よく理解できる 子どものがん


診療を深めるための最新の知識とケア

よく理解できる 子どものがん
著 者
編集:別所 文雄(杏林大学医学部小児科 教授)
   
編集:横森 欣司(自治医科大学小児外科 教授)
発行年
2006年11月
分 類
小児化学一般・癌・腫瘍一般
仕 様
B5判
定 価
定価 8,925円(本体 8,500円+税5%)
ISBN
4-8159-1771-X
特 色
 小児がんの患児に接するうえで必要な,最新の知見に基づく小児がんのケアの原則をわかりやすく解説する.診断や治療法の解説だけではなく,発生や子生物学の知識,看護の実際,分子標的療法や遺伝子治療などの新たな試みの現状と今後の展望などを詳解する.
また,小児がん経験者自身からのメッセージも特別に設けた.

序   文

●はじめに

 小児のがんは比較的稀な疾患で、その発生率は子どもの人口10,000人あたり1〜1.5人に過ぎない。この数字は、1人の小児科医が一生の間に診る小児のがんの患者は数人を超えることはないことを示している。しかしながら、いくつかの理由で、小児のがんは小児の疾患の中で重要な位置を占めている。第一には、感染症で死亡することが稀な現在、1〜15歳の死亡原因としては不慮の事故に次いで2番目に多いものとなっていることである。第二には、適切な治療によって高率に治癒可能な疾患であることである。このことによって、成人に達する小児の1,000人に1人が小児がん経験者であるといわれるほどになっており、彼らが社会の重要な構成員になっていることである。
 これらのことから、小児のがんの患者の診療にあたって必要なさまざまな重要な注意点が導き出される。第一に、小児がん経験者が抱えるさまざまな問題の解決による生活環境の改善が大切である。第二には、過去30年以上にわたって明らかに向上してきた治療成績は新しい治療手段の導入というよりも、それまでに導入されていた治療手段の組み合わせ方法の工夫と用量の極限までの増量によりもたらされたことによって達成されたものであるという事実に関係している。治療中の患児のケアばかりでなく、治療後の短期的・長期的な副作用の発現を最小限にする工夫が必須で、メディカルオンコロジストの統括の下に、異なる領域の専門医の協力ばかりでなく、コメディカルの人々との協力が重要である。第三に、今後の小児のがんの治療の向かうべき方向性として、治療効果を減弱させず副作用を減弱させること、また現在の方法では治癒を得ることが不可能な小児のがんを治癒に導くことなどがある。
 本書ではこれらを踏まえて、疾患ごとの治療の実際を詳説するのではなく総論に重点を置き、臨床の現場で患児に接するうえで必要な最新の知見に基づく小児のがんのケアの原則を解説することを目指した。したがって、内容は小児がんの診断や治療法の解説だけではなく、その発生や再発の問題の理解に役立つ分子生物学の知識、看護の実際、分子標的療法や遺伝子治療などの新たな試みの現状と今後の展望、小児がん経験者のもつ諸問題を医学的見地から取りあげた晩期障害などを含むが、さらにケアに取り組む者が心に留めておくべき小児がん経験者自身からのメッセージまでを含むものとなっている。
 本書が小児のがんの診療に携わる人々すべてにとって、その実践のうえで有益なものであることを念じている。

平成18年11月吉日
別所文雄
横森欣司

■ 主要目次




総  論

CHAPTER  1 小児のがんの疫学
CHAPTER  2 小児がんの分子生物学
CHAPTER  3 小児のがんの病因―病因の原因を探る
CHAPTER  4 支持療法T(輸血、感染症予防・治療)
CHAPTER  5 支持療法U(消化器症状、栄養管理)
CHAPTER  6 病理診断(小児のがんの種類、組織診断、鑑別診断)
CHAPTER  7 画像診断―種類と特徴
CHAPTER  8 化学療法(種類、使い方、注意点)
CHAPTER  9 分子標的療法―その役割と今後の展望
CHAPTER 10 小児がんの遺伝子治療
CHAPTER 11 小児がんの免疫療法
CHAPTER 12 放射線療法(治療方針、合併症)
CHAPTER 13 外科療法(生検、摘出、支持的役割)
CHAPTER 14 造血幹細胞移植
CHAPTER 15 看護―小児がんと診断された子どもと家族への看護
CHAPTER 16 小児がんの晩期障害
CHAPTER 17 緩和医療(心理療法・疼痛対策)
CHAPTER 18 終末期医療(告知、ターミナルケア)
CHAPTER 19 小児がんに対する社会的サポート
CHAPTER 20 子どもからみた小児がん


各  論

CHAPTER  1 白血病
CHAPTER  2 骨髄異形成症候群
CHAPTER  3 悪性リンパ腫
CHAPTER  4 脳腫瘍
CHAPTER  5 神経芽腫
CHAPTER  6 ウィルムス腫瘍
CHAPTER  7 肝芽腫と成人型肝癌
CHAPTER  8 網膜芽腫
CHAPTER  9 横紋筋肉腫およびその他の軟部肉腫
CHAPTER 10 骨肉腫
CHAPTER 11 Ewing肉腫/未熟神経外胚葉腫瘍(PNET)
CHAPTER 12 胚細胞腫瘍(奇形腫群腫瘍)
CHAPTER 13 組織球性増殖性疾患(LCH、HLH)
CHAPTER 14 胸膜肺芽腫
CHAPTER 15 GIST


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