リウマチ病セミナー17
- 著 者
- 監修:七川 歡次(滋賀医科大学名誉教授)
- 発行年
- 2006年12月
- 分 類
- 膠原病・リウマチ
- 仕 様
- B5判
- 定 価
- 定価 8,610円(本体 8,200円+税5%)
- ISBN
- 4-8159-1774-4
- 特 色
- リウマチ学のいまを知らせる好著.
本セミナーは,1990年以来毎年発行されて,今回で17冊目となり,常に本領域の水先案内人として,最新の研究成果・治療データを提供してきた.多彩で日進月歩の進展をみせるリウマチ学を一流の研究者たちが思う存分成果を披露している.
高安病やAAアミロイドーシスに対するIL-6の効果,OAの遺伝子アスポリン,アディポサイトカイン,Toll-like receptor,PGD2,リウマチ病とspirituality,PTSD,RAに対する薬物療法,悪性リンパ腫などをとりあげた.
序 文
わが国のリウマチ学も次第に幅広くなり,深みも加わって多彩になってきたようで,嬉しく思っている.わが国から外国に発信できるリウマチ学の基礎や臨床のデータが出てきていて,これまでとは違った印象で心強い.
血管炎の代表の一つである高安病やAAアミロイドーシスに対するIL6の効果は今後大いに注目されるものとして登場してきた.上気道抵抗症候群や急速破壊股関節症あるいはSLEの病態と治療においても,臨床症状の綿密な分析がなされ,年齢,性など免疫的差異がクローズアップされてきて,臨床医にとって注目すべき事実が明らかになりつつある.基礎的なものでも,OAの遺伝子asporin,アディポサイトカイン,Toll-like receptor,PGD2は新しい知見で,われわれを勇気づけてくれる.これらはリウマチ学の深みに関わる進歩であるが,リウマチ患者を診療するものには何よりも幅広い知識とそれにも増して現場での豊富な経験が求められる. psoriatic arthropathyの診断基準,enthesitisの画像診断,腫瘍性骨軟化症,筋筋膜性疼痛症候群は診断に関わるものであるが,リウマチの訴えから診断に至るまでに時間のかかることが多く,時には年単位の観察が必要となることもあり,それがリウマチ病の特徴であることをわきまえなければならない.
治療に関する論文が多くなっていて,有難く思っている.リウマチ病とspirituality,PTSD,あるいは慢性疼痛への認知行動療法からリウマトイド脊椎炎の手術に至るまで,多方面からのアプローチが求められ,困難を極めることも多く,ここでも時間が関わり,しばしば患者の一生に対応しなければならない.
Morton病,ワクチンによるリウマチ病,Felty症候群,股関節症の保存療法,RA診療の進展と経過に関する論文のほか,最近にわかに注目を集めている<RAに対する薬物療法>がある.ここでは日常の診療に直結した老人に対するNSAIDの使い方,レフルノミドの効果と副作用,生物学的製剤のrituximab,abataceptがとりあげられている.殊に生物学的製剤治療については目覚ましいものがあるだけに,長期の観察による適正な評価が一そう望まれる.
テニスのスポーツ障害については経験の深い福田眞輔先生に,リウマチ病の本態,診断,治療に深く関わる悪性リンパ腫については,これも経験の深い八田和大先生,X線障害について高田先生を煩わせたが,いずれもよく書いて戴き感謝している.
一般人口のなかでリウマチ患者は格段に多い.西林保朗先生が論文の冒頭に述べられているが,最近の厚生労働省の統計によると,腰痛,関節痛などのリウマチの訴えは,高血圧,循環器病,糖尿病を抜いて第1位で,第5位に歯痛があるということである.この成績は,私が30年以上前に行った住民調査の成績とよく符号し,欧米の成績とも似ている.その頃の厚生省の統計では,運動器疾患はずっと下位で,高血圧,循環器病が第1位を占めていたのを考え併せると,これはわが国のリウマチ学が随分と進展してきた証拠で,今後わが国から発信する仕事が次々と出てくることが期待され,楽しみである.
2006年12月
七 川 歡 次
■ 主要目次
炎症リウマチ
炎症リウマチ
炎症リウマチと悪性リンパ腫
高安病2005年
Felty症候群2005
SLEとインターフェロンα
ワクチンによるリウマチ症状
乾癬性関節炎の診断基準
骨関節,脊椎,神経
リウマチ病とspirituality
リウマチ病と気候
上気道抵抗症候群
急速破壊型股関節症の病態と治療
PTSD(posttraumatic stress disorder):(心的)外傷後ストレス障害
筋筋膜痛症候群
テニスによるスポーツ障害
腫瘍性骨軟化症とMEPE
Morton病
評 価
関節リウマチの治療方法の進展と経過の変化について
検 査 法
診断用X線障害
Enthesitis(付着部炎)の画像診断
生物学的反応
Toll-like receptorと疾患
プロスタグランジンD2とリウマチ
OAの原因遺伝子:アスポリン
アディポサイトカイン
治療と副作用
慢性疼痛の認知行動療法―痛み認知と痛み行動へのアプローチ―
股関節症に対する保存療法−股関節用S-splintを中心に−
高齢者におけるNSAIDsの使い方
AAアミロイドーシスと新しい治療法
レフルノミドの作用と副作用
リウマチ性疾患における新規の生物学的製剤による治療
手 術
リウマトイド脊椎炎の手術
索引(XVII)・総索引(I〜XVII)・Drug Information