ISBN 4-8159-1567-9
書名 名医に学ぶ こどもの皮膚疾患みかた治しかたのコツ
編著者名 山本 一哉(総合母子保健センター愛育病院皮膚科 部長)
目次
  1. 知っておきたい基本的なこと−こどもの皮膚の病気を診る前に考えておきたいこと−
     こどもの皮膚の特徴/こどもの皮膚の性質
  2. こどもの日常診療で皮膚病変をみつけた場合
    (1) 病変があっても診ないことにする場合:養育者(母親)から相談がなければ診ない場合/すでに専門医に相談して適当な方法を講じている場合/母親から相談があっても診ない場合
    (2) 病変を診療することにした場合:薬剤をどうするか/スキンケアの指導について/知っておきたい母親の気持ち
  3. こどもに見られる皮膚の病気(診断クイズ)−あなたはいくつの病気が見分けられますか−
     新生児のニキビ様変化/レッテラ・シーベ病/色素性薬麻疹/乳児寄生菌性紅斑/紅色汗疹/カボジー水痘様発疹症/スタージ・ウエバー症候群/レクリングハウゼン病/SSSS/伝染性軟属腫/疹癬/蚊アレルギー
  4. 皮膚疾患を診療する前に知っておきたいこと
      こどもの皮膚の特徴/乳児の皮膚病の特徴/幼稚園児の皮膚病の特徴/学童の皮膚病の特徴/思春期の皮膚病の特徴/皮膚病の子をもつ親,特に母親の特徴/皮膚病の子をもつ親,特に母親の特徴/家族の特徴,祖父母,兄弟,親類など/親の職業の影響/住環境でも異なる対応
  5. 診察の方法
      診療の準備/服装からの判断/脱ぎかた,脱がせかたの要領
  6. 診察のコツ  
     接触(touch) の5段階  
     対面のしかた・考えかた/診察をする場合の指,手の使い方/話しかた,聞きかたのコツ/全身の印象をとらえる
  7. 身体各部の診かたのコツ  
      頭部,項部の診かたのコツ/顔面の診かた/耳とその周囲の診かた/躯幹と首の診かた/腋の下の診かた/手,指,爪の診かた/おむつ部と鼠蹊部の診かた/下肢と膝・足首の診かた/足,足ゆび,爪の診かた
  8. 急性発疹症との簡便鑑別法  
      問診が重要な役割を果たす/耳とおむつと明太子
  9. 問診のコツ
     問題は何か,いつ頃からか/始まりはどこから,相談はどこに
  10. 薬剤の準備と使いかた
     自分に塗ってから選ぶ
本体価格 4,700円
仕様 B5判 154頁/図11(カラー12点)/表3

序文
 こどもの皮膚病を専門に診療するようになったのは1965年のことである.日本で初めての小児専門病院が鳴物入りでスタートした時に皮膚科診療を担当するスタッフとして加わったわけである.ところで,当時は今振り返ってみても欧米では伝統がある小児専門の医療施設が,なぜ我が国では欠落していたのかなど考える暇もなかったのが事実である.そして,手探りでの小児皮膚科診療を開始することとなった.一方,患者さんの数は大学病院の皮膚科患者数をしのぐ有様までになった.
  以来,1995年末に無事退官するまでの三十年間の臨床体験は,言葉通り毎日が新鮮,かつ発見にあふれたものであった.その間に国際小児皮膚科学会,日本小児皮膚科学会の設立などを含めて,こどもの皮膚化学をめぐる学会の動向自体にも歴史的な変革があったのである.とはいえ,こどもの皮膚病自体にも,同じような変わり方があったか,と言えば答えは当然ながら否である.もちろん,疾患の傾向には時代とともに移り変わりはあるが,こどもの皮膚病の本質には変わりがないということなのである.
  とすれば,その診療には基本的な皮膚科学教育が身に付いてなければならない.基本となれば,医学部学生としての教育の中に含まれることになる.そしてやがて,皮膚科専門医となることを志す方は,その道の蘊奥を極める過程に入るわけである.しかしながら,幸か不幸か蘊奥を極めずとも,また,医学教育を受けずとも,皮膚に現れる変化には誰でも気づくという特徴がある.したがって,もしもあなたが医師であると分かっている状況にあれば,たとえ蘊奥を極めた専門医ではなくとも,とりあえず相談を受けざるを得ない立場になることが皆無とは言えないはずである.なぜなら基本は学んだ方だからである.
  さて,こどもの皮膚病の診療を始めるようになってから,私はほとんど絶えず外来の見学を希望される方に囲まれて過ごしてきている.それぞれ大学から派遣されて,あるいは開業された方と.環境も専門科目も様々であるが,すべての方が,こどもの皮膚病の見方を知りたいと希望されている.いったいなにが,その方々にとってわざわざ私のようなものの外来を覗いてみようという気持ちを持たせるのか,もちろん直接お尋ねすることも出来る.しかし,その際のお返事の中には,申しわけないが美辞麗句も入りうると考えるのが妥当ではないであろうか.
  そこで,三十数年間診察机の傍らで私の診療を熱心に見学してくださったたくさんの先生方が,興味をお持ちになったとお見受けできた事柄を思い起こしてみることにした.すると,それは要するに私が,毎日繰り返していた診療の中で,いつしか骨の髄までしみついた診療のコツを見聞きすることにあったと気がついた次第である.

名医に学ぶ こどもの皮膚疾患みかた治しかたのコツ


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