看護・介護ケア

16.排尿障害と漢方治療
 1.漢方薬の特徴と一般的使用方法
 2.下部尿路疾患別の漢方薬の使い方
 3.漢方薬治療の効果判定と内服継続期間
 4.漢方薬が効果を発揮できない下部尿路疾患

17.排尿障害のアセスメントとケアプラン
 1.排尿障害のアセスメント
 2.排尿障害のケアプラン

18.骨盤底筋訓練
 1.骨盤底筋訓練の概要
 2.骨盤底筋訓練の原理
 3.骨盤底筋訓練法の実際
 4.骨盤底筋訓練の指導のバリエーション
 5.デバイスを用いた骨盤底筋訓練
   骨盤底筋訓練の継続

19.自己導尿・カテーテル管理・排泄用具
 1.自己導尿
 2.カテーテル管理
 3.排泄用具


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