ISBN 4-8159-1547-4
書名 電気回路による臨床電気神経生理学入門
編著者名 橋本 修治 天理よろづ相談所病院部長
主要目次 第1章 電気現象の基礎
    第1節 オームの法則/第2節 キルヒホッフの法則/第3節 静電気学/第4節 導体における電位差と静電気学の関係
第2章 神経生理学の基本概念
    第1節 静止膜電位,および脱分極と過分極/第2節 活動電位/第3節 シナプス後電位 ( postsynaptic potential)/第4節 イオンチャンネル,および神経伝達物質とその受容体
第3章 膜起電力(膜電池)
    第1節 電気双極子と双極子近似/第2節 膜がカリウムイオンに対してのみ透過性を持ち,塩素イオンには透過性を持たない場合(濃淡電池)/第3節 濃淡電池の外部が抵抗によって結合され電池が流れている場合/第4節 膜がカリウムイオンとナトリウムイオンの両方に対し透過性を持ち,塩素イオンに 対し透過性を持たない場合/第5節 細胞膜の能動輸送 (active transport)/第6節 膜がカリウムイオン,ナトリウムイオン,塩素イオンに対して透過性を持つ場合/第7節 液間電位(拡散電位)/第8節 Goldman 式とNer-nst 式の導出
第4章 活動電位
    第1節 活動電位の発生/第2節 活動電位の細胞外記録
第5章 シナプス後電位
    第1節 興奮性シナプス後電位(EP-SP,EPP)/第2節 抑制性シナプス後電位(IPSP)
第6章 神経細胞膜の受動的電気特性
    第1節 電位の空間的広がり/第2節 電位と電流の時間経過(1)/第3節 電位と電流の時間経過(2)
第7章 脳電位の発生機序
    第1節 電場電位(field potential) と単一放電(unitary discharge) /第2節 脳電位の発生機序
第8章 遠隔電場電位の発生機序と体積伝導体−P9遠隔電場電位を中心に−
    はじめに/第1節 P9遠隔電場電位の発生機序/第2節 体積伝導体の電気回路/第3節 円筒状体積伝導体における遠隔電場電位
第9章 臨床脳波での双極導出記録と単極導出記録 第10章 電位の記録
    第1節 時定数と周波数フィルタ/第2節 差動増幅器
第11章 立体角理論
    第1節 電気双極子層と立体角理論/第2節 電流双極子
文献
索引
本体価格 4,500円
仕様 A5判 192頁 93図
序文
 本書は,臨床電気神経生理学における電位解釈の基礎を,電気回路を用いて解説したものです.電気生理学は重要な用語を物理学や電気化学など基礎科学から借用しています.電位,電場,分極,伝導,双極子などです.これらの用語は,電気生理学においては,基礎科学と必ずしも同じ意味では用いられていません.電気生理学におけるこれら用語独自の意味を,基礎科学における概念内容と混同せずに理解しておくことが必要です.
 私たちが記録している電位は,時間経過を無視すれば陰性か陽性かしかありません.このような単純な記録から,意味のある情報を見つけ出し生体の複雑な実体に迫ろうとするのが電気生理学の姿とも言えます.私たちが知りたいのは電位変化自体ではなく,電位変化を発生している生物学的実体であり,それがどのような生命現象と関連しているかであります.このような知識を得るためには,電位差発生機序を理解しておくことが必要となります.本書では,記録された電位がどう見えるかではなく,何故それがそう見えるのかを簡単な原理に立ち返って考察することを目標としました.オームの法則,静電ポテンシャル,電気的中性の法則などを基本原理として,電位差発生機序を考察しました.私は,膜電位,活動電位,シナプス後電位,体積伝導体の一部,すべてではないものの少なくとも一部は,これらの法則を介して電気回路に置き換えることができると思っています.私の力不足のため,一部には電気回路に置き換えることができなかった項目もありますが,できる限り電気回路に置き換えて考察してみました.
 本書は,もともと電気神経生理学に興味を持つ天理よろづ相談所病院の若い医師や,他院から研修に来られた人たち,および日頃いっしょに検査を行っている検査技師の方々に,電気神経生理学の基礎を理解してもらおうと思って書き出したものでした.
 しかし,電気回路や数式を多用したため,これらに慣れていない人には分かりにくいものになったかも知れません.数式は出発点となる考え方と式の最終的な意味が分かるように記載したつもりです.複雑な数式は読み飛ばしていただいても基本的な論点は理解できると思います.一方,数式に慣れている人には記述がくどいという印象を与えるのではないかと危惧しています.いずれも読者の寛容とご批判を期待する次第です.
電気回路による臨床電気神経生理学入門


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