よくわかって役に立つ 新・褥瘡のすべて


よくわかって役に立つ 新・褥瘡のすべて
著 者
編著:宮地 良樹 京都大学大学院 教授
著 者
真田 弘美 東京大学大学院 教授
発行年
2006年8月
分 類
皮膚科学
仕 様
B5判
定 価
定価 9,240円(本体 8,800円+税5%)
ISBN
4-8159-1761-2
特 色
初版発行から5年,褥瘡診療の目覚ましい進歩と2005年策定の「科学的根拠に基づく褥瘡局所治療ガイドライン」を踏まえ全面改訂したスタンダードテキスト.豊富なカラー写真・イラストでビジュアルに解説,褥瘡診療の実践的知識・情報・技術を整理しその全容を余すところなく詳解する.

序  文

褥瘡ほどこの10年間で変容を遂げた疾患はない。以前は、寝たきり高齢者に不可避の合併症で看護の恥とされ、治療への熱意も湿りがちだった。1998年に当時の厚生省主導で「褥瘡の予防・治療ガイドライン」が発表され、それまでのデータとエキスパートオピニオンを統合した形で褥瘡診療の実践的知識が整理され、褥瘡に日が当たるようになった。その背景には、欧米で褥瘡治療の新しい息吹を体験した専門看護師の進取の気性や創傷治癒理論の進歩による新しい創傷治療薬の開発が大きく貢献したことを指摘すべきであろう。
その後、1999年に日本褥瘡学会が設立され、職種を越えた学際領域の専門家が褥瘡をキーワードに糾合し、褥瘡診療は大きな展開をみせることになった。この学会は新しいが故に、エビデンスに基づく科学的な手法を用いて、異なる医療のサブスペシャリティを尊重することで急速に発展した。今日の褥瘡をめぐるチーム医療の原点がここにあることも見逃せない。2002年には褥瘡対策未実施減算施策が施行され、褥瘡は一気に医療界の関心を集めることになった。それに呼応する形で褥瘡学会は、リスク評価法、DESIGNという創面評価法を公表し、その成果は2005年策定の「科学的根拠に基づく褥瘡局所治療ガイドライン」として結実した。
本書の前身である「よくわかって役に立つ褥瘡のすべて」はこのような潮流の中で2001年に刊行され、幸いにして江湖の好評を博した。しかし、この5年間の褥瘡をめぐる進歩は目覚ましく、ガイドラインも策定されたことから、全面改訂に踏み切って誕生したのが本書「新・褥瘡のすべて」である。DESIGNに準拠し、EBMに基づいて策定されたガイドラインを理解するには、褥瘡の病態と予防・管理の全容を理解する必要がある。また「予防に始まり予防に終わる」褥瘡管理のためには、局所治療のみに目を奪われるのは本意ではない。そのような視点から、本書は褥瘡の予防から治療までの全貌を明らかにし、診療現場に即応した実践的な管理方法を鳥瞰した点で、まさに「新・褥瘡のすべて」の面目躍如たるものがある。当初、全面改訂なので書名そのものも変えようとも考えたが、既に褥瘡のバイブルとして定着した感があるので敢えて「新・褥瘡のすべて」としたものである。これから10年間に拓かれる新たな褥瘡診療の地平に、本書が新たな足跡を残し、その発展に大きく寄与することを願ってやまない。

平成18年 盛夏 
宮地 良樹
真田 弘美

■ 主要目次




1 褥瘡の発症機序
 1-1.褥瘡はなぜできる
 1-2.力学からみた褥瘡の発症機序
 1-3.生体反応からみた褥瘡の発症機序

2  褥瘡のリスク評価
 2-1.リスクアセスメント総論
 2-2.リスクアセスメントスケール各論

3 褥瘡の予防
 3-1.臥位での褥瘡を予防する
 3-2.座位での褥瘡を予防する

4 褥瘡のスキンケア
 4-1.皮膚科学からみたスキンケアの基礎知識
 4-2.スキンケアの実際

5 褥瘡の栄養管理
 5-1.栄養管理総論
 5-2.栄養管理の実際

6 創傷治癒のメカニズム
 1.皮膚の生理機能と構造
 2.一般的な皮膚創傷治癒の基本的知識
 3.創傷治癒を障害する因子
 4.褥瘡における創傷治癒過程の問題点

7 褥瘡の分類
 1.急性期と慢性期
 2.褥瘡の重症度による分類
 3.褥瘡の経過(相)による分類
 4.DESIGNについて

8 褥瘡治療のコンセプト
 8-1.急性期褥瘡とその治療
 8-2.慢性期褥瘡治療の基本スキーム

9 慢性期褥瘡治療の実際
 9-1.Wound bed preparationのコンセプトと実際
 9-2.Moist wound healingのコンセプトと実際

10 ドレッシング材
 10-1.理論と分類
 10-2.ドレッシング材の使用方法―実践編

11 難治性褥瘡の治療
 1.ポケットを有する褥瘡
 2.不良肉芽
 3.創辺縁の変化─堤防状隆起、周囲皮膚との段差および浸軟
 4.踵部、大転子部の褥瘡
 5.感染

12 褥瘡の外科的治療
 12-1.外科的治療(手術療法)
 12-2.術前術後の看護

13 褥瘡の物理療法
 1.物理療法の位置づけ・種類
 2.各物理療法の解説

14 褥瘡発症後のケア
 1.褥瘡発生に至った要因を見極める
 2.褥瘡の治療目標の設定
 3.褥瘡の局所ケア方法

15 褥瘡のチーム医療―急性期病院を例に
 1.京都大学医学部附属病院の特徴
 2.褥瘡対策チームの構成と運営
 3.京大病院における褥瘡対策の変遷
 4.チーム医療
 5.チーム内の各専門職の役割
 6.チーム医療でかかわった事例紹介

16 在宅での褥瘡ケア―予防・治療・介護
 1.栄養管理と食事の工夫、口腔ケア
 2.日常生活動作(ADL)、QOL拡大のための工夫
 3.褥瘡部の観察と処置、スキンケア、褥瘡感染への対応
 4.褥瘡予防用具(エアマットレスなど)の活用
 5.在宅ケアでの介護者への支援と医療・福祉サービスの連携

17 患者家族の教育
 1.褥瘡ケア教育の意義
 2.患者と家族のアセスメント
 3.患者家族の教育

18 褥瘡患者のクリニカルパス
 1.クリニカルパスとは
 2.褥瘡対策にクリニカルパスを導入する意義
 3.褥瘡クリニカルパスの作成
 4.褥瘡クリニカルパスの実例

19 褥瘡ケアの質の保証
 1.ケアの構造(structure)
 2.ケアの過程(process)
 3.ケアの成果(outcome)

20 褥瘡をめぐる今後の展望
 1.褥瘡治療の現状
 2.今後の展望

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