日進月歩の医療の進歩の中で,産婦人科医療の進展は目覚ましいものがあり,近年の少子高齢化の波という社会的な影響の中での産婦人科としての対応という問題に留まらず,産婦人科の日常臨床上での,医師の役割または守備範囲も,大きく拡大してきているのが現状である.
もちろん,近年の診断技術の進歩によって,病態の把握は従来より容易になってはきているが,疾患への理解度をより複雑化し,複合病態の理解を,より難しくしてきている.しかし,なんといっても,Medical Technologyの躍進は顕著であり,専門領域を越えた基本的な学習の必要性が益々重要となっている.
それと共に,疾患対応への共通理念,すなわち,consensusに基づく疾患への最大公約数的な医療の実践が求められてきている.
このような時代の流れに沿うべく,この度,本書「New consensus−新撰産婦人科診療」が,多数の優れた執筆者を結集して完成されたことは,編集に携わった者として,望外の喜びであり,また,責任の重さも痛感する次第である.
本書の構成に当たっては,編者間において十分な議論を費し,まず,症候からみた診療指針について,編者がそれぞれ専門領域を担当して,産婦人科診療上で頻度の高い症候について解説し,本書のスタートとした.
さらに,重要疾患の診療指針に当たっては,疾患の定義と病態,好発年齢,頻度,疫学,症状,診断,治療などについて,順次記載した.このような実践的な内容は従来の類書にはみられない特徴であり,まさにnew consensusとなるものと確信している.
また,本書の中核部分では「腫瘍」「生殖・内分泌」「周産期」「感染症」に分類し,それぞれの担当編者が疾患項目を設定し,第一線の専門家に執筆を依頼して,クオリティの高い診療指針を呈示していただいた.
本書の目標とした理想は非常に難しく,企画の段階から編者間で熱い討議を重ねてきたが,多少の重複があることをご理解頂きたい.
診療指針のconsensusは,もちろん,時代と共に進化していくもので,本書がon line上の一点ではなく,線として,末永く改訂変化していくことを編者一同強く願うものである.そして本書が産婦人科の初期・後期研修医はもとより,実地医家の諸先輩の机上でのバイブルとしてお役に立つことを信じている.
最後に,本書の企画,編集の段階から多大の援助をいただいた,永井書店東京店の高山静編集長,渡辺弘文両氏に厚く感謝致します.