世界に類をみないスピードでわが国の少子高齢化は進み,21世紀に入ってもますます加速している。また2005年の発表では男性人口が減少し始め,来年には総人口が減少すると予測されている。従来までの典型的な少子高齢化はいわゆる過疎地で多くみられたが,今後は都市部にも容赦なく襲ってくることが推測される。このような社会の変化は,社会的あるいは経済的な影響だけでなく保健医療福祉分野へも大きな影響を与えている。
まず第一に,加齢は疾病罹患の最大のリスクファクターであることから高齢化に伴い有病率が上昇すること,第二に悪性疾患(がん)を含む生活習慣病や痴呆症状を呈する認知症が急増し疾病構造に大きな変化が生じていることなどである。第三には経済不況の影響で,医療や年金などの社会保障費が抑制される政策が行われていることである。以上の理由から,保健医療福祉分野のベクトルは明らかに在宅・居宅へと向かっていることは疑いのない事実である。ところが問題は「家族介護力の低下」である。核家族化が進み,独居や高齢者のみ世帯が明らかに増加し家族介護力が圧倒的に低下している。
そこで必要なのが「家族の・み・の介護」ではなく「家族と社・会・と・で・助・け・合・う・介護」である。2000年から施行された介護保険制度はまさしく社会としての医療や介護の提供を円滑に行う制度である。介護支援専門員を在宅医療・介護の要としたこの制度は既に広く認知されているが,制度としての理解や在宅で提供される医療や介護の質などの点で不十分なところもあり,これらをいかに向上させ,さらに啓発していくかはわれわれ医療福祉職に課せられた課題の1つである。2006年春には介護保険法の大きな改正が予定されている。しかし制度が変わっても,提供される医療や介護サービスの質には根本的にはなんら変わりはない。患者・利用者本位のサービスが提供されるべきだからである。この本は2000年に発行されたものの改訂版であり,本書が在宅医療や介護の質の向上やケアの標準化の一助となり,さらに在宅医療や介護に携わっている皆様の日常の活動に少しでもお役に立てることができれば幸いである。また皆様の御批判や御意見を忌憚なく頂き,今後の改訂の参考にしたいと考えている。