ISBN 4-8159-1569-5
書名 最新虚血性心疾患 新しい展開と診療の実際
編著者名 矢崎 義雄(編著)(東京大学循環器内科 教授)
目次
  • Overview 虚血性心疾患-診療の進歩 矢崎 義雄
    1.わが国における虚血性心疾患の位置づけ
    2.冠動脈硬化の病態
    3.冠インターベンションの位置づけ
    4.虚血性心疾患患者の管理
  • 第1章 虚血性心疾患の病態の解明
    1.心筋梗塞発症のメカニズムを探る
     [1]acutecoronarysyndromeとは? 柴田 雅士/平盛 勝彦
     KeyPoint
     I.acutecoronarysyndromeの病態
     II.acutecoronarysyndromeの診断
     III.acutecoronarysyndromeの画像診断
     [2] 病理所見から 伊倉 義弘/小松 龍士/上田 真喜子
     KeyPoint
     I.急性心筋梗塞の責任冠動脈病変の病理像
     II.プラーク破裂・びらん部位の構成細胞成分
     [3]粥腫の破綻の分子細胞生理学 山田 信博
     KeyPoint
     I.粥状動脈硬化症の成因
     II.平滑筋細胞の泡沫化,形質転換
     III.プラークの形成から心血管イベント
     IV.高コレステロール血症の治療
     [4]凝固線溶系の異常本 宮武 司
     KeyPoint
     I.粥腫破綻と血小板・凝固・線溶
     II.急性心筋梗塞における血小板,凝固,線溶能
    2.冠動脈疾患と内皮依存性拡張反応 下川 宏明
     KeyPoint
     I.心臓の虚血再灌流後の内皮依存性拡張反応の低下
     II.血管のサイズと内皮依存性拡張反応
     III.血管内皮の抗動脈硬化作用
     IV.抗動脈硬化因子とNO 
    3.急性心筋梗塞発症後の心室リモデリング 百村 伸一
     KeyPoint
     I.心筋梗塞後リモデリングとは
     II.リモデリングとレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
     III.心筋梗塞後リモデリングに対するACE阻害薬の効果
     IV.リモデリングを念頭においた心筋梗塞後患者の薬物治療
     V.心筋梗塞リハビリテーションはリモデリングを促進するか?
     VI.リモデリングを念頭においた心筋梗塞後患者のフォロー
    4.インスリン抵抗性と冠動脈硬化の進展 土橋 和文/島本 和明
     KeyPoint
     I.インスリン抵抗性とは
     II.インスリン抵抗性と冠危険因子
     III.インスリン抵抗性と冠動脈疾患の進展・二次予防
     IV.インスリン抵抗性と冠動脈疾患治療薬
    5.SyndromeXの病態 金澤 健司/横山 光宏
     KeyPoint
     I.syndromeXの概念のよびその頻度
     II.syndromeXの病態
     III.syndromeX診断のpitfall
     IV.治療および予後
    6.冠攣縮の成因と冠攣縮性狭心症の治療 中川 修/泰江 弘文
     KeyPoint
     I.冠攣縮性狭心症の症状と発作の日内変動 
     II.冠攣縮性狭心症の検査所見
     III.冠攣縮の病態
     IV.冠攣縮性狭心症の治療
    7.遺伝子多型と冠疾患 栗原 裕基/森田 啓行
     KeyPoint
     I.多因子疾患の遺伝子解析
     II.レニン-アンジオテンシン系の遺伝子多型
     III.ホモシステイン関連酵素の遺伝子多型
     IV.血栓形成に関連する遺伝子多型

