TEXT BOOK 女性心身医学


TEXT BOOK 女性心身医学
著 者
編集  :日本女性心身医学会
   
編集責任:玉田 太朗(医療法人仁寿会 理事
   
           自治医科大学名誉教授)
   
編集責任:本庄 英雄(京都府立医科大学
   
           附属病院長・教授)
発行年
2006年7月
分 類
心身医学・産婦人科
仕 様
B5判
定 価
定価 8,820円(本体 8,400円+税5%)
ISBN
4-8159-1760-4
特 色
疾患の治療のみならず、予防や健康・福祉の増進、自己実現まで求められる21世紀の女性のニーズの対応させるため,患者中心の全人的医療と,女性に特有な心身医学的問題の研究と治療の修得を目的に,産婦人科のみならず,精神科,心療内科,内科,コメディカルなど幅広い執筆者によって解説された女性心身医学の標準テキスト.

序 文
 ルネ・デカルト(1596〜1650)の心身二元論(『人間論』1633?)により,身体を物として取り扱うことによって近代医学は大いなる発展を遂げた.一方,精神医学は20世紀に入り,ジグムント・フロイトの精神分析学などによりようやく本格的な発展をみせた.
 そのうち,心と身体そして各々の病態が相互に相関し起こる心身症,そしてそれらの心身医学も20世紀初頭より発展してきた.1972年よりドイツでは心身医学のカリキュラムに組み込まれ,精神療法が保険診療の対象となった.
 わが国の女性心身医学は玉田太朗日本女性心身医学会理事長のご説明によると,1951年,慶應義塾大学産婦人科 松本 寛教授が,「産科と婦人科」誌上に「精神肉体病とその診断治療について」というタイトルでアメリカの文献に現れたpsychosomatic diseaseを紹介し,自験例を発表したことにより始まるとされている.その後,1974年に日本産婦人科心身医学研究会が創設され,1997年には第26回の学術集会が日本女性心身医学会の名称で開催され,産婦人科ばかりでなく精神科,心療内科,内科,コメディカルなどを広く抱含して拡大,現在では会員数で600名に近づいている.2007年5月13〜17日には国立京都国際会館において第15回国際女性心身医学会を開催予定,メインテーマを「東洋と西洋における心身医学」とさせて頂いている.  玉田理事長によれば,「心身医学には一般性と専門性があり,一般性とはプライマリ・ケアあるいは全人的医療といわれるものと同じ内容を指す.患者中心医療の心がけというべきものである」としている.仏教における心身一如に通じるものであろう.また「専門性とは心身医学検査・診断法に基づく心身医学的治療を指す」としている.さらに「女性心身医学では,女性に特有な身体的ならびに心理社会的特徴を踏まえた診療が要求される」と述べておられる.
 女性心身症としては従来,思春期(神経性食思不振症など),周産期(産褥ブルーズ症候群など),更年期(うつ症状など),月経周期に伴う障害(月経前症候群,月経前気分不快症候群など),セクシュアリティの異常などをまず代表的な問題としてきた.しかしながら,女性心身医学ではさらに,北欧にみられる例外的な早婚,一方世界的にみられる晩婚,離婚・再婚の増加,欧米における女性の社会的活躍と高い地位,わが国における女性の社会的地位・活躍の低さ(女性の社会的地位を示すジェンダー・エンパワーメント指数は2005年80カ国中第43位),あるいは体外授精をはじめとする不妊治療,着床前診断などにおける倫理,心の問題,婦人科手術時,特に卵巣摘出−女性喪失感,あるいは悪性腫瘍への心のケア,女性のうつ,自殺を防ぐ心のケア,思想,信条,宗教−東洋と西洋の違い,さらにはアロマテラピーなどの代替療法,漢方療法,運動療法,文化活動,ボランティアなどさまざまな点を克服しなければならない.そして,各種の精神療法を駆使しなければならない.これらの広い領域をカバーすべく,日本女性心身医学会会員をはじめ産婦人科,精神科,内科,心療内科,臨床心理,公私の関係諸団体などの権威,ご専門の先生方に著述をお願いし,標準的なテキストブックとして本書の刊行を企画した.女性心身医学の発展と,産婦人科医,精神科医,内科医,心療内科医,臨床心理士,カウンセラーなどの諸先生,大学生,大学院生,皆様方の其界の理解への一助となり,1人でも多くの女性(そして男性)が幸福になられることを祈念する.
 最後に,本書の刊行に心よくご協力頂いた永井書店の高山 静氏,渡辺弘文氏,山本美恵子氏に深謝する.

2006年7月吉日
本庄英雄

■ 主要目次




総論1:女性と心身医学

1.女性の心身医学とは何か
2.Psychosomatic obstetrics and gynecology in the West
3.日本における女性心身医学の歴史


総論2:心身医学総論

1.全人的医療
2.心身医学の国際潮流における日本の役割
3.心身相関
4.不安と抑うつ
5.心身医学的診察法(病歴のとり方,面接の方法など)
6.心理検査の活用
7.心理療法「交流分析」
8.心身医学的治療
9.薬物療法
10.精神療法(カウンセリング)
11.自律訓練法
12.行動療法
13.認知療法
14.森田療法(総論)
15.外来でできる森田療法
16.家族療法と集団療法
17.心理的因子を探る


各論1:産婦人科編

1.女性のライフステージと心身医学
2.母性と心身一如性
3.中高年女性とうつ
4.女性ホルモンと脳機能
5.思春期の性と避妊
6.セクシャリティ
7.慢性骨盤疼痛
8.月経前症候群(PMS)
9.月経前症候群(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD)
10.摂食障害−産婦人科からのアプローチ
11.摂食障害−精神科から
12.摂食障害−心療内科の立場から
13.女性心身医療における漢方
14.パニック障害,PTSD(外傷後ストレス障害)
15.不妊症のメンタルケア
16.不妊カウンセラー
17.産褥期精神障害への治療の実際
18.産後心身障害−産褥期におけるストレス
19.更年期女性のメンタルケア
20.女性に多くみられる癌とメンタルケア
21.婦人科手術のメンタルケア
22.ホスピス・緩和ケア


各論2:女性の心身医学とそれを取り巻く環境

1.職業女性とメンタルケア
2.周産期におけるドメスティック・バイオレンス
3.家族関係が女性の心身に与える影響−高齢者虐待と介護を中心に
4.禁煙
5.女性とアディクション
6.皮膚疾患・アレルギー
7.容姿をめぐる病理とメンタルヘルス
8.性差医療と女性外来
9.女性の生活習慣病−メタボリック・シンドロームへの傾きとその重要性
10.補完・代替医療と女性−アロマテラピーを中心として
11.女性心身医学と宗教
12.仏教と女性心身医学
13.予防・健康医学と女性−女性のためのヘルスプロモーション
14.各科心身相関の連携に向けて

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