プレホスピタルMOOKシリーズ2
現場活動プロトコール PART2
- 著 者
- 監修:石原 晋(県立広島病院救命救急センター 部長)
- 著 者
- 監修:益子 邦洋(日本医科大学救急医学 教授)
- 発行年
- 2006年7月
- 分 類
- 救命・救急医学
- 仕 様
- A4判
- 定 価
- 定価 3,990円(本体 3,800円+税5%)
- ISBN
- 4-8159-1764-7
- 特 色
- プレホスピタルMOOKシリーズ第二弾は,現場活動プロトコールのうち,周産期,乳幼児,在宅医療処置継続中の傷病者に対する救急処置を取り上げ,図表を駆使し適切なプロトコールと対処のポイントを分かりやすく解説する.それぞれの項目を分野の第一人者が執筆. 全国の多くの救急隊員やメディカルコントロールの関係者待望の書.
序 文
プレホスピタルMOOKシリーズの第二弾として、今回は現場活動プロトコールのうち、周産期、乳幼児、在宅医療処置継続中の傷病者に対する処置について取りあげた。
周産期救急に関するプレホスピタルケアは、救急隊員の現場活動の中でも最も困難なものの1つといってよいだろう。その最大の理由は母体に引き起こされた異常状態を観察、判断、処置するのと併行して、今まさに娩出されようとしている胎児または既に娩出された新生児に差し迫った危機的状態をいち早く察知して、適切な対応を取らねばならないところにある。つまり救急隊員は1回の活動で2人の傷病者の命を預かっていることにほかならないのであり、この視点を忘れて適切な現場活動はあり得ない。
乳幼児の救急に対処する際に肝に銘じておかなければならないのは、小児は決して小さい大人ではない。ことである。バイタルサイン1つ取っても、小児の正常値は成人のそれとまったく異なっており、このような小児の特徴を十分理解しておかなければ、適切な対応は困難である。小児救急の多くは、休日夜間急患センターなどの初期救急医療体制で対応可能である。しかしながら、小児救急の中には、一見軽症そうに見えるけれども実は重症の患児が含まれていて、現場でその判断を見誤ると取り返しのつかない後遺症や入院期間の長期化をもたらすことになる。また最近では、児童虐待の問題が毎日報道されており、被害にあった患児に最初に接触する救急隊員の第六感がますます重要になっていると言えよう。泣いたり、むずがったりして、明確な自覚症状すら訴えない患児に対して、短時間内に必要な観察、判断、処置を要領よく実施し、見落としをなくすためには、適切なプロトコールを定めてこれを遵守することが必須である。
最後に、在宅医療処置継続中の傷病者に対する処置をまとめた。医療の進歩や高齢化社会の進展に伴い、さまざまな形で在宅治療を行っている傷病者が増加している。自宅内で酸素療法を実施している傷病者、あるいは通常では考えられない部位にカテーテルが留置され、あるいはストーマ(瘻孔)が造設されている傷病者では、それがいったい何を意味し、どのような目的で設置されているのか、現在の状態は傷病者の生命にどのような危険をもたらしているのか、などについて正確に把握していなければ適切な現場活動はできない。
今回も各項目の執筆を、各界の第一人者であり、かつプレホスピタルケアにも造詣の深い方々にお願いした。本書から学んだことを明日からの現場活動に活かすことにより、1人でも多くの傷病者の命を助け、後遺症を軽減して頂きたいと切に願っている。
最後に、救急搬送における重症度・緊急度判断基準作成委員会報告書。の引用につきご快諾を賜った(財)救急振興財団に改めて深謝したい。
平成18年9月吉日
石原 晋
益子邦洋
■ 主要目次
1.周産期
●1・性器出血(周産期以外のものも含む)
1.性器出血の鑑別疾患とその特徴
2.性器出血のプロトコールについて
●2・分娩
1.正常分娩について
2.正常分娩の経過
3.新生児の管理
4.新生児のバイタルサイン
5.周産期 分娩のプロトコールについて
●3・異常分娩・産科合併症
1.異常分娩
2.産科合併症
3.周産期 異常分娩、産科合併症のプロトコールについて
2.乳幼児
●1・心肺機能停止
1.心肺機能停止の病態
2.心停止の確認・CPR開始
3.心電図の解析
4.虐待が疑われるときの対応
●2・ショック
1.ショックの基本事項
2.乳幼児のショックの特徴
3.ショックを疑うための観察と判断のポイント
4.ショックを疑ったときの処置と注意点
●3・呼吸困難
1.高濃度酸素投与・SpO2(経皮的酸素飽和度)
2.呼吸困難の様式・呼気の延長の有無
3.医療機関への搬送
●4・けいれん
1.けいれんとは
2.けいれんの原因
3.けいれん重積症とは
4.熱性けいれんについて
5.救急搬送における重症度・緊急度判断基準における小児のけいれん
6.問診のポイント
7.観察のポイント
8.応急処置と搬送時の注意点
9.病院選定
10.病院到着後の診療
●5・意識障害
1.意識障害の原因
2.意識障害の重症度判定
3.意識障害の救急処置
4.意識障害児の神経学的診察(参考:医療機関での診察)
5.頭蓋内圧亢進と脳ヘルニア(参考:医療機関での診察)
6.頭部外傷と児童虐待
7.プロトコールの解釈
●6・新生児救急
1.保温
2.成熟児と低出生体重児
3.成熟新生児
●7・高熱(39℃以上)
1.1ヵ月未満児 86
2.生後1〜3ヵ月未満児
3.生後3〜36ヵ月未満の乳幼児
4.高熱と虐待
●8・脱水
1.病因と発生頻度
2.1日に必要な水分量(維持量)
3.患者搬送に際して重要な事項
4.熱中症が疑われる場合 ステップ5
●9・急性腹症
1.小児の腹痛の原則
2.現着時における注意点
3.プロトコールの説明
4.急性腹症といわれる疾患の臨床所見と搬送時の対応
3.在宅医療処置継続中の傷病者に対する処置
●1・中心静脈栄養
1.在宅中心静脈栄養法とは
2.起こりやすい合併症や副作用
3.在宅中心静脈栄養法施行中の緊急時の対応
4.医療機関の選定
●2・癌化学療法
1.外来癌化学療法の実際
2.抗がん薬による有害反応で救急搬送が依頼される場合とその対応方法
3.癌の進行に伴う急性症状により救急搬送が依頼される場合とその対応方法
4.死亡時の対応方法
●3・在宅酸素療法
1.HOTが適応となる病態と原因疾患
2.急性増悪の原因と症状
3.急性増悪の重症度判定
4.急性増悪の予後
5.急性増悪に対する治療の概要
6.プレホスピタルにおけるチェックポイント
●4・人工呼吸器
1.在宅人工呼吸療法の対象疾患
2.在宅人工呼吸患者に関する基本的事項
3.人工呼吸器、呼吸回路、気管切開チューブなどについて
4.その他の注意事項
●5・自己導尿
1.自己導尿とはいかなる手技か
2.自己導尿管理上のトラブル
3.自己導尿が必要となる基礎疾患(病態)
4.基礎疾患の進行により想定される事態
●6・腹膜灌流
1.救急対応時の注意点
2.意識障害
3.排液混濁、腹痛
4.呼吸困難
5.腹膜透析カテーテルトラブル
●7・内視鏡的胃瘻造設術
1.胃瘻の構造
2.カテーテルの構造と種類
3.カテーテルの固定方法
4.カテーテル抜去の方法
5.カテーテルが抜けたときの処置
■症状別重症度・緊急度判 断基準