乳癌疾患は女性の癌では第1位となり,死亡も急増している.わが国でも2004年,ようやく40歳以上を対象としてマンモグラフィを中心とした乳がん検診の方針が打ち出され,現在,機器・読影医師・読影技師の量的・質的充足および受診率向上への取り組みが展開されつつある.
マンモグラフィ検診の成否は,よい画像の作成・読影精度・有機的な運営システムにある.マンモグラフィの作成にかかわる診療放射線技師はよい画像をつくるために読影も知っていることが求められ,読影医は撮影技術を知らなければよく読むことはできない.本書「見て・視て・診る マンモグラフィ画像読影ハンドブック」−乳がん検診における読影技術の向上を目指して−は,マンモグラフィ検診に従事するものが知っておくべき背景・技術・読影法をコンパクトに,しかし濃厚にまとめたものである.
よい検診を支えるには,まず検診がどのようなシステムで行われているか,その精度を支えるのは何かなど,社会の中での各自の位置づけを自覚することが重要である.そうした観点に応える意味で,本書では,乳がん検診の在り方とマンモグラフィ検診の精度管理システムやマンモグラフィ検診精度管理中央委員会とその役割が展開されている.
読影を行うには,乳房や乳癌の病態とマンモグラフィの原理を知ることが必要である.そこに映し出されている状況を言葉で表現するには共通の所見用語が必要である.そして,所見を裏づける知識をもとに所見を組み立て,判定−診断へと結論を出してゆく.それが「読影編」の内容であり,本書ではあくまで検診の視点をはずさず,いずれもマンモグラフィ検診や読影のエキスパートによって豊富な内容が展開されている.
また,読影医がよく読むためにはよい画像を獲得することが先決であり,読影医がマンモグラムの撮影について,あるいはよい画像とはどういうものかを知り,診療放射線技師とともによい画像作成プロセスの一翼を担うことは当然の役割でもある.その意味で,「技術編」,あるいは「施設画像評価編」は読影医にとって必読の内容である.本書ではこうした意味で,読影にあたる医師にとってもわかりやすいマンモグラフィの原理や撮影技術が展開されている.
本書は実際に検診を始めるにあたって,読影しようとする医師・放射線技師にとっての指導書となるであろうことはもちろんであるが,実際に従事し始めて今までには経験したことがない新しい所見を前にして,もう一度原点に立ち返って考えてみようと思われる方々にも適切な情報を提供できる手引書にもなるであろう.