  • 第2章 診断法の進歩
    1.acutecoronarysyndromeの血清診断の進歩 星野 洋一/永井 良三
     KeyPoint
     I.心筋細胞質酵素
     II.ミオグロビン
     III.心筋構造蛋白
     IV.サイトカイン
     V.接着分子
     VI.凝固・線溶系
    2.無症候性心筋虚血 阿部 豊彦/三浦 愽
     KeyPoint
     I.心筋虚血が無症候性となる機序
     II.無症候性心筋虚血の診断法
     III.無症候性心筋虚血の分類と診断の実際
    3.ドブタミン負荷心エコーの有用性 村田 和也/松崎 益徳
     KeyPoint
     I.ストレス心エコー法
     II.ドブタミン負荷心エコー
    4.心筋viabilityの診断には何が役立つか 石田 良雄
     KeyPoint
     I.心筋viabilityとは?
     II.201T1心筋シンチグラフィによる評価
     III.18F-FDG心筋PETによる評価
     IV.低用量ドブタミン負荷心エコー図による評価
     V.運動負荷心電図ST上昇による評価
    5.冠動脈造影法の進歩と限界 石黒 聡/矢部 喜正
     KeyPoint
     I.冠動脈造影法の歩み
     II.冠動脈造影法
     III.冠動脈造影法の評価
     IV.冠動脈造影における病変評価の限界
    6.冠動脈血管内エコーで何が分かったか 水重 克文/松尾 裕英
     KeyPoint
     I.血管内エコー探触子とエコー像
     II.冠動脈内エコー像
     III.coronaryinterventionへの応用
    7.冠動脈血管内視鏡で明らかになった冠疾患の病態 水野 杏一/北村 克弘
     KeyPoint
     I.血管内視鏡の構造・手技
     II.血管内視鏡によって得られる所見
     III.冠動脈疾患の血管内視鏡所見
     IV.インターベンション後の血管内視鏡所見
     V.血管内視鏡所見の治療への応用
    8.心臓の核医学検査の進歩 玉木 長良
     KeyPoint
     I.エネルギー代謝の解析
     II.心筋の交感神経機能の検討
     III.新しい心筋血流イメージングの検討

  • 第3章 治療
    1.急性心筋梗塞に対するpre-hospitalcare 高野 照夫/宮内 靖史
     KeyPoint
     I.診断
     II.
    2.冠動脈疾患に対しPTCAと冠動脈バイパス術のどちらを選択すべきか 佐藤 和義/上松瀬 勝男
     KeyPoint
     I.本邦におけるPTCAとCABGの実態
     II.冠動脈疾患に対するPTCAの適応
     III.冠動脈疾患に対するCABGの適応
     IV.治療戦略としてのPTCAとCABGの選択基準
     V.PTCAの問題点と対策
     VI.CABGの問題点と対策
    3.冠動脈疾患に対するPTCA治療の進歩 西山 信一郎
     KeyPoint
     I.PTCAの普及
     II.ハードウェアの進歩
     III.時間経過によるPTCA成功率と合併症の推移
     IV.適応の拡大
     V.病態における適応拡大
     VI.静脈グラフトへのPTCA
     VII.急性期の合併症への対策
     VIII.再狭窄は解決したのか
     IX.より侵襲の少ないPTCAを目指して
    4.新しい冠動脈インターベンションの適応とその臨床的有用性 上小澤 護/磯部 光章
     KeyPoint
     I.カッティングバルーン
     II.アテレクトミー
     III.レーザー冠動脈形成術
     IV.ステント
    5.心筋梗塞症例に対するACE阻害薬投与の有用性 宮本 忠司/松森 昭/篠山 重威
     KeyPoint
     I.心血管系とレニン・アンジオテンシン系
     II.ACE阻害薬を用いた多施設共同研究
     III.実際の投薬
    6.虚血性心疾患に対するカルシウム拮抗薬の有用性と問題点 青柳 昭彦/平田 恭信
     KeyPoint
     I.カルシウム拮抗薬
     II.虚血性心疾患に対するカルシウム拮抗薬の有用性
     III.虚血性心疾患に対するカルシウム拮抗薬の問題点
     IV.カルシウム拮抗薬を用いた最近の大規模臨床研究
    7.冠動脈疾患の一次予防,二次予防をどう行うべきか 中村 治雄
     KeyPoint
     I.従来の予防試験について
     II.今後の予防試験
    8.心筋梗塞のリハビリテーション 齋藤 宗靖
     KeyPoint
     I.再灌流療法時代の急性期リハビリテーション
     II.運動療法の効果と運動処方
     III.非監視型運動療法
     IV.合併症のある心筋梗塞患者の運動療法
    9.虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス術 小塚 裕/高本 眞一
     KeyPoint
     I.低左室機能症例のCAGB
     II.高齢者に対するCABG
    10.重症心筋梗塞に対する補助循環の適用と有用性 大黒 哲
     KeyPoint
     I.当院におけるAMI例の死因統計
     II.心原性ショックへの対策
    11.虚血性心疾患に合併した不整脈の治療 古川 佳子/小川 聡
     KeyPoint
     I.心筋梗塞
     II.労作性狭心症
     III.異型狭心症
本体価格 8,000円
仕様 B5判 278頁/図110(カラー15点)/表41

