救急疾患CTアトラス
その撮り方・読み方の実際
- 著 者
- 編集:吉岡 敏治(大阪府立急性期総合医療センター
-
- 医務局長)
- 発行年
- 2006年11月
- 分 類
- 救命・救急医学
- 仕 様
- A4判
- 定 価
- 定価 10,500円(本体 10,000円+税5%)
- ISBN
- 4-8159-1772-8
- 特 色
- 救急医療におけるCT scanを,第一線の若手救急医が解説.蓄積された多種多様なCT画像についての実践的な知識,読影技術を余すことなく披露する.救急領域で頻度の高い外傷・疾患の中からCT scanが有用となる<病態>を網羅し,救急CT画像と傷病の分類を系統的にまとめている.
序 文
2004年度から新しい卒後臨床研修制度が発足し,救急の研修が必修となって救急医療は今までにない注目を集めている.救急医にとって診断と治療は,同時に進行する車の両輪であり,診断,とくに正確な病態の把握は,手術や患者管理に勝るとも劣らない重要性を持っている.画像診断の中でもCT scanは,救急医療の現場において欠くことのできない診断方法の一つであり,近年,その撮影速度,再構成速度,画像解像度において目覚ましい進歩を遂げてきた.その結果,一部の施設では,CT scanがすでにスクリーニング検査として行われつつあり,心電図の自動解析のように,可能性としての異常を指摘するプログラムの開発も夢ではなくなってきた.
2002年の秋,永井書店から月刊誌「外科治療」の講座欄に救急領域の画像診断に関する連載を企画したいという旨の依頼があった.救急領域の画像診断の中では,CT scanがその簡便性・非侵襲性,普及率などいずれの面から考えても,臨床医が有すべき必須能力であることは言うまでもない.しかし,救急領域の CT 画像について,その撮影方法や診断方法をまとめて系統的に解説した本が少ないことも事実である.外科治療は誌面の限られた月刊誌ではあるが,収録する画像枚数に制限を設けないことを条件に連載を引き受けた.2003年の1月号から連載が始まったが,本書はこの講座欄に「救急領域のCT画像」として,3年近くにわたって連載されたものを再編集し,まとめ直したものである.
多くの学術書は疾患単位で,その一部に救急を扱っているか,もしくは臓器・系統別に解剖学的・生理学的機能とその異常(疾病)を網羅したものが多い.救急疾患をまとめて対象とし,そのCT画像と傷病の分類を主とした内容の教科書はほとんどない.本企画は,救急領域において頻度の高い外傷・疾患の中で,CT scanが初期診断およびその後のfollow up,さらには予後の指標に有用である病態を系統的に網羅するものである.救急救命センターでは多種多様な患者に遭遇することができ,私の周囲には前述のようなこの分野の目覚ましい進歩を踏まえて,救命救急センター内でCT画像を蓄積し,極めて実践的な知識を持つ若手救急医がたくさん存在する.あえて放射線科医ではなく,第一線で活躍しているこれら若手の救急医に執筆をお願いすることにした所以である.
救急医療は日進月歩の近代医学を実践する医療の最前線である.
本書が研修医やこれから救急医を目指すレジデント,さらには中堅医師のCT画像への理解を深め,救急患者が来院した際,CT画像の撮影と読影に抜群の援軍となることを願っている.本書があらゆる分野の人々に読まれ,日常診療の一助となれば望外の喜びである.
2006年 初夏
編者 吉岡 敏治
■ 主要目次
総 論
1.救急領域の胸腹部骨盤CT scanの撮影方法
2.最新のCT画像 multidetector-row CT
外 傷 編
1.頭部外傷
2.顔面,頭・頸部損傷
3.胸部損傷
4.肝 損 傷
5.膵・胆道損傷
6.脾 損 傷
7.腎 外 傷
8.消化管損傷
9.骨盤骨折
10.血管損傷
疾 病 編
1.脳血管障害
2.中枢神経系疾患(1)−CO中毒,脂肪塞栓症,中枢神経系感染症−
3.中枢神経系疾患(2)−蘇生後脳症,低血糖昏睡,けいれん性疾患−
4.大動脈疾患
5.肺 炎
6.急性腹症
7.消化管穿孔
8.急性膵炎,胆B炎
9.後腹膜腔疾患−後腹膜腔の新しい概念−
10.壊死性軟部組織感染症
11.横紋筋融解症・クラッシュ症候群