近年における急性心筋梗塞症の治療成績が、冠動脈再灌流療法、とくにカテーテルによる冠動脈形成法 primary PCI の導入により、目覚ましい進展を見せています。本書は、このような時期に、急性心筋梗塞症の病態、診断、治療の現状につき解説を試みたものです。
読者対象としては、これから心臓病の勉強を始める方々で、医学生、循環器内科をローテートしている研修医、循環器内科新規入局者、他科の医師あたりを意識して執筆しました。
本書の構成は10章から成っていますが、それぞれの章はなるべく独立させ、どの部分から読まれてもよいように配慮しました。そのため、
全体を通読すると、一部記述の重複がある点をご了承ください。たとえば、第1章の基礎の部分は臨床医には取っ付きにくいところですが、他の章から読み、必要があれば適宜参照されるのも良いと思います。また、引用されているのがすべて英文文献であることに問題がありそうですが、今日わが国を含めて世界中の報告が、最終的には世界語である英語でなされる事実によるもので、他意はありません。
本書が、これから心筋梗塞症あるいは循環器疾患を勉強しようとする方々の一助となれば、望外の幸いであります。