序 文
またたく間に10年が過ぎて,第10回のリウマチ病セミナーの発刊に至ったことは,多少の感慨はあるが,何よりも執筆者各位のご好意とご協力の賜以外の何ものでもなく,衷心より感謝申し上げたい.
今回も“systemic disease におけるリウマチ症状”のテーマを数多く取り上げた.甲状腺機能低下症とリウマチの訴えとの密接な関係はよく知られているが,最近の知見を加えて塩沢先生に余すところなく書いて戴いた.また極めて普遍的な疾患である糖尿病に見られる四肢合併症は多彩で重要な問題を呈する.そこでリウマチ病患者に日夜接するリウマチ医には不可欠の知識と思われるので,河盛教授に糖尿病の管理について,廣田,志水両先生には手,足,骨の合併症についてレビューしてもらったが,臨床に有用な論文ではないかと思う.その他,痛風の最近の研究の進歩について谷口先生を煩わした.またacromegaly,Felty
症候群,高IgD症候群については,牛山,安波,岡田の3先生にそれぞれ最近の知見を披露して戴いた.
臨床にかかわる基礎的研究の進歩は相変わらず目覚ましく,プロモクロプチンとソマトメジンC,マウスにおける実験的リウマチ病,滑膜肉腫のfusion
gene,calcium-sensing receptorと話題は多い.なお疫学的研究として,福田教授からは,わが国最初の縄文時代のRA骨の発見を含め示唆に富んだ論文を戴いた.
脊椎関係の臨床研究の進歩が期待されているが,今回は腰痛と椎間関節,胸郭出口症候群の二つのテーマを取り上げた.中川,鷲見両先生にそれぞれご苦労をお掛けし,ここに厚く御礼申し上げたい.
今回は治療面での興味ある論文が多い.抗INF抗体療法と抗IL-6レセプター抗体療法,RA妊娠患者の薬剤治療,RA治療におけるapoptosis,リウマチ病の遺伝子治療と,RAに関するものがほとんどで,いかにup
dateの問題が多いかを示している.しかし,骨粗鬆症における脊椎骨折の治療や予防もそれに劣らず,あるいはそれ以上に重要な問題であることを認識しなければならない.
来年の1月から,今後10年間,WHOの活動の優先課題として,<骨と関節の10年>のキャンペーンと,リウマチ病の基礎的研究のみならず,社会的対策や予防,治療研究の推進を図るということなので,わが意を得たということもあって,この方面におけるわが国の参加と貢献を強く期待している.
最後にいつもながら一切のお世話を戴いている中川夫人に衷心より御礼申し上げたい.
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