序文
　毎年のように炎症リウマチ研究の進歩には目を見張るものがあり感慨を新たにしている．今回はそれに劣らず，骨の生病理の理解が深まり，臨床にも大きく貢献するようになってきていることがわかって印象的である．骨髄と滑膜，GVH，bone edema syndrome，VD receptor，osteoporosis，OAのgenetic marker，perosteal tumorなど，その内容はいずれもこれからの発展を裏付けてくれるもので，大変喜ばしく思っている．
　今日の臨床が画像診断の進歩に負うところが大きく，今回のセミナーでも軟部組織のMRI，RAの肺，bone edema syndromeといったテーマでそのことがよく出ていると思う．患者の診断や治療に直接関連したテーマも多く，腰痛と内臓痛，痛みのマネジメント，メトトレキサートと葉酸，nerve root infiltrationなど，明日からの診療に役立ってくれることを期待している．
　外傷後のリウマチ病のテーマで，西林先生がリウマチ病を丁寧に取り上げているのは，本セミナーの主旨として大変有り難く，従来せいぜい炎症リウマチの，あるいはそのまたなかの慢性関節リウマチに話をしぼる傾向があったので，初めてのことではないかと思う．さらに，患者一例，一例の注意深い観察の蓄積が基本であることを述べておられるが，原因不明の，あるいは発症機序の不明なリウマチ病を取り扱う臨床家にとっては，これはきわめて重要なことである．同様な考えは，RAの肺やRAとストレスの論文でも述べられており，この方面からの病気の本態や治療法の是非を問う力強いデータが求められる．