スタンダード

家庭医療マニュアル

理論から実践まで

スタンダード 家庭医療マニュアル 理論から実践まで
著 者
編著 葛西龍樹(医療法人 社団 カレスアライアンス 北海道家庭医療学センター所長)
発行年
2005年5月
分 類
医学教育
仕 様
B6判 936頁 図81 表169
定 価
7,140円(本体6,800円+税5%)
ISBN
4-8159-1723-X
特 色
 海外の多くの国々では、家庭医療は社会保障制度や医学教育制度の中で確立された専門分野であり,考え方・態度・価値観・信念は共有されグローバル・スタンダードとなっている.残念ながら,日本では,この家庭医療のグローバル・スタンダードが正しく理解され実践されることがほとんどなかった.このような状況に一石を投じ、読者がグローバル・スタンダードの家庭医療を「理解」し「実践」することを支援することを目指す.

■ 序 文

ようこそ 家庭医療へ!

 本書を出版する意義は、日本における家庭医療のスタンダードを具体的に示すことである。
 海外の多くの国々では、家庭医療は既に社会保障制度や医学教育制度の中で確立された専門分野である。それぞれの国の社会・経済・歴史・文化的状況に応じて家庭医療の表現形には違いがあるが、その専門性についてのコアとなる考え方と家庭医の態度・価値観・信念は共有されている。それが家庭医療のグローバル・スタンダードといえるものである。
 残念ながら、日本では、「プライマリ・ケア」や「家庭医療」という言葉を用いていても、必修化された初期研修で「プライマリ・ケア」が強調されても、この家庭医療のグローバル・スタンダードが正しく理解され実践されることがほとんどなかった。
 本書は、このような状況に一石を投じ、読者がグローバル・スタンダードの家庭医療を「理解」し「実践」することを支援することを目指している。
 本書では、全国で家庭医療を実践する数少ないエキスパートに執筆をお願いした。McWhinneyは、「スキーができるようになるためには、スキー場に行って、スキーのインストラクターから習う」という喩えを用いて臨床教育の原則を説いている。プールに行ったり、テニスのコーチについても、スキーは上達しないのである。今回、「実際にスキー場でスキーを教えているスキーのインストラクター」を本書の執筆陣に迎えることができて大変嬉しく思っている。編者の要望に応えて、家庭医療の専門性を反映するスタイルで、しかも簡潔に執筆して頂いた著者各位に深謝したい。
 企画から、原稿の取りまとめと編集、読みやすいレイアウトでの印刷、そして携帯しやすい大きさでの製本に至るまで、本書の出版のすべてについて、(株)永井書店東京店の高山静編集長と山本美恵子氏には大変お世話になった。心より感謝したい。今後も健康に留意され、家庭医療についての出版プロジェクトにご協力頂ければ幸いである。
 「曹源の一滴水」のように、本書によって、多くの医学生・研修医が「具体的に学ぶことが可能な専門分野」としての家庭医療に興味をもち、志のある地域の医師が自分の診療に家庭医療を積極的に取り入れ、そして、日本に住むできるだけ多くの人が家庭医療を利用できるようになる日が遠からず来ることを願って、序文の結びとしたい。

■ 主要目次

第1部 家庭医療の専門性

1.家庭医療

 1)「家庭医療」とは
 2)一般的な「家庭医療」の定義
 3)専門的な「家庭医療」の定義(家庭医療の専門性)
 4)家庭医療の専門性についての世界の考え方

2.患者中心の医療

 1)患者中心の医療の起源
 2)患者中心の医療とは
 3)患者中心の医療の方法
 4)2種類の医師の協働へ

3.家族志向型のケア

 1) 家族志向型のケアとは?
 2)家族志向型のケアの理論的背景
 3)家族志向型のケアの実際
 4)家族カンファレンス(面談)を行う
 5)まとめ

4.地域包括ケア

 1)地域包括ケアとは
 2)地域包括ケアの中での家庭医の役割

5.患者−医師関係

 1)患者−医師関係の重要性
 2)患者−医師関係のモデル
 3)患者−医師関係の悪化の原因
 4)患者−医師関係を良好にするために
 5)まとめ

第2部 予防,健康維持・増進

1.小児の予防,健康維持・増進

 1)家庭医の小児科領域診療
 2)小児の成長・発達
 3)母子保健と乳幼児健診
 4)予防接種
 5)育児支援とカウンセリング
 6)学校医
 7)小児疾患のキャリーオーバー

2.青少年の予防,健康維持・増進

 1)「青少年」の定義
 2)この年代の特徴
 3)取り組むべき課題
 4)家庭医とのかかわり
 5)少ない機会を大切に利用
 6)診察室での親の同席をどうするか
 7)地域性・ライフサイクルの影響
 8)各論
 9)症例
 10)まとめ

3.成人の予防,健康維持・増進

 1)わが国における予防接種
 2)疾患のスクリーニング
 3)患者教育・健康学習

4.高齢者の予防,健康維持・増進

 1)高齢者疾患の特徴
 2)高齢者の食事・栄養と運動
 3)高齢者の介護と介護保険

第3部 よくみられる問題のケア

1.よくみられる症状

 1)咽頭痛(小児を含む)
 2)嘔気・嘔吐
 3)月経障害
 4)胸痛
 5)血尿
 6)更年期
 7)呼吸困難
 8)失神(小児を含む)
 9)消化管出血
10)咳
11)体重減少
12)認知症
13)頭痛
14)尿失禁・排尿困難
15)発熱
16)肥満(小児を含む)
17)疲労・全身倦怠
18)貧血
19)不安・抑うつ
20)腹痛
21)不妊
22)不眠
23) めまい
24)腰痛

2.よくみられる疾患

 1)アナフィラキシー
 2)肝炎
 3)高血圧
 4)高脂血症
 5)骨粗鬆症
 6)喘息
 7)虚血性心疾患
 8)呼吸器感染症
 9)消化性潰瘍
10)ウイルス性胃腸炎
11)心不全
12)性行為感染症
13)中耳炎
14)糖尿病
15)脳卒中
16)尿路感染症
17)熱傷
18)パーキンソン病
19)不整脈
20)副鼻腔炎

3.系統別問題

 1)足・膝の問題
 2)頸・肩の問題
 3)甲状腺の問題
 4)周産期ケア
 5)腎の問題
 6)前立腺の問題
 7)胆道系の問題
 8)手・指・肘の問題
 9)乳房の問題
10)避妊の問題
11)皮膚の問題
12)婦人科の問題
13)耳の問題
14)眼の問題

4.家庭医療のチャレンジ

 1)家庭内暴力
 2)タバコ,アルコール問題
 3)ターミナルケア

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