 虚血性心疾患は,冠動脈の動脈硬化性病変で発症する疾患であるが,その病態は多様で,慢性に経過して治療も長期間にわたって患者の生活とともに進めるものから,急性に経過して集中的な高度医療を行わなければ救命し得ない重篤なものまで多彩である.しかも,人口の急速な高齢化とライフスタイルの欧米化により,動脈硬化性病変が進展して虚血性心疾患の発症率は今後ますます増加し,しかも罹患年齢が若年者へと推移しており,疾患への的確な診断と治療のアプローチが,患者の生命予後ばかりでなく,罹患後の生活の質(QOL:quality oflife)をも直接規定するところとなる.したがって,虚血性心疾患の病態についての体系的な理解と,どのように診療を進めて患者を管理すべきか最新の情報を習得することは,専門医ばかりでなく,一般臨床医にも強く求められているところであり,日常臨床の場でも実際に生きた知識として活用しなければならない.
 一方,虚血性心疾患の診療は日進月歩に新しい展開が次々に行われている.それは最近とくに進展の著しい分子生物学のアプローチが病態生理の解明に応用されたことと,コンピューターシステムなどの先端技術や新素材が導入されたことが大きい.動脈硬化性病変が,単に血中の脂質,とくにコレステロールが沈着するのではなく,動脈壁を構成する細胞群の形質変化と増殖,さらには血球細胞との相互作用を基礎に,各種増殖因子やサイトカインによる情報交換のうえで形成されていることが明らかになった.そして,病変が急速に進展する背景となる粥腫破綻のメカニズムもこのような視点から,細胞・分子レベルから解析されるようになった.このような病態の理解の進歩は,新しい治療の開発への基礎となるばかりでなく,科学的な根拠に基づいた治療を自信を持って進めることも可能にしている.
 また,電子工学などの先端技術の導入と活用は,画像診断の画期的な進歩を促し,冠動脈病変の詳細で正確な情報を鮮明な画像としてとらえることができるようになった.非侵襲的な冠動脈造影法ばかりでなく,血管内超音波診断法から血管内視鏡まで臨床に応用されるようになり,治療法の選択からその効果の評価まで的確に行うことができるようになった.PTCAを中心としたインターベンションの技術や用いる器材の進歩にも目覚ましいものがある.それだけに,個々の患者の病態を正確にとらえ,治療法を的確に選択する臨床能力が一層重要になっている.
 このような状況にあって,虚血性心疾患に関するすべての知識を,病態から診断と治療まで3章に分けて,一般医や研修医にも理解しやすいように体系的に解説している本書は,きわめて時宜にかなっていると言えよう.はじめから通読しても,テキストとして必要な情報を項目を選んで得ることにも適うように企画編集されている.また,解説には現在臨床と研究の場で最も活躍されている専門家にお願いした.
 本書により,虚血性心疾患についての病態の理解と臨床能力の向上にお役にたてれば幸甚である.

最新虚血性心疾患 新しい展開と診療の実際


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